今なにしてる         (トミーのリペイント別館)

カメラ修理などについてご紹介します。
富塚孝一
(お問合せ)tomytmzk@titan.ocn.ne.jp
 

分解機のPEN-Dの巻

2022年11月21日 21時00分00秒 | ブログ

オーナーさんご自身でも分解組立をされるようです。PEN-D #6710XXが到着の後でPEN-Dの分解部品が届きました。「あと10年使えるようにしてください」とのことですが、このシャッターは厳しいかも知れませんね。まぁ、頑張ります。時に問題は巻き止めが利かないということのようです。あ~なるほど・・

ここのネジは工場で調整されていて緩み止めが塗布されていますので緩めてはいけません。巻上げロックの掛かり量を調整してあります。

 

あと、シャッター連動ののレバーが|の位置に飛び越していました。これですと巻き止めは掛かりません。

 

古いモルトをドライバーの先でゴシゴシ落としましたか? 剥離が不完全な上にアサヒさんのモルトを貼った? 古いモルトの除去は溶剤で溶かして楊枝で取り除けばダイカストに傷を付けません。とにかく汚れ放題なのでモルトの除去後洗浄します。

 

絞りリングのダンパー用ブラシが1か所しか付いていませんね。まぁ、このような調整の個体もありますけど、普通は2個か3個で、D3の頃になると殆ど3個です。1個の押さえだと回転の重さが回転角度によって変わってしまうことがありますね。

ヘリコイドグリスを入れ替えてからシャッター部品を分解洗浄して組み立てます。

 

 

組み上がったシャッターユニットとヘリコイド部。問題は後玉です。

 

 

右がオリジナル。D系の後玉はどうしてもこのように曇りますね。これは拭いても取れません。PEN用レンズはコストが厳しいのかガラスやコーティングの質があまり良くないと感じます。ローライ35などは、殆ど清掃でクリアーになる印象ですが高級カメラと比較は出来ないですね。レンズが健全であれば生き残れる個体も沢山あるのに惜しいと思います。今回は、後から来た左のレンズを使います。

この個体もシャッターユニットとダイカスト本体との位置決めピンを無くして来ています。製作して取り付けます。

 

上側のモルトを貼ってから巻上げダイヤル部を取り付けます。

 

 

巻き止めの掛かり量は1/2を越していれば良いです。

 

 

あとは露出計(ファインダー)と前玉です。

 

 

前玉はリングナットのスリ割に塗装ハゲがありますが分解出来たのでしょうか? 特に曇りはありませんでしたが清掃をしておきます。

 

メーターの感度はしっかり出ているんですね。セレン恐るべし。メーター窓や駒数窓の曇りやキズが多いので研磨をしておきました。

 

やはり専用のフィルターは薄くピッタリと合っていますね。10年間しっかりと使ってくださいね。

 

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44万台のPEN-FT(B)の巻

2022年11月19日 10時00分00秒 | ブログ

みなさんも、そろそろFTに飽きて来ましたでしょうか? この個体はシリアル#4406XXからは最後期の生産と思われますが、1970年3月製と一つ前に続けてやりました34万台より生産は古いのです。この頃のシリアル№についてはミステリーがありますね。で、未分解かと思いましたがシボ革の接着が弱いので分解機と思いました。

しかし、シボ革を剥がしてみると通常のケトンで溶かしながら貼るグッドイヤー糊ではなく、元々両面テープと同様な糊(硬化しない)で貼られていることが分かりました。私もシボ革貼りの作業は当時のカメラ生産で経験していますが、これが意外に熟練が必要なのです。(一度貼り合わせると位置を直せない)70年代になると、そのような熟練作業から簡単に作業が出来る両面テープ貼りに移行していく過渡期ですので、このような仕様もあったものかと思います。画像のように楊枝で絡めとるとネバネバです。

ファインダーのモルトは不完全に貼り替えられていましたので、やはり分解機でした。

 

 

のバネカケの取付位置が180°違っています。これですとMシンクロ接点を叩けません。まぁ、今は問題ありませんけど・・あと、配線の通し方が違います。

 

シャッターユニットを分解して行くと・・。これは稀にある不具合です。テンションシャフトの軸受け部分のメッキが剥離しています。このメッキ不良は定期的に出て来ます。本来は交換した方が良いですけどね。

 

完成したシャッターユニットを本体に搭載してテストをして行くと、稀にシャッター幕が停止位置で止まらない症状があります。「ケイシツメ」が回転する右の「ケイシヘン」を確実に止められないようです。別の部品と交換して改善していますが、あまり不具合になることが少ない部品ですので、テンションシャフトと同様、最後期型であっても品質が安定しているとは言えないのかも知れませんね。

オリジナルの接眼枠は割れを接着剤で補修してありますので、オーナーさんのご希望でリプロ新品と交換しました。

 

ハーフミラーは見にくい腐食は無く再使用は可能でしたが、こちらもご希望で新品と交換します。

 

