何やら怪しいPEN-FT(B)とPEN-Fですよ。FTベースのメディカル機ですが、製造後期の個体で、トップカバーは普通のFT(B)のものと共用しています。
光学系プリズムなどが違いますので普通の撮影は出来ませんね。セルフタイマーは不要ですが、トップカバーを共用のためグロメット部品を作って塞いでいます。クロームボディーでも同じ仕様はあります。クロームとブラックは仕向けによって使い分けたのでしょう。
#3472XXで製造は1970年3月となっていますが、これは他の同時期の個体と整合性があります。ニコイチなどではなくオリジナルであるということ。不要の情報窓用明り取り窓はそのままです。
トップ面にかなり激しく打痕がありますね。修正はしますが痕は残りますね。
メディカル機は未分解が多いのですが、外観の印象と違って内部は分解されて荒れています。ストロボリード線の接片が欠落しています。(そもそも接続されていない)MX切換接片の絶縁樹脂が破損しています。これはトップカバーを閉める時に接片の位置を合わせずに無理に押し込んだからです。
あまり使用された個体が少ないメディカル機の中では使われた方ですね。何かの液体が巻上げ部分を中心に侵入していて乾燥した形跡があります。
本体は洗浄組み立てをしてあります。FTの仕様なため露出計は搭載されないので、すでにリード線が半田付けされている電池接片からリード線を外した形跡があります。
シャッターユニットは最後期のタイプで、チャージギヤはナットによる組立式です。それ以前はカシメのため分解が出来ない仕様でした。なぜ最初から組立式にしなかったのか? この機械は「緩み」ということに対して神経質になっていたようです。
他の個体から普通のFTの光学系を調達しますが、殆ど全分解に近いので手間が掛かりますね。こちらの前板ごと載せ替えた方が簡単ですけど、それは出来ないのです。
リターンミラーユニットをオーバーホールしてあります。Mバネカケを交換しておきます。
通常のオーバーホールであれば、とっくに終わっているのですがここまでです。シンクロ接片の樹脂が欠落していますので、リード線と共に交換します。
駒数板も痛んでいますが、下にあるオヤギヤなども腐食していますのですべて交換します。みそ汁のような液体が侵入していて、鉄、真鍮を侵していますので薬品系の液体かも知れません。
クロームボディーのメディカル機は基本的にFV仕様となりますが、ブラックの場合はFT(B)ベースとなるため必要のないASA感度付きのシャッターダイヤルとなるのですが、接着されているため感度設定は出来ない状態になっています。無理にダイヤルを引くと・・完全に戻らない状態になりました。
ASA 25に色入れがされていません。これは、この部分が窓に出るようにして不必要な表示を消すためです。
やれやれ、やっと正常に動くようになりました。ASA 25の色を入れ直してあります。
組立は完成ですが、光学系の変更によりピントの再調整が必要になります。露出計の感度調整も終了。
当然、セルフタイマーも装着は可能ですが、すると完全にFT(B)となってしまいますので、識別のために敢えてセルフタイマーは無しの仕様として専用のグロメットを接着しておきます。
セルフタイマーは未装備のため取付けネジは専用ナットによりダミーとして取り付けておきます。
アンダーカバーもFT(B)仕様のため不要な電池室(蓋)を装備していましたので露出計付きへの改造には好都合でした。一見簡単に思えるメディカル機から通常仕様への変更には細かなところでの再調整が必要になりますので経験が必要です。また、後世の人が悩む個体を作ってしまった・・。
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