今なにしてる         (トミーのリペイント別館)

カメラ修理などについてご紹介します。
富塚孝一
(お問合せ)tomytmzk@titan.ocn.ne.jp
 

きれいな初期型PEN-F

2014年02月06日 20時09分39秒 | インポート

Img_3501151 なにか寒いですね。ではやりましょうか。このPEN-F #1014XXと初期型の個体ですが、初期型特有の劣化を殆ど感じないきれいな個体ですよ。PEN-Fの発売開始が1963-5月とのことですが、この個体の製造時期は1964-4月と約1年経過した頃の個体ですから、すでに最初期型からは改良も進んでいるのでしょう。で、症状としては、巻上げが出来ないのとミラーアップとのことですね。画像は、応急的にリターンミラーを復帰させて巻上げをテストしているところ。なるほど、最後で抵抗感がありますので、ブレーキにトラブルがありますね。

Img_350225 トップカバーを開けてみます。一見、未分解機に見えますが、じつは前板は分解されています。真鍮の接眼プリズム抑えの形状がすでに簡略化されています。









Img_350344 巻上げレバーのクラッチ部はまだ改良前のものです。巻上げレバーの最後で抵抗感があります。










Img_3504641 巻上げの最後で逆転をしてチャージが完了しません。(レリーズが降りない)→のように巻上板のロック部に隙間が空きますね。この分だけ逆戻りをしてしまうのです。この場合は、裏側の下ギヤを分離されたということです。








Img_350545 ここね。何やら水油の臭いがプンプンしていますよ。大量に流しちゃったようですね。右のレリーズ送りは改良前のタイプです。三脚座のビスは開けられています。









Img_350674 不調の原因は、シャッター幕が正規の停止位置まで戻っていないため。











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リターンミラーですが、すり傷は多いですが、ファインダー像だけですので再使用で良いと思いましたが、オーナーさんのご希望により、新品と交換することになりました。








Img_350848 シャッターは過去に分解を受けていますね。この頃のスローガバナーは調子が出ないものが多いので、ちょっと心配・・これからブレーキを分解します。









Img_350961 これだもんね。まともに動くはずがありません。腐食をすべて研磨しておきます。











Img_351038 リターンミラーの貼り替え。初期型は四隅を固定する方式ですので、以後の接着だけのタイプに多く発生するミラーの接着剥離事故がありません。技術屋さんの良心。その後は、コスト低減で簡略化をたどります。








Img_351136 まっ、いいや。完成した本体側と前板側をドッキングします。











Img_351291 このように、いつものお決まりの姿。












Img_351366 でね。この個体は駒数レンズを交換されているようです。工場ではこんなに下手くそに貼りません。接着剤もエポキシではなくゴム系を使用していた頃です。









Img_351485 表側から。モールドが非常にきれいですね。初期の頃のモールドは、ヒケが多くて品質は良くありません。金型を更新した後の部品です。










Img_351555 底部から。すでに、シャッターユニットが取り出しやすいように、ダイカストが切り欠きされた設計になっていることに注意。










Img_351776 初期型の個体に多い圧板のセット方法。以後の標準とは天地が逆になっていますね。途中で入れ直されたかも知れませんが、初期に多く見ますので、これでオリジナルの可能性もあります。また、オーナーさんが気にされていたスプロケットとスプールの色ですが、この仕様もありでしょうね。しかし、この個体のシリアル№より少し若い番号の個体で、スプロケットがアルミ黒アルマイト+グレー色スプールも確認しています。まぁ、色々混在していた頃なのでしょう。



Img_351875 全反射ミラーとブレーキOリングも交換とフルコースの作業となってしまいましたが、この頃の個体としては非常に状態がよろしいです。マウントの赤マークもすでに直線Iからになっています。プリズムの腐食もありませんでしたから、保管は相当良かった個体ですね。
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痛かったPEN-F

