1995年から翌年にかけて、羽生は6つのタイトル戦で挑戦をすべて退けただけではなく、再び王将戦の挑戦権を獲得し、その舞台に登場した。こうなれば流れは決まったも同然である。谷川を4-0のストレートで下し、ついに夢は現実になったのである。それからも羽生は勝ち続けた。さすがに7冠独占こそ破れたが、ほとんどの期間、4冠以上は保持し、第一人者だった。さらに驚異的なのは、その多忙な日常の合間に、多くのマスコミの取材に応じたり、国内外のチェスの大会に出場し秀でた成績を修めた。また、「公文式」のTVCMを覚えている方も多いだろう。昨年春、森内俊之をストレートで破って名人に復位し、久しぶりに、将棋界で最も格式が高いとされる竜王・名人の2大タイトルを掌中にしたとき、羽生の覇権は盤石にみえた。
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