昭和の恋物語り

小説をメインに、時折よもやま話と旅行報告をしていきます。

[お取り扱い注意!] (六)

2013-07-27 18:40:30 | 時事問題
(六)

顔を赤らめながら、小声で言う。
その恥じらいは、まさに乙女のそれだった。

こちらもつられて、どぎまぎしてくる。
相手は人形だというのに、正視できなくなった。

目をそむけたままで、洋服の入った袋を手渡した。

「ご主人様、着せてください。」

 なんてことを! 赤児ならばいざ知らず、立派な大人の女性に服を着せるなど。
できない! と手を振ると、悲しげな声で懇願してくる。

「お願いです、ご主人さま。
自分では着られないのです。
それとも裸姿をご希望ですか。」

「ば、馬鹿な。人が来たら、どうするんだ。」

やむを得ず、ぎこちない所作で服を着せにかかった。
肩に手を置かせてパンツをはかせ、バンザイをさせてシャツを着せて…。

懐かしい思いがこみ上げてきた。
幼い息子や娘に、こうやって着替えさせたものだ…。
不覚にも涙してしまった。


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