8日(土).昨日午後5時18分の三陸沖地震には驚きました.8階の事務所にいて,そろそろ10階ホールで開かれているK新聞社主催の「よさこい祭」に顔を出そうか,と思っていた矢先です.最初は縦に揺れ,次に横にかなり長く揺れました すわ3.11の二の舞かと思ったのですが,しばらくして収まりました.テレビ報道によると震源地は三陸沖,マグニチュード7.3で東京都内の震度は4とのことです
すべてのエレベーターがP波管制で止まったため,階段で1階まで下りて防災センターに詰めました.モニター画面には10階ホール内のパーティーの様子が映し出されています
隊員が「この建物は安全である.外に出ると危険だ.落ち着いて行動を」とアナウンスしました.ビルメンテナンスの要員が全館を巡回し建物に異常がないかどうか点検しましたが,幸い異常なしとのことで,エレベーターは間もなく復旧し正常運転に戻りました
わが社の社員有志は10階の「よさこいパーティー」に参加し,7時半から地下1階焼鳥Oで開かれるW薬局主催の忘年会に出席することになっているのですが,私はコンサートに行くためギリギリの6時少し過ぎには会社を出ました
閑話休題
昨夕,すみだトりフォニーホールで新日本フィルの第502回定期演奏会を聴きました プログラムは①ショスタコーヴィチ「ヴァイオリン協奏曲第1番」,②同「交響曲第10番」の2曲で,①のヴァイオリン独奏はコンサートマスターの崔さん,指揮はダニエル・ハーディングです
ハーディングは昨年の3.11のときも日本に滞在中で大地震を経験しているので,今回が2度目になるはずです.さぞ怖い思いをしたことでしょう
実は私はトりフォニーシリーズの第2夜の会員で,本来8日の公演を聴くはずなのですが,東京フィル文京シビックシリーズと重なってしまったため,あらかじめ新日本フィルの事務局に電話して振り替えておいたのです この日の自席は1階22列13番の通路側で,定期会員席より前の良い席です
指揮者ダニエル・ハーディングとともにコンマスの崔さんがソリストとして登場します 崔さんはモスクワ音楽院を首席で卒業し,小澤征爾に認められ新日本フィルのコンマスに就任しました.崔さんの代わりに西江辰郎さんがコンマスを務めます
ショスタコーヴィチのヴァイオリン協奏曲第1番は1947年夏から48年春にかけて作曲されましたが,ちょうどこの時期,スターリンの下で文化政策を統括した党中央委員会書記ジダーノフは,厳しいイデオロギー統制を敷き,社会主義リアリズムを推進させました 4つの楽章から成りますが,第1楽章冒頭から暗く重い曲想が続きます.第3楽章は「パッサカリア」のフィナーレ部分では長いカデンツァがありますが,崔さんは心を込めてじっくりと聴かせてくれました.演奏を聴く限りショスタコーヴィチは圧政下の中でもあくまでも自分の意思を追求した信念の人だと思います
会場一杯の拍手に崔さんはパガニーニ「うつろな心の主題による序奏と変奏曲」という超絶技巧曲を,完ぺきなテクニックで弾き切りました
後半は,ソリストを務めた崔さんがコンマスを務めます.一粒で二度オイシイ試みです 交響曲第10番ホ短調は,1953年にスターリンの死の直後に着手されました.ホ短調ということもあるせいか,暗い曲想が続きます.第1楽章にはクラリネットの独奏が出てきますが,重松希巳江さんの演奏はこの日も冴えわたっていました
次いで第2楽章「アレグロ」は一転,圧力から解放されたようなお祭り騒ぎのような感じの曲想です.全曲を通して感じるのは,管楽器群はもちろんのこと,弦楽器群の音の厚みです
太く厚い音がマスとして会場に押し寄せてくる感じです.圧倒的な力強さはハーディングの力によるところが大きいのだと思います.今回もハーディングは,地震の恐怖を乗り越えて新日本フィルの潜在力を十分に引き出すことに成功しました