梅雨空から陽が差すと暑くなってきましたね。もう時期苦手な夏がやってくるようです。今日は検診で胃カメラを呑んできました。あれは何回やってもイヤですね。もう少し負担の少ない胃カメラをオリンパスさんには開発して頂きたいものです。で、最近はPENと腕時計がセットでご依頼されることがありますね。PEN-FTは37万台の後期型。しかし、後期型にしては、光学系のカビや巻上げのゴリツキ、セルフタイマーレバーの緩みなど、あまり状態はよろしくありませんね。革ケースに入っていたようですから、湿気を呼んでしまったのでしょう。38mmレンズも大きなカビの華が咲いています。このカメラとレンズは、セット物ですね。腕時計は、中学生の時に購入したというセイコー・スポーツマチック5で6619-8110という、ごく一般的なケースのモデル。風防とケースは、かなりキズだらけで、永く愛用されたことが分かります。
裏蓋のへこんでいますね。余程強い腕なのでしょう。修正をしておきます。
セイコー5は、手巻き機構が省略されているのと、自動巻きを強調するために、リュウズは小さく4時の位置にあります。操作性は良いとは言えません。リュウズが不自然に出っ張っていました。原因は、巻き芯のネジ部が抜けていたためです。
分解をすると・・それほど悪い地板ではありませんが、香箱のホゾ孔の潤滑が切れて動き続けたためにメッキが剥がれています。ここは強いトルクが掛かっています。セイコーの技術解説書では、オイルではなくS-4グリスの使用を指定しています。
すべて超音波洗浄をしています。香箱内のゼンマイも洗浄注油をして組み込んで行きます。
輪列の組立画像は省略して、自動巻き機構です。ベアリングの注油とマジックレバーへグリスを塗布して組立てます。
ケースに収めたところ。じつは、何度か分解を受けた機械で、長針の付いている筒カナという歯車が緩んで、針回しが正確に出来ない状態でした。この歯車は、歯車ではなく、摩擦によって動いているからです。摩擦を調整して組み直しています。
それではPEN-FTをやりますよ。この個体は未分解機で、消耗は少ない個体ですが、とにかく保存がよろしくなかった。
30万代後期の個体ですから、ハーフミラーは金コート仕様なんですが、それにしては状態が悪すぎですね。全体的に蒸着メッキが飛んでいて、後ろがスケスケですね。中央付近の抜けはカビがメッキを食べちゃったんですね。これは交換することになります。
では、いつものように、ダイカスト本体の洗浄から始めています。スプロケットのアッパーギヤを取り付けます。
オーバーホールを終えてシャッター幕とドッキングをしたシャッターユニット。きれいなシャッター幕ですね。開発当初は、シャッタースピードが上がらす、チタン幕の端の強度を保つ部分のみ4/100mmで残して、全体的にはエッチングによって3/100mmとして始めて1/500が公称出来るようになったとか。1/500はちょっときびしいとは思いますが、チタン幕の強度を落とさずに軽量化をしたということ。表面には、強度補強のためのシボ打ちをしてあります。軽量化のため黒塗装は行わず、チタンの素材のままで使用するため、光線漏れを防ぐため、ご覧のように半円ではなく、少しラップ量を増やした設計になっています。ぎりぎり窓に掛かっていませんね。シャッター幕とギヤの取り付けは、強度を確保するため強力なカシメ加工となっています。たまに、裏側のスリ割りをドライバーで開けてしまう方がいますが、絶対に厳禁です。
シャッターユニットを本体に組み込んで巻上げテストはスムーズで良好。プリズムのカビはコーティングを剥がさないように、慎重に拭き上げをしてきれいな状態。
組立がほぼ終了した状態。しかし、気になったのはセルフタイマーとレリーズを繋ぐレバーの調整が極端になっていること。具体的には、セルフタイマーの作動時間を短くする処置で、変更前のレバーでは、イモネジによってレリーズとのクリアランスを調整する構造でしたが、変更後は1枚の帯板構造となって、先端のスリットをドライバーで広げて調整をするチープな構造に変わっています。そのスリットが、「これ工場の調整かなぁ?」と首をかしげるように広げられていました。そこで、標準のセッティングに戻してありますが、未分解機だよなぁ・・
トップカバーを取り付けていて、ハタと気が付きましたよ。留めビスの一つが変ですね。ネジロックを塗布されたビスが使われています。私は、ビスの使用個所ごとに管理していますので、他の個所のビスではありません。と言うことは・・・推理としては、この個体は、オーナーさんがホームカメラとして使用していて、セルフタイマーのリードタイムが長過ぎるので、短くSSで調整をしてもらったのではないでしょうかね。その時に、ビスは規格のあったものを適当に使われたという感じですかね。知らないけど・・
このレバーも美しくないなぁ。ストレートですから、ボディーと隙間が開いていてみっともないですね。生産前期では、レバーは微妙に曲がっていて、ボディーに沿っていたものです。工業デザイナーの米谷さんとしては拘ったところでしょう。しかし、生産終了間際になると、金型更新の時に、出来るだけ簡略化しようと、こんな形になってしまったのでは? とも想像します。知らないけど・・
殆ど使用されていない38mmですが、最悪の状態ですね。レンズは各面に盛大なカビが発生しています。また。ヘリコイドグリスの硬化変質により回転重い。鏡胴ガタが大きいです。これは、ヘリコイドの外側のネジ部のグリスが抜けているためです。レンズ清掃、ヘリコイドグリス交換と手間の掛かったレンズ。
革ケースに保管されていたため、ボディーはセルフレバー緩みによるスリ傷以外は全くきれいな個体。良く残っていましたね。残念ながら製造捺印は消されて(なんで?)いましたので、正確な製造年月は不明ですが、私の資料から推測すると、1970年11月から1971年4月までの可能性はあります。