26日(木)。昨日の日経夕刊「グローバル ウォッチ」は「伝統の音楽祭、革新に挑む」という見出しのもとドイツの「バイロイト音楽祭」について書いていました 同社・赤川省吾欧州総局長のリポートを超略すると次の通りです
「夏にドイツ南部で開かれる『バイロイト音楽祭』が揺れている いつも完売御礼で入手困難だったチケットの売れ行きが鈍った 今年の音楽祭では観客が映画館でもないのに妙なゴーグルを着用した。拡張現実(AR)でバーチャル体験ができる装置だ。重厚なワーグナーの音楽に耳を澄まし、舞台上の歌手を目で追いつつ、デジタル技術による仮想世界に浸るーそんな効果を狙った 『パルジファル』では宇宙を飛びながら観劇しているような錯覚に陥る。作曲家リヒャルト・ワーグナーの ひ孫 で音楽祭の総監督であるカタリーナ・ワーグナー氏は、『舞台にとって、デジタルがどんな意味を持つのか考えた』とし、『現実世界とバーチャル映像の双方を体感できる仕組みに辿り着いた』という 同音楽祭では2021年、ウクライナ出身のオクサーナ・リーニフ氏が女性指揮者として初めて登板するなど、多様性でも時代に取り残されないようにしている ところが、23年シーズンで3%の空席が出た 航空券や宿泊費の高騰、チケット代値上げなどが響き、ファンの出足が鈍った 常連客が高齢化し、ドイツまで行かなくなった。ストーリーが難解なワーグナー作品は若者にはハードルが高すぎる・・・異変を巡って様々な解説が乱れ飛ぶ だからこその改革なのだが、もろ刃の剣でもある。オールドファンは奇抜で斬新な演出に眉をひそめ『かつてより質が下がった』と不満をもらす コストのかかる新技術を多用することに批判もある ワーグナー総監督は『我々には偉大な伝統があるが、世界は変わった。時代に適応しなければならない』と語る。伝統を大切にしつつ、リベラル思想を浸透させようと試みるのはドイツ政治の挑戦に重なる 150周年となる26年は、上演機会の少ない初期の大作オペラ『リエンツィ』を演目に含め盛大に祝う。観客を世界中から呼ぶため、チケット販売もグローバル展開を意識する。そのとき世界はバイロイトをどうみるか。伝統の音楽祭はドイツとともに岐路に立つ」
まさか「バイロイト音楽祭」がゴーグル着用で観劇することになるとは思いもしませんでした ドイツには世界のトップクラスのオペラ劇場が多数存在するので、他劇場との差別化や優位性の確保などが至上命題なのかもしれません しかし、一人で立ったまま20分や30分は平気で歌い続けるワーグナーのオペラや楽劇をバーチャルで見せることに、どれほどの意味や効果があるのか疑問に思います それでもワーグナー総監督のオペラ改革の挑戦は続いていくのでしょう
ということで、わが家に来てから今日で3208日目を迎え、ロシア語の独立系メディア「メドゥーザ」は24日、ロシア大統領府が最近、親プーチン政権系や国営のメディアに対し、ウクライナ侵攻から帰還した兵士の犯罪を報道しないよう指示を出したと伝えた というニュースを見て感想を述べるモコタロです
情報操作はプーチン政権の得意技だが ロシア兵の犯罪はいずれ白日の下に晒される
いつもの朝食ですが、いつもとちょっと違っていました これが本当の目玉焼き、かな
昨日、夕食に「秋鮭のネギ塩オイル焼き」「豚汁」を作り、イワシの刺身と一緒に食べました 和食はいいですね
昨日、東京芸術劇場コンサートホールで「第44回芸劇ブランチコンサート 初登場! 郷古廉」公演を聴きました プログラムは①ブロッホ「バール・シェム」、②サン=サーンス「動物の謝肉祭」より「白鳥」、③メンデルスゾーン「無言歌作品 109」、④同「ピアノ三重奏曲 第1番」です 演奏はヴァイオリン=郷古廉、チェロ=向山佳絵子、ピアノ=清水和音です
