ロビンの観劇日記

芝居やオペラの感想を書いています。シェイクスピアが何より好きです💖

井上ひさし作「藪原検校」

2021-04-08 11:05:06 | 芝居
3月5日パルコ劇場で、井上ひさし作「藪原検校」を見た(演出:杉原邦生)。
パルコ劇場オープニングシリーズ。

とある按摩・盲大夫が語る稀代の悪党の一代記。
江戸時代中頃、日本三景の一つ、松島は塩釜の漁港に一人の男児が生まれた。親の因果が子に報い、を地でいくこの子は、生まれた時から目が見えない。盲目の身に生きる
術を得るべく塩釜の座頭・琴の市に預けられ、もらった名前が杉の市。父ゆずりの曲がった性根と母ゆずりの醜さ。有難くもない天賦のためか、杉の市は
殺しと欲にまみれた栄華への道を上り始める・・・(チラシより)。

川平慈英の語りがとにかく見事。圧倒される。この人はこれまでも見たことがあるが、これほどの技量があるとは全く知らなかった。
彼の語りだけでも見る(聴く)価値あり。彼の日本語のよどみない怒涛のうねりに観客(聴衆)は快く身を委ねる。
2012年6月に世田谷パブリックシアターで見た上演(栗山民也演出)では、役者はみな素晴らしかったが、語りが冴えなかった。
あの時の主演は野村萬斎、お市は秋山菜津子、塙保己一は小日向文世、師匠・琴の市はたかお鷹、母は熊谷真実というすごい面々だった。
今回お市を演じた松雪泰子も美しく妖艶で素晴らしい。
秋山菜津子があまりに印象深かったため、あれが決定版だと思っていたが、この人はこの人で、また忘れ難い魅力的なヒロインを作り上げた。
主役の市川猿之助はもちろん達者なものだが、例によって彼が登場しただけで拍手が沸き起こるのには閉口した。
昔見た、彼が主演の「ヴェニスの商人」や「じゃじゃ馬慣らし」の時もそうだったが。
歌舞伎じゃないんだからやめてほしい。
彼は憎々しげで、こういう役にぴったり。いかにもなワルだが、あまりにも自信満々に楽しそうに余裕で演じるので、その過酷な運命にまるで同情できないし、
感情移入もできない。
それは作者の意図に反するのではないか。
つまりミスキャストということだ。
琴の市役の佐藤誓は好演。
盲目の大学者、塙保己一役を三宅健がつとめるが、存在感が薄い。はっきり言って若過ぎる。だから説得力に欠ける。

ところで、ラストで杉の市(藪原検校)が重ねてきた悪事がすべて露見したらしいが、それがいつどのようにしてなのかが、よく分からない。
二度目にお市を殺した時に人に見られてしまったのだろうか。

現代では死語となりタブーでもある差別語の連続に驚かされるが、江戸時代のことだから仕方ないのかも知れない。
だが芝居として見ていても、あまり愉快ではない。
この作者の内には憎悪や恨みが潜んでいたのかも知れない。

ところで新しくなったパルコ劇場だが、構造が観客に不親切だ。
トイレが遠くなった!階段を降りて右に左にとぐるぐる行かなきゃならない。
しかもその案内の表示が一ヶ所しかなくて小さい。
そのためスタッフに尋ねる客が多いらしく、驚いたことにトイレの場所についてのアナウンスがあった!
さらに、上演時間の表示が開始〇時〇分、終了〇時〇分ではなく、第1幕〇〇分、第2幕〇〇分、となっている。
つまり、終了時刻を知るには計算しなくてはならない。
なぜお客に計算させるのか?
観客目線で考えて配慮してほしい。
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