私の腕時計の記事に触発されて、カメラのお客さんがヤフオクでいきなりセイコーGSをGETされて来ましたよ。あら恐ろしいことを・・キャリバー5646Aを搭載したモデルは、GS最終のモデルで、この個体は1974年の製造になります。56系のGSは基礎キャリバーはLM(ロードマチック)で8振動化をしてGS ・KSにも搭載された薄型高性能な機械になります。しかし、この個体の状態はよろしくありませんね。テンプをアシストしても全く不動の状態。内部には水気が侵入した形跡があります。回転錘の腐食も激しいですが、この部品はGS用ではなくKS(キングセイコー)用の5625Aのものに変えられています。
そそのかした私にも、多少の責任は感じますので、何とか治すことにします。で、応急に作動するようにしてタイムグラファーに掛けて見ると・・あら、あり得ないデータです。緩急針での調整が全く出来ません。原因は、ヒゲ棒が曲げられており、ヒゲゼンマイがヒゲ棒とヒゲ受けの間を通っていないのです。これでは変化をするわけがありません。
すべて分解洗浄をして部品を点検して行きます。二番車、三番車は腐食がありますので交換とします。
地板は洗浄で意外に腐食はなく、きれいになりました。LM、KSとは仕上げが違うのでしょうかね? ツヅミ車、キチ車などリューズ部分を組立ててから内部のO/Hを済ませたゼンマイの入っている香箱車から組み込んで行きます。
輪列と自動巻きの切換伝エ車を組んで一番受を載せますが、ホゾは一発でピタッと収まりました。流石にGSの精度です。
テンプの曲がったヒゲ棒は慎重にまっすぐに修正してあります。一度曲がると折れる可能性が高いのでラッキーでした。ここで、精度を見ておきます。大きかった片振りも修正して、あのテンプでは、まぁまぁでしょうか。
56系ユニットの欠点は、カレンダーの早送り機構が壊れやすいこと。揺動レバー(ピンセット先)の樹脂製(初期は金属)の歯車が破損したりスリップしやすくなって日車を回転させるトルクが出なくなっているのです。オーナーさんがオークションで入手を試みましたが落札に失敗したため、このままでは完成しないので、私の手持ちから良品を取り付けてあります。
一般的なシルバーの文字盤ではなくて梨地状の洒落た文字盤です。針も、品の良い尾なし棒針です。秒針の中心は芯穴のないフラットなタイプです。
完成したユニットを軽く研磨洗浄をしたケースに収めて自動巻きの仲介車と研磨をした回転錘を取り付けます。オリジナルの回転錘には5646Aと刻印されていたはずです。
完成の図。文字盤が暗く見えるのは、風防ガラスがグレーのスモークが入っているため。傷がありますが、現在では純正品の入手は絶望的ですので、そのままとします。
こんなような品の良いデザインです。56系のGSやKSは現存数も多く、使いやすい時計ですが、持病のカレンダーの早送りが出来ない個体が多いですから、入手の場合は正常に作動するかを事前にチェックする必要があります。すでにメーカーからの部品供給はありません。
http://www6.ocn.ne.jp/~tomys800/