昭和の恋物語り

小説をメインに、時折よもやま話と旅行報告をしていきます。

長編恋愛小説 ~水たまりの中の青空・第二部~ (六十四) 五

2013-08-05 19:27:16 | 時事問題
(五)

「ここでけの話ですがの、婿さん。
会社というもんは、儲かるもんですかいの?」

「バカタレが。
会社じゃから儲かるんじゃねえ! 
婿さんじゃから儲けなさるんじゃ。」

「はは。まぁ、そういうことでしようか。」

「ふん、まともなやり方はしとらんわ。
そのうちに、手が後ろに……」

茂作の声を遮って
「お爺ちゃん!」
と、小夜子が茂作を叱った。

茂作の了見とは裏腹に、武蔵の評判はすこぶる良い。
それも当たり前のことで、大枚の寄付を村にしている。
しかもこの披露宴には、村民全員が招待されている。

足を運べぬ病人にたいしては、自宅に料理を運ばせた。
子供たちに対しても、チューインガムやらチョコレートやら、ついぞ見たことのない菓子類が配られた。

子供たちの目は爛々と輝き、あるものは口いっぱいに頬張り、
あるものはペロリペロリと舐め、あるものはしみじみと見つめている。

「また届けるから、大丈夫!」
武蔵の声に、大歓声が上がった。


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