すみません。腕時計のご依頼が続いて・・もう少し続けさせていただきますね。2つの時計をご依頼です。まず、56キングセイコーです。(続きますね)祖父様から頂いて、そのまま30年間放置してあったという個体。カレンダーなしは珍しい5621-7021というケースが裏蓋ありとなった後期のモデルです。この方がメンテナンスしやすいですね。デザインは伝統の7000番です。流石に、由緒のある個体ですから、文字盤が素晴らしくきれいです。カレンダー付きはサラリーマンの便利時計とも言えますから、カレンダーなしの方が高級に見えます。で、問題はです。測定不能なほど極端な遅れです。過去に一度分解掃除をした形跡がありますが、特にいじり壊されたような感じはありません。油切れと判断してO/Hをします。
同じ56系が続くので画像も同じです。この個体は、あまり長期には使われなかったようですね。磨耗は少ないと思います。
文字盤と針を取り付けて、快調に動きはじめました。
テンプの天芯に磨耗は少なく、姿勢差はあまりありません。オークション物より状態は良いですね。
次のモデルは、セイコー5スポーツ5126-8080で亀戸の機械ですね。5626Aは23石で5.5振動で1968年製になります。51ニューファイブのバリエーションモデルというところでしょうか。若者向けに一見、ダイバーウォッチのデザインです。回転ベゼルは逆回転防止にはなっておらず、クリック機構もありません。ベゼルを留めるスプリングも怪しい形状で、オリジナルなのかは不明。粉々になっているのがパッキンなのか、はたまた汚れの固形物なのか?
超音波洗浄をしたところ。ケースとガラス風防には傷が多いですが、オーナーさんは気にならないご様子なのでこのまま研磨はしません。回転ベゼルが緩いので、何か対策をしたいと思います。
ダイバーウォッチの雰囲気ですね。亀戸の製品は諏訪に比べてガッチリとした製品が多いように感じます。この頃のセイコーファイブには膨大なデザインのモデルがありましたね。全く同じモデルを見つけることは至難です。私が当時所有していた諏訪のニューファイブも探しているのですが発見できません。では、51系の分解です。
搭載されている5126Aの基礎キャリバーは5106Aで、セイコーマチックP搭載の機械を簡略化したものですね。ファイブなので手巻き機構は省略でハック機能も無いです。カレンダーの送り機構も差がありますので、瞬時送りではないようです。
すべて分解洗浄をしました。測定不能の遅れはテンプにありそうです。ひげゼンマイの変形とテンワ(リング)も変形しており、下手くそなベー独楽みたいに上下に激しく振れて回っています。
51系発売の翌年には諏訪の56系が発売されますが、それ以前の見慣れた設計の機械とは全く眺めが違いますね。薄型高性能を追求した結果でしょうか? 輪列配置や自動巻き機構も特徴があります。
テンプのテンワの振れを修正して仮にセットしています。自動巻きの伝エ受を組立てます。
不安定だった測定グラフもテンワを修正をして、ほぼ安定しています。ひげゼンマイの修正で、歩度も正常範囲に入っています。
文字盤と針を付けて。
ケースは軽くバフ掛けをしてあります。ベゼルリングはOリングを追加してダンパーを利かせてあります。
研磨をしたケースに機械をケーシングします。5.5振動でテンワも56系より大きいですね。じつは、不注意で回転錘の止めねじを紛失してしまい、諏訪の機械から流用しようとしましたら、ねじ径が太くて使えません。手持ちのファイブDXから調達しましたが、同じ会社で、なんでねじ径を統一していないのかなぁ? 旧海軍と陸軍の戦闘機エンジン規格に互換が無いのと一緒のように思えるなぁ・・
先に完成していた56KSのケースも軽く研磨をしておきました。本格的なダイバーウォッチというモデルではなく、若者向けの雰囲気デザインというところでしょうね。51系と56系では、56系の方が圧倒的に構造組立が容易だと思います。51系ファイブは、製造期間2年あまりと比較的短命に終ったモデルです。
ANさんからスミスの懐中時計が来ましたので、突っ込みでやってしまいます。スミスは金無垢のデラックスが欲しいですが、中々手が届きませんね。SMISH SPECIALと文字盤にプリントされていますが懐中時計は良く知りません。
懐中時計の設計は、基準となる機械があるのでしょうね。どれも同じ配置です。19セイコーもこれらをお手本としたのでしょう。状態は、振るとコチコチと動いて止まる状態。完全にメンテナンス不足による油切れの状態ですね。動くということは、致命的な欠点はないのでしょう。しかし、腕時計から見ると、ダチョウの卵のような大きさに見えます。
古いオイルが固化して、洗浄には超音波洗浄液を何度か交換しました。では、組立てます。
幸い輪列にはルビー穴石が多く使用されていますので比較的状態は良好かと思いますが、長く使われたためにゼンマイを巻く丸穴車と角穴車の磨耗が見られます。
問題はテンプで、おそらく天真を交換歴があるのでしょう。ヒゲゼンマイの状態もよろしくなくて片振りが大きく、そのためアオリの調整が困難です。ゼンマイの巻き量を変えながら歩度の調整を繰り返します。
で、オーナーさんは前にご紹介をしましたZIN-DESIGNのANさんですが、同梱ですばらしい桐箱が届きましたよ。
うぁ~、高貴な紫色の組紐製ストラップですよ。従来には無い和の雰囲気一杯のストラップですね。しかも、この桐箱。メーカーさんのこだわりが伝わって来ますね。
それでは私所有のFVグレーに付けてみますよ。個性的で、組紐独特のしなやかさがあります。
では、米谷さんサイン入りのFVグレーと完成したSMITH SPECIALとのツーショット。懐中時計には和装用の組紐ストラップはあったと思いますけどね。購入ご希望の方はZIN-DESIGNさんまでお願いします。
http://zin.leaseands.com/