昭和の恋物語り

小説をメインに、時折よもやま話と旅行報告をしていきます。

長編恋愛小説 ~水たまりの中の青空・第二部~ (六十一)の二

2013-05-10 21:48:38 | 時事問題
(二)

「千景さん、あちらのテーブルに回ってください。」
と、マネージャーが肩を叩く。

そして
「お客さま、中原ひとみさんです。」
と新たに、目をくるくる回す女給を連れてきた。

「なんだって? 中原、ひとみだって? 
僕はね、嵯峨美智子さんが好きなんですがね。

こんなやせっぽちは嫌いだね。」
と、正三は不機嫌に口を尖らせる。

「いけ好かんたこ!」
と、女給が正三の頬を抓った。

「痛いじゃないか! 女給の分際で何だ、お前は。」
と、正三が真顔で怒った。

しかし素知らぬ顔で、正三の顔をひょっとこ顔にしてしまう女給、中原ひとみ。

「ここで、そんな難しい顔はあかんて!楽しまな、損ですよ。ね、
正坊。」と、正三の口に吸い付いた。

“ちゅっ、ちゅっ、”と、二度三度と繰り返す。


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