レイキャビク西街ひとり日誌 (Blog from Iceland)

北の小さな島国アイスランドはレイキャビクの西街からの、男独りブログです。

ささやかな数え間違いと大きな影響

2021-10-03 00:00:00 | 日記
こんにちは/こんばんは。

早い。早過ぎる。もう一年の最終四半期だなんて。こちらではここ二週間くらいは荒れ模様の天気が続いていました。先々週にはこの冬一発目のオレンジ警報(五段階で上から二番目の警報)がレイキャビクを含む、全国の四分の三くらいの地域に発令。

西部、北西部では雪もかなり降り、まだ放牧中の羊が十数匹死んでしまうというニュースも入ってきました。農場の人たちはもちろん羊を助けに出ていくのですが、「羊は毛に水を吸ってしまい、とても重くなり、ひとりの力では動かせなくなる」とかで、とにかく大変だったようです。

ここ数年、十一月くらいまで衣替えしないできたのですが、今年は九月下旬であの寒さ。ちょっと先が思いやられます。




清涼感アップ用のピック
Myndin er eftir Vincent_Guth@Unsplash.com


さて、選挙の結果です。一週間たった今でも「一応の結果」です。その点は後で説明しますね。

まずは、各党の獲得議席数と支持率です。
独立党(現与党) 16議席(+-0) 24,4%
進歩党(という名前の保守党 現与党) 13議席(+5) 17,3%
緑の党(現与党) 8議席(-3) 12,6%
社会民主連合 6議席 (-1) 9,9%
人々の党(という名前の右派ポプリスト党) 6議席(+2) 8,8%
ピラター(海賊党) 6議席(+-0) 8,6%
ヴィスレイセン(再生党) 5議席(+1) 8,3%
中道党(という名前の腐敗党) 3議席(-4) 5,4%

社会主義党 0議席 (4,1%) (*得票率が5%に満たないと議席は得られません)

というわけで、単純に足し算をすると現政権が過半数以上の37議席を確保したことになります。アイスランド大学の政治学の教授が、「与党が次回の選挙で支持を伸ばすのは極めて異例のこと」とか言っていたように思います。テレビのインタビューだったので、確認しようと思ったのですが見つけられませんでした。悪しからず。m(_ _)m






選挙結果です
Myndirnar eru ur Visir.is


今回は、ずいぶんと事前リサーチの結果からズレたものが出てきた感があります。一番意外だったのは、直前リサーチでも7%の支持を得ていて、4議席くらいを得るはずだった社会主義党が、実際には5%に届かず議席を得ることができなかったことです。

さらに、12,7%の支持で緑の党を超えていた社会民主連合が、実際には9,9%で議席減。逆に13,2%の支持だった進歩党は、実際には17,3%まで支持を伸ばし5議席増。今回の選挙の勝者となりました。

惜しかったのは中道党(という名前の腐敗党)で、事前の支持率6,2%の下を行く5,4%の結果。あと0,5%低かったら、国会から消えてくれていたはずなのに、惜しかった...

結果が出た当初は、私は独立党、もしくは進歩党が首相の座を要求するのではないか?と考え、そうなると現首相を出している緑の党は連立から抜ける。となると、連立工作は非常に難しい状況になるのでは?と考えました。

ですが、一週間経った昨日、土曜日の午前中に、カトリーン現首相がグビューズニ大統領を訪れ、現連立政権を維持する旨を伝えた、と報じられました。ワタシ的にはちょっと意外。

ところで、始めに選挙結果はまだ「一応の結果」と書きました。そのわけを説明します。実は六つある選挙区のうち、北西選挙区で得票の数え間違いがありました。数的には「小さな違い」だったのですが、議席配分には大きな影響が出ました。

一時期「アイスランド国会 女性議員が過半数 歴史上初!」みたいなニュースが流れました。その時点では、男性議員30人に対して女性議員が33人。これは、アイスランド国外でも取り扱われたようです。

ところが、この数え間違いのせいで、五人の「当選議員」が、別の五人に入れ替わってしまい、その結果男性議員が過半数をキープしてしまったのです。




首相続投で満足気なカトリーンさん
Myndin er ur Viisr.is


このゴタゴタの基盤には、こちらでの選挙制度の中で重要な働きをしているJofnunarthingssaetiヤブヌンナーシンクスサイティというものがあります。意味は「バランス調整議席」みたいなものでしょうか?

アイスランド国会、アルシンキの63議席のうち、9議席がこの「バランス調整議席」として割り振られています。

これ、超複雑な仕組みで、どのように機能するのか、私もはっきりとは把握していません。かなり突っ込んで勉強しないとそのメカニズムはきちんと理解できないだろうと思います。

ですがその目的とするところは、全国を通じての「一票の格差」を是正するところにあります。日本でもよく指摘されることですが、例えば小選挙区制度で、東京のある候補者が五十万票を得ても次点で落選するとします。

一方で地方の選挙区で十五万票獲得の議員が当選。そうすると、五十万票で落選する人と十五万票で当選する人があるわけですよね。そうすると「じゃあ、その差の三十五万票は価値がないのか?」みたいになり、歴然として「一票の価値のズレ」が生じてしまうことになります。

そういうことを是正する目的でこの「バランス調整議席」は設けられています。要するに全得票数に見合う議席の配分になるように、当選議席の配分を調整していくわけです。

今回、勘定間違いの発覚によって入れ替わった五人の人たちは、皆、この「バランス調整議席」によって議席を得ていた人たちでした。専門家の話しでは、どうやら「絶対数としては小さな得票数の差でも、『バランス調整議席』に大きな影響を与え得る」ということらしいです。

すみません、完璧に仕組みを理解できていないので伝聞形式になります。




「勘定間違い」で追い出された五人(下)と御当選の五人(上)
Myndin er ur Ruv.is


ですが、それだけではないのです。この勘定間違えの原因を調べていく中で、北西選挙区での投票用紙の管理方法に「手抜き」があったことが明らかになってきたのです。

日本でも同じようなプロセスだと思うのですが、投票用紙はきちんと箱に保管され、箱には鍵がかけられ封印用紙が貼られます。さらに保管場所には鍵がかけられ、また入場も制限されるはずです。

それが北西選挙区の開票が行われた、ボルガネスという町のホテルなのですが、開票場のホールには鍵がかけられていたものの、投票用紙保管箱には封印がされていなかったことが明るみに出たのです。

これは、そのことによって、投票用紙が不正に追加されたり、盗まれたりした、ということではありません。問題は、きちんとしたプロセスが守られておらず、そのこと自体が選挙管理法に違反することになることなのです。

一部には北西選挙区での再投票を求める声もあります。ですが、これは私の私見ですが、一選挙区だけでの再投票は不公平ですよ。だって、もう大勢が明らかになっているのですから、その大勢を前提にして再投票する人も出てくるでしょう。

例えば、みんなが社会主義党を助けようとして投票すれば、おそらく社会主義党は5%の得票率に達して議席を得ることになります。だから、再投票するなら全国で、という必要はあるでしょう。

どういう顛末になるでしょうかね?多分、このままでいくのではないか?という気がしますが。

またしても、「これがアイスランド!」という感じの出来事でした。


*これは個人のプライベート・ブログであり、公的なアイスランド社会の広報、観光案内、あるいはアイスランド国民教会のサイトではありません。記載内容に誤りや不十分な情報が含まれることもありますし、述べられている意見はあくまで個人のものですので、ご承知おきください。

藤間/Tomaへのコンタクトは:nishimachihitori @gmail.com

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Facebook: Toma Toshiki
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