2014年02月02日 12時05分53秒 | インポート

Img_349226 短いネタをひとつ。以前に私がO/HをしたPEN-FTですが、女性オーナーさんが登山中にバランスを崩して落下と体重を掛けてしまったとの事です。あらまぁ、オーナーさんもですけど、カメラも痛かったでしょうね。道具だから使用中の事故は仕方ありません。しかし、底蓋の留めビスのネジ孔を破損して、底蓋のネジ穴を拡大しながら開いてしまったという、あまり無い破損の仕方です。




Img_349322 慎重にダイカスト本体側のネジ孔をタップ修正をしてあります。底蓋の変形も修正をしてみましたが、深い傷が痛々しいですね。在庫から良品を取り付けてはみましたが・・








Img_349511 オーナーさんのご判断により「今後の戒めにしたい」とのことで、オリジナルの底蓋を付けておきます。それも考え方でしょうね。私などは、少しでも良い状態にというのが性格というか修理上の癖になっているようです。今後は事故のないように気をつけましょうね。
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セイコー・チャンピオン860を仕上げるの巻

2014年02月01日 23時16分00秒 | インポート

Img_343934 久しぶりに時計をやります。60年代のセイコーからは普及クラスの手巻き腕時計として、諏訪精工舎からはスポーツマン17、第二精工舎(亀戸)からはチャンピオンが発売されていました。今回のモデルはチャンピオン860(17石)です。当初は非防水ケース、カレンダー無しから発展して防水ケース、さらにカレンダー付きとなった良い頃の製品で、1963/4月製です。50年以上前の製品としては、文字盤(AD)もまずまずのきれいさで、ケースは当時としては大型(36mm)のステンレスケースです。この時代からは自動巻きのモデルが主流となって来ますが、時計の基本は手巻きです。現在、複数の機械式時計を使用する場合、例えば自動巻きのセイコー5などは手巻き機能がありませんので、腕に着けていないと止まってしまいますが、手巻きモデルは瞬時にリューズでゼンマイを巻くことが出来ますので便利なのです。機械式腕時計の入門用としてはうってつけでしょう。ご希望の方があればお譲り致します。予定価格12,000円です。

Img_344121_3 少し時間が空きました。事情によりしばらくの間、ブログの更新はゆっくり目とさせて頂きますね。で、チャンピオンです。自動巻き機構がありませんので、組立は非常にシンプルです。普及クラスの機械ですが、順高級機クロノスの後継ですので第二精工舎のガッチリとした作りの機械です。あまり磨耗の進んでいる個体には出会ったことがないですね。ゼンマイ(香箱)もきれいです。




Img_344352 非常に組立やすい機械で、受けのホゾもピッタッと決まってくれます。受けのデザインが特徴的ですね。










Img_344464 ひっくり返し。筒カナが磨耗ぎみでしたので、二番車とセットで交換してあります。カレンダー付きとなりましたが、日車だけですね。










Img_349667 ケースがねぇ。ちらっと見たときより傷が多かったですね。研磨をしてありますが、実用品として使われた個体ですから仕方が無いところです。風防にベゼルを圧入します。









Img_349764 完成したケースに機械を組み込みます。文字盤はAD文字盤といって、インデックスの仕上げがスペシャル(真鍮にロジウムメッキ)なタイプが付いています。(6時上のマーク)









Img_349833 チャンピオンは優秀な機械で歩度も安定しています。姿勢差も考慮して調整をして行きます。










Img_349975 パッキンをセットして裏蓋を圧入します。












Img_350024 仮のベルトを取り付けて完成の図。防水ケース(36.5mmリューズ含まず)となって少し大柄でガッチリとした時計ですね。よってラグ幅は19mmです。しかし、自動巻きより薄く、軽い重量で腕に馴染みます。ロングランテストでは、ゼンマイ一杯で2日間動き続けていましたのでフリクションも軽いと思います。アンティークな機械式時計を実用で手軽に使いたい向きには良い時計ですね。
(お譲り先が決まりました。ありがとうございしまた)

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