先週の月曜日の新聞に移民のための通訳サービスに関するニュースがありました。アイスランドでは病院などの公共の医療機関では、診療を受けにくるのが外国人の場合(正確にはアイスランド語では適切な診療を受けられないと見なされる受診者の場合は)その人の母国語の通訳を手配することが法律で義務付けられています。
義務付けられているのは医療機関であって、移民の側ではありません。ちなみにこのような通訳を使うことの義務付けは医療に限られており、その他の分野では通訳を希望する場合は、移民の側の費用負担になります。
月曜日のニュースの内容は、このような義務付けにも関わらず、医療機関が通訳を使わずに受診者の身内や子供を通訳として使っている事実が指摘されている、というものでした。移民の場合は親よりも子供の方がアイスランドの能力がずっと発達していることが珍しくないのです。
子供が通訳をすれば、当然費用はかかりません。その反面、子供が親の病気の診断の真っ只中に巻き込まれてしまうことになります。インフルエンザとか通風くらいの病気ならまだしも、癌のような深刻な病気の場合には決して望ましいことではありません。
2000年代になってからの移民政策では「子供を通訳代わりにしない」ということは大分強く言われてきたと思います。にもかかわらず、経済恐慌以来の財政難で通訳代が確保できない、というのが医療機関の現状であるようです。
実際、通訳者を手配するのかなり高くつくのです。通訳サービスのオフィスはいくつかあるのですが、それぞれのオフィスが通訳者を登録していて、病院やその他の機関や会社が求めてくる言葉の通訳を送り出すわけです。ちょっと人材派遣会社に似ています。
ほとんどの通訳者はプロではなく、何か他の仕事を持っています。そういう人がわざわざ出かけていくのですから、きちんとした稼ぎにならなければ通訳のなり手はなくなってしまうでしょう。というわけで一回の呼び出しは一律最低でも二時間枠として勘定され、一万クローナ程度の収入になります。
ところがオフィスはオフィスで手配料を取りますので、総計で一回の呼び出しが一万五千クローナ以上になってしまいます。原則としてオフィスは自分配下の通訳者が病院等から直に仕事を請け負うことを禁止しています。
こう書くと何か通訳オフィスが中間搾取集団のように思われてしまうでしょうからちょっと弁護しますが、通訳の手配はかなりの大仕事です。以前仕事でそのようなオフィスに近いところにいたことがあるのですが、電話はひっきりなしにかかってきますし、病人の人のための通訳のように突然、いつどこどこへ来てくれ、という要望にかなう人を捜すのはそう容易くないことも多いです。
また、通訳者は他人のプライバシーを見聞きするわけですから、それに関する秘密厳守についての講習会や、あるいは他人の危機的な状況に立ち会ったりする通訳のための心理カウンセリングなども用意しなければなりません。
私自身、何度も日本語の「通訳」をしたことがあるのですが、通訳者というのはただの「翻訳ツール」ではなく、かなり病人、けが人、その他困った状況にある人たちの「悩みの聞き手」に自然になってしまうものなのです。
私の場合はもともと牧師なので、そういうことには慣れていますし一応の教育も受けていますが、そういうことに不慣れな人の場合はそれなりの講習を受けていかなくてはならないわけです。で、それは通訳オフィスの仕事になります。
通訳に関してのアイスランドの悩みは、小さな社会の故に全ての言語について通訳がこなせる人がいるわけではない、ということです。先ほども書きましたが、ほぼ全部の通訳者はプロではなくアマチュアです。
さらに、これも小さな社会の故の悩みなのですが、例えばタイ語しか分からない人が困っていて相談に来た際に、通訳を手配したらその通訳が相談に来る人の知己であって「その人が通訳になるのはイヤ」というようなことが時々起ることです。
まあ、その気持ちは分かりますよね。自分の秘密のようなものが知り合いに筒抜けになってしまうというのは穏やかではないでしょう。「秘密」と分かると守秘義務どころか、やたらにしゃべりまくりたがる人っていますからね。
それにしても、冒頭のニュースのように病院が患者の未成年の子供を通訳に使うというのは、あまりにも安易な処置だと言わざるを得ないでしょう。良い解決を見つけてほしいものです。
