私の「ひいきの宿」ではない。
30 年ほど前の週刊朝日に連載された有名人の「ひいきの宿」である。
この連載は 103 回で終了しているから 103 の宿が紹介されたわけだ。
当時 50 近かった私はこの記事が楽しみで、いつかこのうちの一つにでも行ってみたいと思っていた。
その 57 番目の連載は、佐々木久子さん(雑誌「酒」編集長)の推す「田事」(たごと・会津若松)だった。
囲炉裏を囲んで酒宴を結ぶ 佐々木 久子
「一年のうち 200 回くらいを旅で暮らす私は、自分の家以上に、旅先ではくつろぎたいと願う。高度経済成長を遂げた日本は、日本旅館よりもホテルがいいとばかりに、猫も杓子も、木組みのしっかりした江戸時代から明治初期の素晴らしい建築物をこわして、正体不明の旅テルを氾濫させた。
そんな中で畳や障子はむろんのこと囲炉裏までも残した田事のような宿にめぐり逢うと、もう嬉しくて楽しくて仕方がない。
会津若松の冬は雪に埋もれる。私は冬が大好きな女で、特に雪がしんしんと降り積むころ、あかあかと燃える囲炉裏の傍に座って、静かに地酒を酌むのは無上のよろこびびである。
この宿は、息子さん夫婦とお母さん、それにお手伝いの人が2,3人という、ごく小さな宿なのだが、しゅんのものを大事にした手作りの料理が出される。
旅人はすべて、この囲炉裏のぐるりに車座に座って、暖かい味噌汁や炭火で焼いた川魚を食べる。つい先日も、定年退職をして初めて奥さんを連れて旅行に出たという、お酒好きの熊本県の男性と意気投合した。向こう側にいた埼玉県の人も加わり、酒と話がはずんで忘れ難き酒縁を結んだのである。」
現在の「田事」をblog で調べてみると、料理旅館として健在。食べログの評判もいい。
メモ 料理旅館「田事」(たごと) tel 0242-24-7500 会津若松市城北町5-15 七日町駅から徒歩 7 分