なにか寒いですね。ではやりましょうか。このPEN-F #1014XXと初期型の個体ですが、初期型特有の劣化を殆ど感じないきれいな個体ですよ。PEN-Fの発売開始が1963-5月とのことですが、この個体の製造時期は1964-4月と約1年経過した頃の個体ですから、すでに最初期型からは改良も進んでいるのでしょう。で、症状としては、巻上げが出来ないのとミラーアップとのことですね。画像は、応急的にリターンミラーを復帰させて巻上げをテストしているところ。なるほど、最後で抵抗感がありますので、ブレーキにトラブルがありますね。
トップカバーを開けてみます。一見、未分解機に見えますが、じつは前板は分解されています。真鍮の接眼プリズム抑えの形状がすでに簡略化されています。
巻上げレバーのクラッチ部はまだ改良前のものです。巻上げレバーの最後で抵抗感があります。
巻上げの最後で逆転をしてチャージが完了しません。(レリーズが降りない)→のように巻上板のロック部に隙間が空きますね。この分だけ逆戻りをしてしまうのです。この場合は、裏側の下ギヤを分離されたということです。
ここね。何やら水油の臭いがプンプンしていますよ。大量に流しちゃったようですね。右のレリーズ送りは改良前のタイプです。三脚座のビスは開けられています。
不調の原因は、シャッター幕が正規の停止位置まで戻っていないため。
リターンミラーですが、すり傷は多いですが、ファインダー像だけですので再使用で良いと思いましたが、オーナーさんのご希望により、新品と交換することになりました。
シャッターは過去に分解を受けていますね。この頃のスローガバナーは調子が出ないものが多いので、ちょっと心配・・これからブレーキを分解します。
これだもんね。まともに動くはずがありません。腐食をすべて研磨しておきます。
リターンミラーの貼り替え。初期型は四隅を固定する方式ですので、以後の接着だけのタイプに多く発生するミラーの接着剥離事故がありません。技術屋さんの良心。その後は、コスト低減で簡略化をたどります。
まっ、いいや。完成した本体側と前板側をドッキングします。
このように、いつものお決まりの姿。
でね。この個体は駒数レンズを交換されているようです。工場ではこんなに下手くそに貼りません。接着剤もエポキシではなくゴム系を使用していた頃です。
表側から。モールドが非常にきれいですね。初期の頃のモールドは、ヒケが多くて品質は良くありません。金型を更新した後の部品です。
底部から。すでに、シャッターユニットが取り出しやすいように、ダイカストが切り欠きされた設計になっていることに注意。
初期型の個体に多い圧板のセット方法。以後の標準とは天地が逆になっていますね。途中で入れ直されたかも知れませんが、初期に多く見ますので、これでオリジナルの可能性もあります。また、オーナーさんが気にされていたスプロケットとスプールの色ですが、この仕様もありでしょうね。しかし、この個体のシリアル№より少し若い番号の個体で、スプロケットがアルミ黒アルマイト+グレー色スプールも確認しています。まぁ、色々混在していた頃なのでしょう。
全反射ミラーとブレーキOリングも交換とフルコースの作業となってしまいましたが、この頃の個体としては非常に状態がよろしいです。マウントの赤マークもすでに直線Iから●になっています。プリズムの腐食もありませんでしたから、保管は相当良かった個体ですね。
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