ブロカントやデポで見かける大時計はメカニズムが働いていなかったり木製のケースが壊れていたりほぼ正常な物に出会うことはまれだ。
ミルポワのブロカントを訪れると入り口の横で振り子が動いている大時計を見つけた。
店主に正常に作動するのか尋ねると「ごらんのように働いています」といわれたが腕時計と比べてみると15分くらいは遅れていた。
ベストプライスを訊ねたあと 「考えてからあとでまた来ます」 とその場を立ち去ったが
飴色の杉のケイスとチックタックと振り子の音に魅せられながら相棒と相談した後やはり買うことに決めた。
230センチ以上もの長身を解体できるのだろうと思っていたがその長さは短くすることはできずフロントグラスぎりぎりだったがうまく車におさまってくれた。
とりわけ気に入ったのはこのメカニズムとケイスはここから近くの小さな村で120年ほど前に作られたというらしい。
店主に言われたように水平を厳格に守り振り子を動かすとなんと止らずに動き出すではないか。
チャイムの音はまだ聞いたことはなかったので時間が来るまで少しの間待っているとなんとも素朴な鐘の音を打ち出した。
それどころか2分後にまた同じ数の鐘が響き渡った、やっぱりこれは壊れているのだと思いがっかりしていたがどうやら1分前と1分後に二度時間を知らせる鐘が鳴るメカニズムのようだ、さらには30分の時は1度撃つ時と2度打つ時がある、これは偶数の時のあとと奇数の時のあとの違いのようだ。
一日に8分は遅れるが穏やかな振り子の音と飾り気のない鐘の音が気に入っている。