東京多摩借地借家人組合

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大家さんの死亡に伴う退去請求

2008年01月27日 | 借地借家の法律知識
(Q) 現在、賃貸借契約で一戸建て住宅に住んでおります。この度、大家さんが亡くなり、遺族が住む為に建て替えをするとのことで、今年の1月に、退去の申し入れがありました。

 仲介不動産業者から『遺族と退去時期、移転料について話し合いをする。いつなら退去できるか?』と聞かれ『仕事の都合がつかないので6カ月は待ってほしい』と伝えました。その後、遺族の方と偶然お会いできて、遺族も『6カ月ぐらいは』と言っていました。

 そして仲介不動産業者から『遺族の方と話し合った合意書を送ったので、内容を確認してほしい』と言われ、合意書を見ると「退去時期は4月末(退去申し入れから3カ月後)、移転料は現家賃の4か月分(32万円)」とあり、一方的な内容なので不動産業者にクレームを言うと『遺族の方から、○○さんは良い人だと聞いていましたが、クレームを言うなら悪い人になっちゃいますよ。それでもいいんですか?』とか、時期が早すぎると言うと『じゃあいつなら出られるんですか?』と逆ギレされ、『半年は待ってほしいと以前伝えた』と言うと『そんなことは聞いていない』と言い、挙句に『そんなこと言うなら移転料もらえませんよ。もらえなくしてもいいんですよ。』と脅されました。

 さんざん話した結果、「退去時期は5月末、移転料は36万円」という新しい合意書を送ってきました。

 ところが、最初の合意書には親族のサインがあったのに、新しい合意書には親族のサイン欄がなく、代わりに不動産業者がサインをしていました。つまり、私と親族の間の合意書ではなく、私と仲介不動産業者との間の合意書なんです。コレっておかしくないですか?

 とりあえずサインはしないで親族の方に見せて確認しようと思っていますが・・・・・・。また、依然として退去時期と移転料に不満があります。何か良い手はないでしょうか?

(東京都 30歳代 会社員 女性)



(A) 退去義務はありません
 家主が死亡すれば、法定相続人が、家主の地位をそのまま引き継ぎ、契約に従った貸主としての権利義務関係をそのまま履行しなければなりません。したがって、「親族が住む為に建て替えをする」という理由で退去させられることはありません。契約期間が終了するまでは、そのまま居住する権利が法的に保障されています。また、借り主の方からは、契約期間を更新請求する権利も認められています。つまり、期間が過ぎたから当然に出て行ってくれということにはなりません。まず、この前提から話が始まります。

 次に、借主に数カ月の家賃滞納など著しい債務不履行がある場合を除き、新家主から退去要請、つまり更新拒絶を行うには、契約期間終了の1年前から6カ月前までの間に「通告」することと、「正当事由」の2つの要件が必要です。

 正当事由とは、社会通念上誰もが納得できる理由のことですが、単に自分や身内が住むからという理由だけでは足りません。

 そして、通常は立ち退き料(引っ越し代など次に住まいを探すための必要費+必要があれば慰謝料)というお金を足すことによって、正当事由を補完するということが判例で認められています。

 したがって、不動産業者の主張は無茶苦茶です。契約相手は家主ですから、不動産業者を相手に交渉する義務はありませんので、不動産業者との交渉は拒否したほうがよいと思います。

 不動産業者の対応があまりにもひどいようでしたら、宅建業者の指導機関である、都道府県庁の住宅局民間住宅指導相談窓口に相談しましょう。

(住宅ねっと相談室カウンセラー 大学生協職員 朝永 彰)

 日経:住宅ネット相談室より



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