画像は、昔のマイバースデイの「妖精シリーズ」の中で紹介された、
「ライバルに勝てるおまじない」です。
「雪が降った日に、雪を集めて高さ30センチぐらいの山を作り、一番上に
マッチ棒を一本立てます。
そして、風の吹くまま、太陽の照るままにしておき、マッチ棒が倒れたら、
その頭の向いている方角に五歩歩いて、そのマッチ棒を地面に埋めて
下さい。
(埋められなければ、燃やしても良い)
ライバルの力は急に弱まり、あなたは勝利を手に出来ます」という
事でした。
同シリーズの初期には、欧州に古くから伝えられている妖精の伝承・
民話を、同シリーズに登場する妖精にデフォルメさせて、幾度か紹介
されました。
以下、その中の一つを、今回抄掲させて頂きます。
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【妖精の国の眠り姫】
その日も、フェアリーランドの空は、美しく澄み渡り、快い風が吹いていました。
美しの森の小川には、ウンディーネの柔らかな歌声が流れていましたし、遠くの
方では、コットン、コットンと、粉挽きの為の水車が回る音がしていました。
ところが、こののどかで平和なフェアリーランドの空気を破るように、マックが、
「大変だ、大変だ、森の中に変なものが落ちているよ」と、騒いでいるでは
ありませんか。
一体、何が起こったんでしょう?
ローザも、ピンクリンも、フロリンダも、クロトクリンも…。
男の子の妖精や、コボルトさん達までもが驚いて、みんな一斉に飛び出して、
マックに導かれるままに、森に向かって歩き始めました。
「一体、何だろうね。」
「うん、何が起こったんだろうね。」
「王様にもお知らせした方が、いいんじゃないかしら。」
「そうだね、誰かをお城にお遣いにやろう。」
そんな事を口々に言いながら、みんなで「変なもの」を探し歩くうちに、いました、
いました、バラの花に包まれるようにして、揺りかごがおいてあり、揺りかごの中には、
可愛らしい女の赤ん坊が、スヤスヤと小さな寝息を立てて、眠っているではありませんか。
マシュマロのような手足、白い白いぬけるような柔らかい肌。
こんなに可愛い赤ん坊が、一体どこから来たのでしょう。
妖精さん達は、揺りかごをグルリと取り囲んで、この何処から来たのか判らない小さな
お客さまを、不思議そうに見ていました。
だけど、まだ誰もが、この小さなお客さまが、人間の赤ん坊だとは気がつきません。
マックなんかは、「今は、静かにしているけれど、怪物が化けているのかもしれないよ」
なんて言っているし、ミンミンも、「今まで色々なお勉強をしたけれど、未だ教わってない
事だワ」なんて、首を傾げています。
しばらくすると、王様と、不思議の森の物知りふくろうおじさんがやってきて、揺りかごの
中をのぞき込んでいましたが、
「うん、これは人間の国の赤ん坊というものじゃ。」と、妖精さん達みんなに教えてくれました。
「赤ん坊?えー、これが赤ん坊ですか?」と珍しそうに、手をいじったりしたから、もう大変です。
とたんにオギャーオギャーと泣き始めて、のぞき込んでいた妖精さんを、びっくり仰天させて
しまいました。
さて、しばらくすると、問題は誰がこのオチビさんを引き取るかと云う事になり、みんなそれぞれ
意見を出し合いましたが、結局コボルトさん達に面倒を見てもらう事に落ち着きました。
コボルトさん達は、赤ん坊を育てた事なんか一度もありませんが、その女の子があんまり
可愛らしいので、一つ返事で引き受けて、大切そうに揺りかごをかついで、森の中へ持ち帰り
ました。
いつもは、土の中や、洞穴に住んでいるコボルトさん達でしたが、赤ちゃんと一緒に暮らすように
なってから、森の一番美しい所に小屋を建て、仕事に出る時は、交替で赤ちゃんの番をする
事にしました。
赤ちゃんは日増しに育っていき、ヨチヨチ歩きだったのが、ちゃんと歩けるようになり、色々な
お話しも出来るようになりました。
洋服はローザやピッコリーナが作ってくれましたから、お人形さんのように愛らしく、ハーモニアの
教えてくれた歌を歌うと、森中の小鳥が集まってきて、もっと歌って欲しいとせがむようになりました。
ある日、いつものように女の子が歌っていると、
「お嬢ちゃん、お嬢ちゃん、ちょっとこっちへいらっしゃい。
もっと色々な歌を教えてあげましょう。」
と手招きする黒い影があります。
ああ、何ていう事でしょう。
その日に限ってコボルトさん達は、みんな一緒に出かけてしまっていて、誰も女の子に、身の危険を
教えてくれる人がいません。
女の子は、黒い影に何の警戒心もなく近づいていくと、黒い影の衣に触ってしまいました。
するとどうでしょう。
生き生きと輝いていた瞳は、輝きを失い、バラのつぼみのようだった唇は、固く閉ざされて
しまいました。
その場にパタンと、崩れ落ちるように倒れてしまったのです。
黒い影はマントをひるがえすと、声高に笑い、
「フン、この国にはあたしより、歌が上手い者はいないのサ。」と言い残して、消えてしまいました。
仕事から帰って来たコボルトさん達は、驚きました。
家の中はヒンヤリ冷たく、暖炉に火もなく、いつもならテーブルの上に美味しそうなご馳走が
並んでいるのに、今日は何もありません。
一体、何が起こったのでしょう?
そしてしばらくすると、さっきの恐ろしい出来事を一部始終見ていた小鳥の知らせによって、
全てが判りました。
美しい歌声を妬んだ、ブラック・アニスの手によって、あの可愛らしい女の子は、深い永遠の
眠りに落ちてしまったのだという事が。
コボルトさん達は、悲しみました。
3日間も4日間も、何をするのも忘れて、悲しみました。
そして、ガラスの箱の中に女の子を入れて、丘の一番、綺麗な風景の所に置いて、交替で
番をして、眠り続ける女の子を守っていたのです。
年月が流れ、ある日の事です。
正しく立派な行いが、妖精王のオベロン王の気に入り、人間の世界から招かれた、
一人の青年がおりました。
青年は、フェアリーランドを一通り、案内してもらっている時に、丘の上に眠る女の子を
見つけ、そのあまりの美しさに、心を奪われてしまいました。
青年は、女の子の眠るガラスの箱に近寄ると、一輪の白いバラの花をたむけ、そっと髪に
触ってみました。
白いバラの花からは、朝露がこぼれ、女の子の唇が、かすかに湿りました。
すると、どうでしょう。
女の子の両眼は、パッチリと開き、唇には赤々とした色が戻ってきたのです。
女の子を深く愛する青年の真心によって、ブラック・アニスのかけた魔法が解けたのです。
そしてこの二人は、妖精さん達みんなに見守られながら、結婚をしたのです。
遠い昔、あなたも読んだ事がある、「白雪姫」の物語にも似ているこのお話しは、妖精さんの
間でも、語り継がれている有名なお話です。
もしかしたら、7人の小人さんは、本当はコボルトさんで、魔法使いのお婆さんは、ブラック・
アニスだったのかもしれませんね。
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