今なにしてる         (トミーのリペイント別館)

カメラ修理などについてご紹介します。
富塚孝一
(お問合せ)tomytmzk@titan.ocn.ne.jp
 

新品同様PEN-EES

2012年11月13日 14時43分11秒 | インポート

Dscf029953 素晴らしくきれいなPEN-EES #7669XXが来ましたよ。最近はEEはセレンがダウンしているものが多くて、個体数を減らしていますが、この個体は後期の生産でもあって感度も良好です。全体のメンテナンスということで始めています。レンズも全くカビや曇りはありません。

Dscf030011 EE系の場合はシャッターユニットと本体とのガタが発生し易い傾向にあって、シャッターユニットが緩んでいる個体もしばしば見ることがあります。その対策として、工場では、ベースプレートへの留めビス4本に黒い強固なネジロックを施されています。それを清掃してみると、1ヵ所のみアース取りのために塗装が掛かっていません。

Dscf030123 ダイカスト本体は洗浄してあります。これが露出メーターを背負ったシャッターユニットASSYです。独創的な発想と合理的な設計により、非常にコンパクトに仕上がっていることが分かります。他メーカーのハーフカメラとは、全く設計思想が違うことが分かります。

Dscf030210 EESはプログラム式EE 1/30秒と1/250秒の2速式。→の針オサエが2段式となっています。(初期EEは1/60秒単速)レンズキャップを装着して保管されていたと見えて、メーターの感度も非常に良好です。一体式のファインダーを清掃してあります。

Dscf030320 殆ど使われた形跡の無いぐらいきれいな状態。ただし、分解歴はあると見えて、駒数カニ目ビスは痛んでいますので、新品と交換しています。その他、ファインダー上のグレー塗装部分に角剥離があって(僅かです)修正ご希望でしたので、タッチアップをしてあります。しかし、メッキ面に通常塗料では持たないと思いますよ。

http://www6.ocn.ne.jp/~tomys800/


ブラックリペイントのPEN-FT

2012年11月10日 23時39分02秒 | インポート

Dscf028617 ブラックリペイントのPEN-FTが来ています。すばらしくきれいなペイントですね。勉強になります。オーナーさんからは、巻上げフィーリングなど気になる点がありでオーバーホールのご依頼です。シボ革は本皮か合成皮に張り替えられていますが多少歪が目立ちます。

Dscf029144 トップカバーを分離するために、セルフタイマーレバーを外しますが、ボタンが強固に締まっていて分解できませんでした。そこで、裏技で強引に分離をしてみると、見えますかね? 接着剤で接着されていました。なぜ接着をしなければならないのか不明ですが、接着をされると再分解が出来なくなるのです。それ以前にボタンの復帰が変でした。観察してみると、↑の板バネが不自然に内側に曲げられています。先端下部の突起でボタンのテンションを掛けているので、これですとボタンが戻らないことになります。

Dscf029312 苦労をされていますね。シャッターダイヤル取付け部の上下が削られています。これは、シボ革を軟らかな材質に変えたために、前板との段差のあるシャッターダイヤルが表面に出っ張るのを修正されているのでしょう。FTは、純正のシボ革でも、ボディーの段差を修正するために、部分的にビニールテープを下張りしてありますので、薄く軟らかな材質のシボ革を貼ることは難しいのですね。

Dscf029616 シャッターユニットを分解して洗浄、点検しています。フライホイールを留めるナットは、緩み止めのためダブルナットになっていますが、それでも緩んでいる個体があります。この部分が緩むと、シャッタースピードが変えられなくなります。

Dscf029746

ピンボケになっちゃいましたね。セルフタイマーレバーの作動が問題ありの原因ですが、再組立をしてみると、セルフタイマーとレリーズを繋ぐリンケージレバーが固着してレリーズと同調して動いていません。これは、稀にありますが、↑のレバーシャフトを締め込むとレバーが固着してしまう不具合。このような場合は、調整ワッシャーを挟んで干渉しないようにしてやります。レリーズの昇降に同調してレバーが動いていることに注意。

Dscf029844 この個体のシャッターユニットは、巻上げ量に余裕がなく、2回巻上げになるギリギリの状態で、調整に時間が掛かりましたね。セルフタイマーボタンは分離時に塗装に傷が着きましたので再塗装をして取り付けます。純正では塗装ではなく、黒メッキとして可動部分の磨耗による剥離を防いでいますが、リペイントの場合は黒塗装のみですので、分解のために工具を掛けると剥離しやすいのです。


国鉄勤続表彰のセイコー・スーパー

2012年11月07日 23時29分20秒 | インポート

Dscf028515 オークションでセイコー・スーパーの不動ジャンクを入手しました。1954-1月製と、たぶん私の誕生日と数週間の違いで製造された個体でしょう。裏蓋には「永年勤続功績者総裁表彰記念・日本国有鉄道」と彫刻されています。表彰の記念時計には鉄道時計は使わないのですね。この時計を授与された方は恐らくご存命ではないでしょう。それで、処分品として流失したものと思いますが、これを手に入れ方が、不動を治そうとして裏蓋を開けてテンプ付近をごちゃごちゃに壊してしまって、手に負えなくなってジャンクで手放した。というところでしょう。しかし、カメラでも時計でも、下手の何とかはあるものです。ケースはステンレス製のため、大きな劣化はありませんが、手垢の堆積から、自慢で永く身に着けていたことが偲ばれます。テンプですが、天真が折れており、ひげゼンマイもびょ~んです。耐震装置が無いので、不注意により落下をさせて天真を折って不動となったものを、後年、手に入れた方が治そうとしてこのようになったものでしょう。不器用な方は無理なんだって・・