テストでレンズを取付けようとするとレンズが入らない。マウント裏のバネを止めるネジがゆるゆるの状態です。ここが緩むのは珍しいです。

 

問題のリターンミラーを点検しましたが・・これは再接着をされていますね。端にゴム系接着剤がはみ出していて、ミラーホルダー前縁の艶消し塗装が剥がれています。将来剥離の可能性もありますね。無限を確認すると若干ズレがありましたので調整をしておきます。

 

40万台のシリアル№はミステリーですが、この個体#4406XXは1970年3月製で露出メーターの製造は昭和45年2月13日です。少し前に作業をした#3510XXの製造は同じ1970年3月製で露出メーターの製造は昭和45年1月16日となっています。この事から両機は同じ時期に製造されたものとみて間違いはないと思います。なら、44万台と35万台のシリアル№は何を区別するためだったのでしょう?  で、メカの組立終了。後期型なのに露出計の感度低下が大きかったです。このような個体に入っている調整抵抗は、一般的な抵抗値より小さいものが入っていることが多いと思います。元々の感度に余裕がない素子だったのかも知れません。私の経験でもCdsの特性にはバラツキがあることを知っています。この個体は後期型の割には、通常は不具合とならない個所に問題が多く発生していましたね。あとは、調整作業をしてトップカバーを締めますのでこの状態で終了とします。

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カクカクカクのPEN-FT(B)の巻

2022年11月16日 16時37分48秒 | ブログ

広島のご常連さんからFT3台が来ていましたがブラック1台にして頂きました。この個体#2541XX(1968年11月製)はシャッターの調子は悪くはないと思いますが・・

 

巻き上げの感触が「カクカクカク」という感じで最悪です。

 

 

また、電池をセットしても露出計が動きません。25万台なら動くと思うけどなぁ・・

 

 

25万台で露出計が動かないのはこんな原因だよなぁ、と予想はしていましたが、それにしても大量の電池液漏れを起こしています。裏蓋まで染みているのは見たことが無いかも?

 

裏蓋を開けてみると・・内部にも影響がありますね。塗装面にも染みているので塗料が侵されていて洗浄で剥がれる可能性もあります。

 

圧板のメッキも侵されています。

 

 

電池室から基板に来ているリード線も腐食をして断線しています。電池液はリード線の芯線を登って来るのです。これは全てやり直さなければなりません。

 

このような酷い電池液漏れの場合は、ガスが露出計のCds、基板、メーターを侵していることがあって不動になることが多いです。簡易的に導通テストをしてみると・・特性感度は別にして取りあえず動きます。まぁ、一安心と。予想以上の電池液漏れによるダメージを受けた個体ですが、これから修復して行きます。通常のオーバーホールは他と一緒ですから割愛します。

電池室のターミナルに新しいリード線を半田付けして取り付けます。

 

 

この個体には絶縁座(パッキン)が入っていませんでした。露出計が動かないので電池室を分解してみたものの・・パッキンを入れずに戻したのでしょう。初期型の場合は材質が紙に近いため、電池の液漏れにさらさられると崩れて無くなってしまうことはありますが、25万台ですから材質は樹脂になっているはずですから紛失でしょう。パッキンを入れずに組むとショートをしてしまうので、ストックから取り付けます。

完成したシャッターユニットを取付け、ロア・スプロケットギヤで巻上げ側と連結します。

 

巻き上げは快調となりました。

 

 

25万台付近まではボトムキャップがダイカスト本体に接着されていますが、この接着が剥離している個体が意外にあります。今回はダイカストの洗浄中に外れましたので再接着をしておきます。以後は金属のキャップではなく、樹脂の〇型抜きに変更されますが、それに伴ってダイカストの型も変更されています。

25万台ではハーフミラーはこの程度が普通の劣化具合です。新品と交換します。

 

 

磨き出した圧板を裏蓋に戻します。

 

 

と、ここでまた問題。露出計の調整をしていると赤マークが出て来ません。メーターを分解してみると、セルの赤マークの接着が外れていました。もちろん再接着です。

 

メカの組立終了。

 

 

最近、自分のお受けする作業は性能維持のオーバーホールなのかレストアなのか分からない時があります。今回の個体のように、電池の液漏れで放置をされていた個体を再び現役に戻そうとすると、いろいろなところに不具合が出て来るものです。お返しした後でも例のリターンミラーの剥がれなど、問題が発生するかもしれません。あとは付属のレンズの清掃をしますけど割愛します。

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PEN-FTが続くのでの巻

2022年11月09日 12時50分00秒 | ブログ

どうしたんでしょうかね? 到着しているカメラを見るとPEN-FTがずっと続くのですね。同じ機種を続けられないですから、途中で他を入れたいとは思いますが、ドラマが無いかぎり同じ作業の繰り返しですので、少しUPの間を開けさせて頂くかもしれません。では、たぶんドラマは起きない後期型の#3437XX (1970年05月製)から始めます。

この個体は未分解機でした。

 

 

後期型としては光学系の状態が良くありませんね。ハーフミラーは交換予定ですが、リターンミラーも劣化が進んでいますね。

 

