大西市長が国土交通省への要望で、熊本地震により立野ダム建設予定地周辺が大きな被害を受けたにもかかわらず、立野ダムの建設を着実にすすめるよう要望したことから、9月16日、「立野ダムによらない自然と生活を守る会」「ダムによらない治水・利水を考える県議の会」「立野ダムによらない白川の治水を考える会」で、熊本市長に対し、抗議文を提出しました。
日本共産党市議団は、3人揃って参加しました。
市は、推進を明言しながら、あくまでも国に伝えるの一点張りの無責任な態度に終始し、なんら説明すらしませんでした。
抗議文は、以下のとおりです。
平成28年9月16日
熊本市長 大西一史 様
立野ダムによらない自然と生活を守る会 代表 中島康
ダムによらない治水・利水を考える県議の会 代表 西 聖一
立野ダムによらない白川の治水を考える熊本市議の会 代表 田上辰也
立野ダム建設要望に対する抗議文
報道によると、8月19日の「白川改修・立野ダム建設促進期成会」の国土交通省への要望で、貴職は立野ダ ム建設事業を着実に進めるよう求めたとのことです。 国土交通省の「立野ダム建設に係る技術委員会」は、初会合からわずか3週間で3回の会合を行い、あっとい う間に「立野ダム建設に技術的な課題はない」との結論を出しました。国土交通省が選んだ7名の委員も、国土 交通省の見解に疑問を呈することはありませんでした。委員会の開催についても、わずか2日前に国土交通省立 野ダム工事事務所のホームページに掲載するだけで、ほとんどの住民が委員会の開催を知ることさえできません でした。 住民の主張に対し、同委員会の見解は「立野ダム建設予定地に考慮すべき断層はなく、岩盤の健全性に問題は ない」。流木や巨石で立野ダムの穴(高さ5m×幅5m)がふさがる懸念については「ダム本体の200m上流 に建設するスリットダムと、穴の前に設置するスクリーンによってカットでき、穴がふさがることはない」と結 論付けました。 しかし、今回の地震による土砂崩壊とその後の増水で、熊本市内など下流の橋脚には多くの流木が引っかかり ました。有明海にも大量の流木が漂着・漂流し、7月末までに1万6000立方メートル以上が回収されたと報 じられています(熊本日日新聞2016年8月15 日付)。それらの大半は阿蘇カルデラ内で発生し、立野ダム地点 を通ったわけであり、スクリーンやスリットダムで防げる量ではとてもありません。現に、直径約10mの立野 ダム仮排水路トンネルの入り口は、土砂と流木でふさがっています。 国土交通省が立野ダム下部の穴が流木などでふさがらない理由として、穴の上流側を覆うスクリーン(柵)を ふさぐ流木が、ダムの水位が上がると浮いてくるとしています。その元となった模型実験では、ダムの穴をふさ ぐツマヨウジなどの円柱材が、ダムの水位が上がると浮いてくるとしています。しかし、実際の流木は根や枝が ついており、水を吸って比重も大きくなっています。流木を穴が吸い込む力は、流木の浮力よりもはるかに大き いのは明らかです。実際の洪水では、流木も岩石も土砂も一緒に流れてきますが、今回の検証では流木、岩石、 土砂、それぞれ単独で模型実験やシミュレーションを行っただけです。立野ダムの穴がふさがらないとする国土 交通省の主張はありえないことです。 立野ダム完成後にこの地震が起こったとしたら、ダム水没予定地周辺の大半の地盤が大きく崩れていたわけで あり、ダム上流は多量の土砂や流木で埋めつくされ、立野ダム下部の幅わずか5mの穴がふさがり、ダムへの流 入量を貯め込むばかりとなり、洪水調節機能を果たせないばかりか、非常に危険な状態になっていたのは明らか です。にもかかわらず、国土交通省の従前の主張をそのまま容認した「立野ダム建設に係る技術委員会」の終結 直後に、貴職が同事業を着実に進めるよう同省に求めたことに強く抗議するとともに、下記3点について要請し ます。 記 1.熊本県民の人命・財産を危険にさらす立野ダム建設を即時に中止するよう、国土交通省に求めること。 2.住民も含めた「立野ダム建設に係る技術委員会」を結成し、立野ダム建設予定地周辺の岩盤や活断層、地 すべりなどについての十分な再調査・再検討を行うよう、国土交通省に求めること。 3.立野ダム建設に関して住民の疑問に直接答える説明会を開くなど、流域住民に対し説明責任をきちんと果 たすよう、国土交通省に求めること。 以上