(四)
この言葉は、一同に大きな衝撃を与えた。
軍隊の中において厠番になるということが、どれほどの屈辱感を与えられるか、皆が皆、身に沁みていたからである。
しかし当の武蔵は、しれっとした顔付きで答えた。
「あれは、いい経験でした。
現在の私を、あの経験が作り上げてくれましたよ。
厠というところはですね、人間の本性が現れるところです。
本音が出るところです。」
「なるほど、なるほどの。」
「ほぉ、ほぉ。そういうもんですか。」
「わしらみたいな凡人には、到底分からんことがあるんですの。」
「ふん。地べたに這いつくばって、米搗きバッタみたいにぺこぺこじゃろうが。」
なおも茂作の侮蔑は続く。
「いい加減にして! おめでたい席で話すことじゃないでしよ!」
とうとう小夜子が茂作翁に噛み付いた。
「ははは、茂作さぁよ。
ちぃと飲み過ぎたかい?
あんたは小夜子を嫁に出すのが嫌なんじやろうて。
それこそ正三坊ちゃんが相手でも、気に入らんようじゃから。」
この言葉は、一同に大きな衝撃を与えた。
軍隊の中において厠番になるということが、どれほどの屈辱感を与えられるか、皆が皆、身に沁みていたからである。
しかし当の武蔵は、しれっとした顔付きで答えた。
「あれは、いい経験でした。
現在の私を、あの経験が作り上げてくれましたよ。
厠というところはですね、人間の本性が現れるところです。
本音が出るところです。」
「なるほど、なるほどの。」
「ほぉ、ほぉ。そういうもんですか。」
「わしらみたいな凡人には、到底分からんことがあるんですの。」
「ふん。地べたに這いつくばって、米搗きバッタみたいにぺこぺこじゃろうが。」
なおも茂作の侮蔑は続く。
「いい加減にして! おめでたい席で話すことじゃないでしよ!」
とうとう小夜子が茂作翁に噛み付いた。
「ははは、茂作さぁよ。
ちぃと飲み過ぎたかい?
あんたは小夜子を嫁に出すのが嫌なんじやろうて。
それこそ正三坊ちゃんが相手でも、気に入らんようじゃから。」
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