昭和の恋物語り

小説をメインに、時折よもやま話と旅行報告をしていきます。

長編恋愛小説 ~水たまりの中の青空・第二部~ (六十一)の五

2013-05-13 20:57:06 | 時事問題
(五)

「子、子爵さまぁ? そ、そんなお方のご令嬢が……」

「けはは…。引っかかりましたな、正坊も。
もうこっちゃの殿御は、みんな引っかかりはるわ。けはは……」

大きく口を開けて、屈託なく笑うひとみ。
呆気にとられる正三、といってまるで腹が立たない。

むしろ特有のアクセントとも相まって、正三も笑ってしまった。

「坊ちゃん、ご機嫌のようで。」

「何ですか、このやせっぽちは。」

「坊ちゃんは、色気たっぷりの女が好みだろうに。」

「いいんだ、いいんだ。
たまには、茶漬けもいいさ。」

「茶漬けって、正坊! 
そんな言われ方したの、初めてやわ! 
やっぱり、いけ好かんたこやわ!」

ぷーっと頬を膨らませて、正三を抓りにかかった。

「おっと、そうそうやられてたまるか。」
と、ひとみを抱き寄せた。


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