ロビンの観劇日記

芝居やオペラの感想を書いています。シェイクスピアが何より好きです💖

三島由紀夫作「薔薇と海賊」

2022-03-18 11:33:39 | 芝居
3月8日東京芸術劇場シアターウエストで、三島由紀夫作「薔薇と海賊」を見た(演出:大河内直子)。



童話作家の楓阿里子邸。そこに、阿里子の童話のファンで30歳の松山帝一が訪ねてくる。帝一は、自分を童話の中の主人公・ユーカリ少年だと信じている
知的障害の青年で、後見人の額間に付き添われてやってきた。楓邸は童話の世界のように仕立てられ。阿里子は19歳の娘・千恵子にも登場人物の
ニッケル姫の扮装をさせていた。帝一はこの家にずっと住みたいと言い出し、阿里子と帝一の夢の世界のような純愛が始まる。
帝一の登場で、阿里子の夫の重政、その弟の重巳との館での生活にもひずみが生まれていくのだが・・・(チラシより)。
ネタバレあります。注意!
<1幕>
始めの方で、庭の手入れと掃除をボランティアでしている男女の老人二人が登場し、男性の方が長々と身の上話をするが、それが何とも退屈。
ストーリーとも関係ないし、ここは不要ではないだろうか。もっと短くした方がいい。
阿里子(霧矢大夢)は帝一(多和田任益)と初めて会い、彼の語ることを聴いて心を惑わされ、「あなたは危険だわ」と言う。
彼女は女学生だった20年前、重政(須賀貴匡)によって、夜の公園で襲われたのだった。その時妊娠し、激しく後悔した彼と結婚して娘を産んだものの、
彼に対しては心を閉ざし、たまたま文才があったために童話作家として成功した。夫の方は働かず彼女に養われていた。彼の弟・重巳(鈴木裕樹)も邸に居候している。
重政は浮気が公認されており、邸には彼と重巳の、それぞれの愛人たちも出入りしている。
娘の千恵子はコスプレ姿で「私は先生(=母)の秘書兼女中ですもの」と自嘲しつつも、時々母に対して鋭いことを言って母を涙ぐませる。
<2幕>
額間(大石継太)がいつも短剣で帝一を脅して言うことを聞かせている、と帝一から聞き、皆は憤って額間からその短剣を取り上げようとする。
千恵子が色仕掛けで首尾よく取り上げて帝一に渡すと、今度は逆に帝一が額間を短剣で脅し、額間は異常なほど怯える。
勝ち誇った帝一が意気揚々と阿里子と二階へ去ると、額間は残った人々にそのわけを話す。
帝一はその短剣に魔力があると信じており(元々額間がそう信じさせたのだが)、それで悪者(と彼が思う者)を本当に殺すつもりだ、というのだ。
額間は帝一の親族から後見人として彼を託されており、それを仕事としていた。

帝一はすでに大人だが、性欲がない。医者がそう言っていると額間から聞いて、重政と重巳はかえって危険を感じ、不安にかられる。
この時、なぜか二人は阿里子に惚れ直し、ますます阿里子に執着するようになる。

帝一が眠っている間に重巳が短剣を取り返し、額間に渡す。また関係逆転。
すぐに帝一を連れて帰ると言う額間に、阿里子はせめて今夜の夕食までいてほしい、と頼む。
<3幕>
正式の晩餐会風。長いテーブルにみなこちらを向いて座っている。そろそろ食事も終わりに近づき、コーヒーとデザートが出る。
重政は重巳に、これからも三角関係を続けるのか、などと話している。それぞれの会話。
玄関でピンポンと音がするが、誰もいない。皆が不思議がっていると、冒頭の老人二人が白装束で登場するが、彼らの姿は誰にも見えない。
彼らは食卓の人々にいたずらして回る。重巳にコーヒーをかけたり、重政に何かしたり。ここはマーロウの戯曲「フォースタス博士」を想起させる。
男性は、千恵子の髪をなで、額間の髪をなでる。これがきっかけで、二人はすっかりいい感じになる。
男性はまた、額間の胸の隠しから短剣を取り、ゆっくりテーブルを回り、皆があわてる中、それを帝一の手に渡す。
帝一はテーブルの上に仁王立ち。「海賊は皆殺しだ!」「額間、死にたいか?」額間は弱々しく首を振る。
千恵子は母に額間との結婚を宣言し、二人は手に手を取って出てゆく。
驚いたことに、重政と重巳も帝一から短剣を突きつけられ、結局出てゆく。
ついに二人だけになった阿里子と帝一は抱き合う。白装束の二人が祝福すると、その時初めて阿里子たちに彼らが見える。
男性は、自分たちが事故にあって幽霊になったと説明し、「これからお二人の結婚式を挙げましょう」とびっくりするようなことを言い出す。
庭に面した掃き出し窓を開けると、阿里子の書く童話に出て来るたくさんの生き物たちが登場!
みな、白や銀の衣装(扮しているのは重政、重巳、千恵子、額間、愛人たちら)。少し振り付けあり。
老人らが二人に薔薇の冠をかぶせる・・・。完!?

この戯曲の執筆のきっかけは、作者がニューヨークでバレー「眠りの森の美女」を見たことだという。
それを知って、サーッと視界が晴れた。
なるほど、そういうことか。楓先生は20年前のおぞましい事件によって愛に絶望し、その後(結婚はしたものの)夫の愛を拒絶して心を鎧で覆い、
20年間、邸で眠り続けていたところに、純粋な青年・帝一が現れて、彼の純愛によって目覚めたというわけか。

阿里子役の霧矢大夢が素晴らしい。
役者はみな、膨大なセリフをよく消化して熱演。
驚いたことに、ほぼ満席。どうも帝一役のイケメン青年が目当てらしい。

影響を受けやすい評者の脳内では、翌日「よくってよ」「・・・ですものねえ」といった具合に、当時の東京弁が流れていた(笑)。

コメント    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« ヘンデル作曲のオペラ「ジュ... | トップ | 「夜の来訪者」 »
最新の画像もっと見る

コメントを投稿

芝居」カテゴリの最新記事