応援します、若い力。Meet Iceland
藤間/Tomaへのコンタクトは:nishimachihitori @gmail.com
Home Page: www.toma.is
義務付けられているのは医療機関であって、移民の側ではありません。ちなみにこのような通訳を使うことの義務付けは医療に限られており、その他の分野では通訳を希望する場合は、移民の側の費用負担になります。
月曜日のニュースの内容は、このような義務付けにも関わらず、医療機関が通訳を使わずに受診者の身内や子供を通訳として使っている事実が指摘されている、というものでした。移民の場合は親よりも子供の方がアイスランドの能力がずっと発達していることが珍しくないのです。
子供が通訳をすれば、当然費用はかかりません。その反面、子供が親の病気の診断の真っ只中に巻き込まれてしまうことになります。インフルエンザとか通風くらいの病気ならまだしも、癌のような深刻な病気の場合には決して望ましいことではありません。
2000年代になってからの移民政策では「子供を通訳代わりにしない」ということは大分強く言われてきたと思います。にもかかわらず、経済恐慌以来の財政難で通訳代が確保できない、というのが医療機関の現状であるようです。
実際、通訳者を手配するのかなり高くつくのです。通訳サービスのオフィスはいくつかあるのですが、それぞれのオフィスが通訳者を登録していて、病院やその他の機関や会社が求めてくる言葉の通訳を送り出すわけです。ちょっと人材派遣会社に似ています。
ほとんどの通訳者はプロではなく、何か他の仕事を持っています。そういう人がわざわざ出かけていくのですから、きちんとした稼ぎにならなければ通訳のなり手はなくなってしまうでしょう。というわけで一回の呼び出しは一律最低でも二時間枠として勘定され、一万クローナ程度の収入になります。
ところがオフィスはオフィスで手配料を取りますので、総計で一回の呼び出しが一万五千クローナ以上になってしまいます。原則としてオフィスは自分配下の通訳者が病院等から直に仕事を請け負うことを禁止しています。
こう書くと何か通訳オフィスが中間搾取集団のように思われてしまうでしょうからちょっと弁護しますが、通訳の手配はかなりの大仕事です。以前仕事でそのようなオフィスに近いところにいたことがあるのですが、電話はひっきりなしにかかってきますし、病人の人のための通訳のように突然、いつどこどこへ来てくれ、という要望にかなう人を捜すのはそう容易くないことも多いです。
また、通訳者は他人のプライバシーを見聞きするわけですから、それに関する秘密厳守についての講習会や、あるいは他人の危機的な状況に立ち会ったりする通訳のための心理カウンセリングなども用意しなければなりません。
私自身、何度も日本語の「通訳」をしたことがあるのですが、通訳者というのはただの「翻訳ツール」ではなく、かなり病人、けが人、その他困った状況にある人たちの「悩みの聞き手」に自然になってしまうものなのです。
私の場合はもともと牧師なので、そういうことには慣れていますし一応の教育も受けていますが、そういうことに不慣れな人の場合はそれなりの講習を受けていかなくてはならないわけです。で、それは通訳オフィスの仕事になります。
通訳に関してのアイスランドの悩みは、小さな社会の故に全ての言語について通訳がこなせる人がいるわけではない、ということです。先ほども書きましたが、ほぼ全部の通訳者はプロではなくアマチュアです。
さらに、これも小さな社会の故の悩みなのですが、例えばタイ語しか分からない人が困っていて相談に来た際に、通訳を手配したらその通訳が相談に来る人の知己であって「その人が通訳になるのはイヤ」というようなことが時々起ることです。
まあ、その気持ちは分かりますよね。自分の秘密のようなものが知り合いに筒抜けになってしまうというのは穏やかではないでしょう。「秘密」と分かると守秘義務どころか、やたらにしゃべりまくりたがる人っていますからね。
それにしても、冒頭のニュースのように病院が患者の未成年の子供を通訳に使うというのは、あまりにも安易な処置だと言わざるを得ないでしょう。良い解決を見つけてほしいものです。
応援します、若い力。Meet Iceland
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