Dscf028616 ピンボケですみませんね。そろそろマクロに強いデジカメに変えないといけませんが、どなたか古いので良いのですが、余っていませんでしょうか? で、いつもように洗浄を終えて輪列を組んでいます。右上の香箱車の中にゼンマイが仕組まれていて、二番車から四番車までの伝達が分かりますでしょうか? 歯車を伝達して行くと共に、回転のスピードを上げて行き中央の四番車には秒針が付くのですよ。

Dscf028701 輪列までには問題はありませんでしたね。ガンギ車を介してその後が問題でした。左上のアンクルはガンギ車の回転運動を往復運動に変えてテンプに伝達する役目ですが、これが、テンプを無理に入れようとして変形がありましたので交換しています。テンプは天真とひげゼンマイが不良のため、組み直しではなく、良品と交換しています。テンプは旧式なチラネジ付きなのに注意。

Dscf028810 これが彫刻入りの裏蓋。摩滅状態から、何十年と長期間の使用はされなかったと推測します。よってケースの状態も悪くはありません。文字盤にはシミがありますが、これも比較的きれいで、長期の使用機ではないこと示しています。落下によって天真を折ったために使用を中止したものかも知れません。しかし、修理歴はありましたね。

Dscf028722 完成した機械に文字盤を取り付けています。ケースは洗浄をして当時の雰囲気を残すように軽く磨いてあります。風防は、バブルっぽい形が良いので、こちらも研磨をして再使用とします。

Dscf028811 ケースに収めてリューズと針を取り付けています。この個体の秒針の色は黒に見えますが、裏面の吹き回りを見ると紺色だと分かります。秒針の塗装色は他に赤、茶、青などのバリエーションがあります。針同士の接触が無いことを確認して風防を取り付けます。

Dscf029013 この頃の腕時計には茶色のベルトが似合いますので、仮に取り付けてみます。ベルトのラグ幅は16mmと、現在の標準的な18mmより、かなり細く、時計もボーイズサイズです。国鉄の表彰記念品ですから、ベルトと同じ色のぶどう2号色の旧型国電とツーショットです。


良い面構えのPEN-W

2012年11月01日 20時30分19秒 | インポート

Dscf027321_2 ちょっと手こずっておりました。では、次に掛かります。PEN-W #1090XXが来ていますが、盛大に剥離をしていますね。シャッターは不動となっていますが、外観からは意外にレンズの状態はバルサム黄変はありますが、曇りはありません。

Dscf027574 トップカバーも盛大に剥離をしており、勿論分解歴もあります。ファインダーの清掃をしてありますが、カバーの接着が強すぎてハーフミラーまで付いて来ました。駒数ガラスにはクラックがありますが、交換しなくて良いかなぁ? 右の吊環部が陥没していますので、吊環を外して修正をしておきます。

Dscf027673 シャッターも分解されています。内部も埃の混入が多かったですが、地板とケースを洗浄しています。特に部品に不具合は無いようです。

Dscf027701 組み上がったシャッターユニット。過去に分解組立を受けていまして、ちょっと変なことをしてあるのですが、それでは調子よくは動かないと思いますね。それ以外、外観の状態からは意外に悪くはありません。作動も確実です。洗浄した本体とカバー類。剥離は進んでいる方ですね。塗膜が剥離し掛かっている部分が多いので、洗浄には気を使いました。シボ革の溝に手油ごってりでは洗浄しないわけには行きません。

Dscf027828 塗装以外にシャッターリングと距離リングの劣化も激しいですね。PENのシャッターリング関係は表面処理があまり上質ではなくて、下地の無いハードクロームかと思いますが、湿気の多い環境にあったものは残念な状態になっているものが多いです。距離リングも収納時にレンズキャップを付けずにあたと見えて、先端のローレット部分のアルマイト層が摩滅して、そこから腐食が進行したものですね。過去の分解時に多少歪みになっているようです。

Dscf028047 通常、このぐらいの外観であれば、レンズもバルサム剥れや曇りが進行していることが普通ですが、この個体は多少黄変はありますが、奇跡的に良好な方だと思います。たぶん、継続的に使われていたものでしょう。しかし、外観のコンディションとは異なり、シャッターは快調となり作動は絶好調となっています。あとは、同時にご依頼がありました、フードを製作しておきます。本体の剥離が激しいので、塗装をしなくてもカッコいいんじゃない? 駒数ガラスにはクラックがありましたが、まぁ、換えても一緒だとそのままとしています。

Dscf027951 前後しました。ファインダーのレンズとミラーは分離清掃をして再接着しています。ハーフミラーの位置がずれると光枠の位置が動きますので正確に貼っています。吊環部のへこみは、吊環を分離して修正をしてあります。

Dscf0283671 真鍮のままというわけには行きませんので塗装をしました。PEN-Wはフードが似合いますね。これで完成。