昭和の恋物語り

小説をメインに、時折よもやま話と旅行報告をしていきます。

長編恋愛小説 ~水たまりの中の青空・第二部~ (六十四) 六

2013-08-06 19:21:24 | 時事問題

(六)

「婿さんよ、ちょっと。」
ひとつの座から声がかかった。

「なんでしょう?」
茂作の口撃に辟易し始めていた武蔵、すぐに席を立った。

「婿さん、あちらではおモテになるでしょうな。」
「どんな具合ですかの?」

「都会の女子らは嫁さんになっても、やっぱりあれですかの?」
「小夜子より別嬪さんは、おらんですかの?」

「都会の女は、いかんです。
男をすぐに、値踏みします。

金持ちには媚を売って、貧乏人は鼻にも引っ掛けません。
けしからんもんです、まったく。

わたしもね、今は儲けていますから良いんですが。
不景気風の吹いている折は、散々でした。

見向きもしません。
しかし小夜子は違いました。」


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