では、分解洗浄後にモルト貼りから進めて行きます。フィルムレールもきれいな良いダイカストボディーです。

 

アイドルギヤ軸の上下にはグリスを塗布して組みます。

 

 

シャッターを洗浄のうえ点検します。後期型ですのでチャージギヤはナットによる組立式となりました。(それまではカシメ)ギヤ軸は地板の孔に嵌っているだけで、ベアリング機構はありませんので、使用により地板の孔が拡大して来るのです。

PEN-Fでは持病のコントロールレバー折れですが、FTでも基本の作動原理は同一のため折れる個体は折れますね。突然、シャッタースピードが変わらなくなります。

 

シャッター幕の点検。クラックなどが無いか点検します。また、回転軸の抵抗もチェックします。画像が停止位置。6時の位置でアパーチァーギリギリに掛かっています。

 

やはりドラマは起きませんでしたね。メカの組立完成。

 

 

ストロボの発光テスト。

 

 

メカは摩耗も無く良い状態でしたが、光学系は保管があまり良くなかったようです。

 

この頃になると裏蓋の圧板は2点留めになります。

 

 

で、この画像は次の個体ですが、偶然にも#3414XXと⇧の個体と同じ1970年05月製です。同じラインを流れていた個体ですので同じ女工さんが組んだ個体でしょう。こちらはもっと保管が良くなかったようで圧板のバネと右のフィルム押えにカビが生えています。これ中々取れないのです。カビキラーなんか良いですかね?

ストロボ接点左が少しへこんでいるようです。修正します。

 

 

こちらも未分解機ですが、露出計の感度が大きく低下しています。湿気の多いところに保管されていた個体は電気部品が劣化します。同じラインを流れていた個体なのに保管によって状態が変わりますね。

 

34万台としてはハーフミラーの劣化が進んでいます。プリズムのコーティング面にカビがありますが、拭くとコーティングが剥がれる危険性があります。

 

スクリーンには表面から何かが接触して黒点になっています。これは清掃では取れませんでした。また、後期型のスクリーンはシンプルな矩形▢になりました。それ以前は上下に位置決めの角が2つあります。製造後期なので簡略化なのでしょう。

この個体はスローが不調で1秒で停止しました。スローガバナーのメンテナンスをして改善しました。部分にアンクルとガンギ車があります。

 

保管が悪いとビューファインダーのレンズにもカビが生えます。

 

 

前所有者は乱暴にカメラを置く癖があったと見えて、裏蓋の塗装部分とアイビースに傷が多くあります。軽く研磨をして修正をしておきます。

 

メカの組立完成。

 

 

前回の個体も同じボディーキャップが付いていましたよ。3Dプリンター製のように見えますが、販売されているのでしょうか?

 

付属のレンズは25mmと40mm X2個が来ていました。どの個体もヘリコイドグリスが流化して絞りに付着していますので分解清掃をします。

 

40mmの後玉はどれも画像のように黄ばんでいますが、変色したのでしょうかね? カラーバランスは崩れると思いますが・・

 

これでカメラ本体とレンズが完成しました。まだFTが続きます・・

 

 

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困ったローライ35ブラックの巻

2022年11月05日 21時00分00秒 | ブログ

中古カメラ店様仕入のローライ35Sですが一見よさげですがいけません。まず問題はレンズのヘリコイドが固着していてビクとも動きません。

 

シャッターユニットを分離しました。ヘリコイドのリングががっちりと噛み込んで動きません。ネジは固着すると強大な力を出して大きな力を掛けても緩まないのです。では奥の手工具で・・

 

とりあえず本体側のメンテナンスをして行きます。スプール軸やアイドラギヤを洗浄グリス塗布します。

 

ファインダーは過去に分解清掃されていますがそれでも汚れ放題です。

 

 

接眼レンズを分離して清掃して戻します。

 

 

その他、シャッターの低速不調ですのでガバナーを洗浄メンテナンスしました。ここで、内部からプラのかけらが出て来ました。ローライ35の場合嫌な予感です。予感は的中。のチャージギヤのカムが欠けています。最悪だね。。この部品は皆さん壊してくるのでストックがありませんが、そうもいかないので虎の子の1個と交換します。

画像の取り忘れ。沈胴チューブの動きにガタが多くスムーズでないため分離してフェルトの調整をして組み上げたところ。

 

 

裏蓋の巻き戻しダイヤルの回転が渋いので分解清掃をします。

 

 

シャッターは分解されています。その後でヘリコイドが固着したものか? スリ割りがかなり力を掛けられて痛んでいます。ここは緩み止めが塗布されているので、そのまま緩めようとするとこうなります。定盤の上で頭の形状を修正しておきます。

とりあえずすべて分解をしてからヘリコイドの切り離し作業をします。

 

 

左側のヘリコイドアウターが回っていますね。原因はネジ面の腐食による固着だと思います。何度もグリスを入れ替えてラップ修正をしておきます。

 

あとは通常とおり組み立てて行きます。

 

 

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