東京多摩借地借家人組合

アパート・賃貸マンション、店舗、事務所等の賃貸のトラブルのご相談を受付けます。

家主が修繕義務を履行しなかった場合その分家賃が減額できるとした事例

2009年02月25日 | 最高裁と判例集
賃貸人の修繕義務不履行により建物の一部が使用できなくなった場合、賃借人は家賃の減額請求権を有する(名古屋地裁昭和62・1・30判決。判例時報一二五二号)
(事案の概要)
 1 Yは昭和55年6月1日、Xから二階部分を居宅、一階部分をお好み焼屋店舗として使用する目的で本件建物を賃料月10万円で賃借した。
 2 二階部分には三つの居室があったが、56年9月前からいずれの部屋にも雨漏りがし、特に南側と真中の部屋の雨漏りは、雨天の場合バケツで受けきれず、畳を上げて洗面器等の容器を並べ、Yらが椅子の上に立って、シーツやタオルで天井の雨漏り部分を押さえざるを得ない程であり、押入に入れたふとんが使用不能になったこともあり、本件建物二階部分は、同年9月以前からその少なくとも三分の二以上が使用不能となった。
 3 YはXに対し、しばしば雨漏りの修繕を求めたが、Xはこれに応じず、右の使用不能状態は、Yが本件建物を明渡した昭和58年7月31日まで続いた。なお、一階店舗部分は、右の雨漏りにより便用不能となることはなかった。
 4 これに対し、Yは56年9月分から賃料の支払を拒絶し、Xに対し、右使用不能部分の割合に応じて賃料を減額する旨意思表示した。
 5 しかし、Xは減額に応じず、Yに対し、56年9月分から明度し済みの58年7月分までの賃料二三○万円の支払を求めた。
(判決)
 本件建物の二階部分の少なくとも三分の二が56年9月1日以降58年7月末日までXの修繕義務の不履行により使用できない状態にあったことが認められるところ、修繕義務の不履行が賃借人の使用収益に及ぼす障害の程度が一部にとどまる場合には、賃借人は当然には賃料支払義務を免れないものの、民法六一一条一項を類推して、賃借人は賃料減額請求権を有すると解すべきである。
 本件の場合、右減額されるべき賃料額は、右使用できない状態の部分の面積の本件建物全面積に対する割合、本件賃貸借契約は一階店舗部分とその余の居宅の使用収益を目的としていたととろ、Yの右店舗部分自体の使用収益にはさしたる障害は生じなかったこと及ぴ雨漏りの状況等の諸般の事情に鑑み、本件賃料額全体の25%をもって相当とする。
(寸評)
 判決はもとより妥当である。家主が修繕義務を履行しなかった場合、二つの対応がある。一つは賃借人側で修繕しその費用を家賃と相殺する方法で、組合がよく利用する。もう一つは本件のように民法六一一条一項を類推適用する方法である。いずれの方法が良いかは事案によって異なってくる。

(東借連常任弁護団 弁護士 白石光征)



コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

ホテル耐震偽装:愛知県の過失認め5700万円賠償命令

2009年02月25日 | 最新情報
 姉歯秀次・元1級建築士による耐震強度偽装事件にからみ、解体に追い込まれた愛知県半田市のビジネスホテル「センターワンホテル半田」が、建築確認審査をした県とホテル開業を指導したコンサルタント会社「総合経営研究所」(総研、東京都)、総研の内河健所長を相手取り、約5億1500万円の損害賠償を求めた訴訟の判決が24日、名古屋地裁であった。戸田久裁判長は「建築主事は確認審査における職務上の注意義務を怠った」と県の過失を認定、県を含む3者に約5704万円の支払いを命じた。耐震強度不足を見抜けなかった行政の責任を問う訴訟の判決は初めてで、同種の訴訟にも影響を与えそうだ。

 訴訟では、県が建築確認審査で負う注意義務の範囲が争点となった。県側は、問題発覚後の06年の建築基準法改正前に定められていた審査項目以外については「審査義務を負っていない」と主張したが、判決は「一般的に通用する技術的基準に反するような構造設計がされている場合、その真意を設計者に質問すべき」と判断した。

 その上で、ホテルが各フロアの耐震壁の設計を2枚壁とすべきところを1枚壁として、耐震強度が基準の42%しかなかったことを確認審査で指摘しなかった点について「調査確認しないまま法規定に適合したと判断したのは注意義務に違反する」と認定。「耐震壁の評価は設計者に委ねられている工学的判断で、確認審査の対象ではない」とした県側の主張を退けた。また、総研や内河所長については「安全性を確保するため、設計・施工業者の監理業務を適切に指導監督すべき注意義務を負うのに、漫然と一体的に営業した」と指摘した。【式守克史】

 【ことば】耐震強度偽装問題 姉歯秀次・元1級建築士が構造計算書を改ざんして強度不足の建物を完成させた問題で、05年11月に発覚した。国土交通省によると、全国でマンションやホテルなど99棟で偽装が発覚、建て直しや補強工事が必要とされた。姉歯元建築士は建築基準法違反などの罪に問われ、08年2月に懲役5年、罰金180万円の判決が確定。京都、群馬、愛知の別のホテルも建築確認を怠った行政の過失を問う訴訟を起こしている。(毎日 1月24日)

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする