(六)
「婿さんよ、ちょっと。」
ひとつの座から声がかかった。
「なんでしょう?」
茂作の口撃に辟易し始めていた武蔵、すぐに席を立った。
「婿さん、あちらではおモテになるでしょうな。」
「どんな具合ですかの?」
「都会の女子らは嫁さんになっても、やっぱりあれですかの?」
「小夜子より別嬪さんは、おらんですかの?」
「都会の女は、いかんです。
男をすぐに、値踏みします。
金持ちには媚を売って、貧乏人は鼻にも引っ掛けません。
けしからんもんです、まったく。
わたしもね、今は儲けていますから良いんですが。
不景気風の吹いている折は、散々でした。
見向きもしません。
しかし小夜子は違いました。」
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