今なにしてる         (トミーのリペイント別館)

カメラ修理などについてご紹介します。
富塚孝一
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ローライ35TEの巻

2020年04月04日 11時45分00秒 | ブログ

その前に、もう一台35SEをやっておきます。作業は同じですが、トップカバー角のへこみを修正せよとのご指示。ローライ35は小さい割に質量が重いですから落下をさせたものが多いですね。しかし、三辺の頂点がへこむと戻すことは無理ですね。

観察すると、へこみだけではなく素材に亀裂(ささくれ)も起きています。このような場合はハンドプレスの機械を使用して押し出しますが、かなり大きな力を掛けないと出て来ません。特にクロームボディーの場合は素材+ニッケルとクロームのメッキ層があって、ブラック塗装(アルマイト)に比べて非常に強度が上がっているのです。

ゾナーは直進ヘリコイドですからインナーとアウターのヘリコイドネジがあります。古いグリスが硬化して回転が重くなっていますので洗浄して新しいグリスを塗布します。

 

レンズは前縁のリングを緩めるとザザーっと一体で外れて来ますので注意が必要です。レンズを清掃して組み立てていきます。

 

で、35TEです。35SEのレンズをテッサーに変えたモデルですね。この個体はブラックモデルですが、カバーの素材は真鍮ではなくアルミで、表面処理は塗装ではなく黒アルマイト処理です。ですからクロームモデルに比べてペラペラに軽く強度もありませんので落下をさせるとすぐにへこみます。しかし、その分修正はやり易いとは思います。

車の板金ですと「板金修正」➡「パテ修正(研磨)」➡「サーフェサー研ぎ出し」という工程で表面のへこみや歪を修正して平滑面にするわけですが、カメラの板金は裏から押し出すのみですからきれいに修正することなど出来ない訳です。また、今回の一連の個体はシボ革が粘るような感触です。これは、それ以前に製造された個体には起きていないもので、材質変更により経時的に変質しているものと思われます。また、TEで気になるのは彫刻(プレス)文字がタンポ印刷に変えられていて非常にチープに見えます。コストはそれほど変わらないと思うのですけど、製品の顔の部分に何故ここまでコストダウンをするのか首をかしげます。

35S(SE)のゾナーに比べて本体からの分離は簡単です。では、シャッターとレンズの清掃をして行きます。

 

レンズの回転が重いのにスッと抜けてしまう部分がある。過去に分解歴がありますからオリジナルのグリスではないと思いますが、ヘリコイド部分以外にも大量のグリスが着けられています。ネジ山の部分に必要最小限を着けておけば良いのであって、大量に着けても意味はないのですけどね。

シャッターユニットを本体に戻してフィルムレールを取り付けますが、あれっ? 右端の裏蓋レールカバーが曲がっているのに気が付きましたよ。

 

これ、PENでもありがちな変形ですが、裏蓋をセットする時に乱暴にしたのでしょう。修正をしておきます。

 

無限調整をして化粧プレートを接着しておきます。

 

 

ははぁ、絞りのロックを右側に倒すと解除される機構が付いていますね。

 

 

左に戻すと解除されて従来と同じ操作になります。

 

 

これで完了です。SE,TE共、適正露出はLED3個(上下赤・中緑)によって表示されるためアナログメーター式に比べて感度の傾向が掴みにくいと思いましたね。また、シボ革の材質変更による劣化やトップカバーやダイヤルの彫刻(プレス)文字が印刷になるなどのコストダウンを受けているのも、返って製品の完成度を落としていると感じる点も残念ではあります。尚、シボ革のネバリについては「アキアサヒ」さんから発売されている交換用のシボ革に変えた方が気分良く使えるかもしれません。

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