1曲目はブロッホ「バール・シェム」です この曲はスイス生まれのユダヤ人作曲家エルネスト・ブロッホ(1880-1959)が1923年に作曲した「ハシディズム教徒の生活の3つの情景」を描いたヴァイオリンとピアノのための作品です 題名は、18世紀にユダヤ教の革新運動ハシディズムを興した神秘主義者で、バール・シェム・トーヴ(善き名の師)と呼ばれたイスラエル・ベン・エリエゼルを指しています 作品は第1曲「ヴィドゥイ(懺悔)」、第2曲「ニーグン(即興)」、第3曲「シムハス・トラー(歓喜)」の3曲から成ります
ヴァイオリン独奏の郷古廉(ごうこ すなお)は1993年宮城県生まれ。2013年ティボール・ヴァルガ シオン国際ヴァイオリン・コンクール優勝並びに聴衆賞・現代曲賞を受賞 2023年4月からNHK交響楽団ゲスト・コンサートマスターを務める
全体的には郷古の研ぎ澄まされた演奏によるビブラートがとても美しく、とくに高音部がキラキラ輝いていました 「ニーグン」と言えば9月20日の「芸劇リサイタル・サロン」でチェリストの新倉瞳がアンコールで歌って演奏したのも「ニーグン」でしたが、全く違う曲のようです
2曲目はサン=サーンス「白鳥」です この曲はカミーユ・サン=サーンス(1835-1921)が1886年に作曲した「動物の謝肉祭」の第13曲の作品です
チェロ独奏の向山佳絵子は東京生まれ。東京藝大、リューベック国立音大で研鑽を積む 第10回ガスパール・カサド国際チェロコンクール第1位をはじめ受賞歴多数 元N響首席チェロ奏者。京都市立芸術大学准教授を務める
この曲はチェロ独奏曲の代名詞的な作品ですが、向山は包容力のある豊かな演奏で聴衆を魅了しました
3曲目はメンデルスゾーン「無言歌 作品 109」です この曲はフェリックス・メンデルスゾーン(1809-1847)が1845年に、世界初の女性チェリストと呼ばれたクリスティアーニのために作曲したチェロとピアノのための作品です
向山は序盤はどこまでも優しく、中間部では激しく、そして終結部は再び優しく演奏しました とても良い曲だと思います
最後の曲はメンデルスゾーン「ピアノ三重奏曲 第1番 ニ短調 作品49」です この曲は1839年(30歳)に作曲、同年ライプツィヒで初演されました 第1楽章「モルト・アレグロ・エド・アジタート」、第2楽章「アンダンテ・コン・モート・トランクィロ」、第3楽章「スケルツォ:レッジェーロ・エ・ヴィヴァーチェ」、第4楽章「フィナーレ:アレグロ・アッサイ・アパッショナート」の4楽章から成ります
3人の演奏で第1楽章に入ります 冒頭の哀愁を帯びた向山のチェロが素晴らしい 次いで郷古の美しいヴァイオリンが入ってきます 3人による流麗な演奏が続きますが、若干、郷古のヴァイオリンが控えめのように感じます もっと前面に出ても良いのではないかと思いました 大先輩2人を前にして遠慮しているのかな、と思ったりしました 第2楽章はノーブルで、ロマンティシズムの極致をいく演奏でした 第3楽章はメンデルスゾーンの「夏の夜の夢」の妖精が森の中を飛び交っている様子が目に浮かぶようなスケルツォでした 第4楽章はリズミカルな演奏が印象的な音楽で、3人は絶妙のアンサンブルでアグレッシブに演奏を展開しました
この日一番印象に残ったのは、郷古廉のヴァイオリンの美しい音色と技巧的な演奏です ダテにN響のゲスト・コンマスを務めていません
葵トリオの演奏で今月第一生命ホールで聴いたばかりでしたけど、何度聴いても良い曲でしたね。
ホールのキャパシティもあり、第一生命ホールの方がクリアーに聴こえた気もしましたが、初めてトリオを組んだ演奏なのに息もピッタリで、
向山さんが練習嫌いとは思えなかったです。
2階からでは郷古君の顔がよく見えないのが残念でした。
ホールの大小によって聴こえ方が違うと思います。
たしかに第一生命ホールの葵トリオの演奏の方がクリアに聴こえました。
向山さんは練習は嫌いだけど、練習ちゃんとやってます、とさかんに弁護してましたね。
それにしても郷古君の演奏は素晴らしいと思います