レイキャビク西街ひとり日誌 (Blog from Iceland)

北の小さな島国アイスランドはレイキャビクの西街からの、男独りブログです。

Reykjavik 101 Black Job 

2015-04-12 05:00:00 | 日記
これまでも何度かアイスランドの観光ビジネスについては書いてきました。2008年秋の経済恐慌以後、貨幣価値が下落したことによって思わぬ強みが与えられたのが観光業界でした。

アイスランドの観光は圧倒的に「自然」が主役ですので、観光のオブジェクトそのものはすでにそこにあるわけです。観光業を営んでいる側はそれに対しては何のコストもかからないわけです。

そしてそのオブジェクトを廻るに際しての必需サービス、交通、宿泊、飲食、おみやげ(必需ではないかも?)等の価格がアイスランド通貨の価値の下落によって、外国の皆さんにとってはとても「お安い」ものになったわけです。
物価全般はアイスランドクローネで収入を得ている私たちにとっては、非常に高いものなのですが...

というわけでまさしく「官民一体」という感じでアイスランド観光興しが行なわれ、これは成功しました。ホテルなどの宿泊費の課税も優遇されましたし、Inspired by Iceland! が一時期国のスローガンのようになりましたからね。

天も憐れんでくれたと見えて、恐慌後も黒点活動の盛んな年が続きオーロラツアーが人気になったり、毎年のように火山を噴火させてくれてこれもお客さんを呼びました。2010年にはお客さんを足止めもしましたが...

恐慌後の社会にあってはこれはまさにサバイバル作戦だったと言っていいでしょうし、観光業は国内交通や飲食、建築などにも幅広いポジティブな影響を与えました。

ただその半面であまりに観光客数が急速に伸びすぎたために、迎える側のサービス態勢が整わない面もあったわけです。ホテルの数はもとより、十分な観光案内、観光地でのトイレ等の設備、はたまた自然そのものの維持管理体制、等々。

このひずみは恐慌後七年を経た現在でも解消されきってはいません。先の木曜日のフリェッタブラージズ紙にレイキャビクのダウンタウン地区でのSvort vinna(シュヴォルトヴィンナ)に関してのリサーチの結果が出ていました。

Svort vinnaというのは英語にするとBlack jobということで、要するに闇仕事のことです。もちろんタックスフリー。

リサーチはレイキャビクのダウンタウン地区を対象に行われたのですが、実際にどの範囲であったのかは説明されていません。普通に考えて市の中心の郵便番号101地区と東側の旧市街105地区程度であろうかと思います。

そこに住む住民の21,8%の人が「Black jobが非常に多々行われているのを知っている」と答えています。さらに20,9%の人が「ある程度行われているのを知っている」と答えています。つまり合わせて42,7%が「Balck jobが日常化している」ことの証人となっていることになります。

アイスランドは小さな国ですし、個々人の情報がセキュリティーナンバーで管理されていることもあり、「闇」で何かするということが容易くはない社会です。

ですから、麻薬取引のようにまったくの犯罪とかは別にして、日常のサービスが許可なし、資格なし、届出なし、所得申告なしで行われており、しかもそのこと自体が日常化しているというのはあっぱれな?ことといえるでしょう。

国税局のスクーリ・エッゲルト・ソルザールソンさんは「別に意外な結果ではないですね。国税局はこの問題には過去三四年注意を払ってきています」とコメントしていますが、国税局の関心はもっぱら脱税を取り締まりたいということにあるのでは...??

「Black jobは観光業の繁盛にくっついてきています。それらは主に観光客への住居の賃貸、飲食関係そして交通の支給(白タク)などのサービスに関連しているのです」

なるほど、当然利用者も24%のサービス利用税を払わなくていいから、安くあがって得をするわけです。

「ですが、利用者が外国人観光客ということで、短い期間のうちにこの国を離れてしまうわけで、それも実態の把握を難しくしています」とスクーリさん。

観光サービス業連合の会長グリームル・サイムンドセンさんは「この問題に対処すべきは政府です。我々はもう何度も監督を強化するよう申し入れてきているんです」と述べています。

さらに「私たちにできる範囲でのことはもうやってきていますし、すべての仕事が公明正大に行われることが一般の利益にもなることですから」

当たり前ですよね。結局、みんな自分には非がないということをおっしゃいたいようで。ですが、観光業の急な伸びが根底にあることは確かですし、社会全体がその「伸び」の恩恵を被ってきているわけですからねえ。自分の正当性を主張し合うよりは、お互いに自分の責任として認め合うことの方が必要だと思えるのですが。

この観光関連のブラックマーケット。唯一幸いなのは偽医者や売春斡旋のような強度のBlackにはまだ至っていないように見えることです(いや、売春斡旋はもうはびこってるかも)。ですがこの辺で襟を正しておかないと、というではないでしょうか?


応援します、若い力。Meet Iceland



藤間/Tomaへのコンタクトは:nishimachihitori @gmail.com
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2 コメント

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ブログ当事者 (Toshiki Toma)
2015-11-20 03:41:05
まず始めにScottulaeinirではなくて、skottulaeknirです。ネットの記者が誰か知りませんが、基本的な間違いですね。

そしてskottulaeknirというのは俗称でそのような肩書きがあるわけではありません。skotta(貧弱な)とlaeknir(医者)がくっついた言葉です。
意味は二通りあり、まずは「免許のない、あるいは正規に学んでいない医者」、そして次に「免許はあるが腕のよくない医者」を指します。

ここで注意すべきなのが、こちらでは「非伝統的医学」とみなされているものを行う人もskottulaeknirに含まれることが多々あることです。

具体的には東洋医学、鍼灸や整体などがありますし、さらに広義には悪霊払いなどのインチキくさいものも入ります。

ですからこれは非常に曖昧な言葉で、どういう意味で使われているのかを吟味しなければなりません。

ただ無免許で医療行為を行うことが犯罪なのは、平均的な文化国では常識ではないでしょうか?
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Unknown (偽医者)
2015-11-19 21:28:40
ネットで以下の記述を見つけましたがこれは本当でしょうか。もし本当なら偽医者は『強度のblack』ではなくて合法的な行為になると思います。また、実際に『偽医者』の看板を掲げて営業している人はいるのでしょうか?

■やぶ医者が合法化
「Scottulaejnir」という看板を掲げていれば、誰でも医療を行うことが認められるのが、アイスランド。この「Scottulaejnir」という言葉は、アイスランドでは「偽医者」を意味するのです。日本では考えられないようなことですね。

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