6月13日俳優座スタジオで、セバスチャン・ティエリ作「ムッシュ・シュミットって誰だ?」を見た(演出:小笠原響)。
ある夜、一本の電話が。
何故?うちに電話は無い筈。
ムッシュ・シュミット?誰?
私はジャン=クロード・ベリエ。眼科医だ。
妻はニコル。・・・の筈。
次々起こる不可解な出来事。
一体どうなってる?私が狂ったのか、世界が狂ったのか?
まるで突然急流に吞み込まれたかのように一変する日常。
―あなたならどうする?(チラシより)
ネタバレあり注意!
フランスで、ある夫婦が夕食をとり始めた時、電話が鳴る。だがそもそも家に電話はないはず。誰が電話を設置したのか?
電話に出ると、相手は「シュミットさんですね」と言う。「違います。ベリエです」と答える夫。
そこから二人は部屋の中の異変に気づく。壁の絵も本棚の本も、服も全部自分たちのものではない!
二人は空き巣がこんなことをするだろうか、自分たちが部屋を間違えたのか、と混乱する。
しかもドアが開かない!さっきこの鍵で開けて入ったはずなのに、閉じ込められてしまったらしい。
警察に電話しようとするが、番号が違う。
ここはフランスではなく、ルクセンブルクだという。
そうこうするうちに警官が来る。
事情を説明するが、当然分かってもらえない。
警官は二人を空き巣と疑い、「空き巣はこうするんです」と銃で壁の鏡を撃って粉々にする。
二人は震え上がる。夫は仕方なく、相手の言う通り「シュミットです」と答える。
身分証を見せてと言われ、いろいろ抵抗するも、結局取られてしまう。
ところが身分証を見た警官は「失礼しました、あなたはシュミットさんですね」と言う。
不思議だがひと安心する二人。
その後もファーストネームを聞かれたり、いろいろあるが、何とかその夜は警官は帰ってくれた。
夫はアンリ、妻はナディーヌだという。
妻は言う「私たちは鮭じゃないわ。流れに逆らって川を登るなんてダメよ。このまま流れに身を任せるのよ。きっとどこかにたどり着くわ。湖とか。」
それぞれナディーヌ、アンリと呼び合うことにする。
シュミットは皮膚科医らしい。靴のサイズが夫と同じ。朝食に食べるクラッカーも同じ。
翌朝、医者が来る。「患者はどこですか?」警察から連絡があって来たと言う。
夫にいろいろ質問し、ボールでゲームをさせ、奇妙なことをさせるので夫は怒り出す。
医者が帰ると、また警官が来て「息子さんが見つかりました」と言う。
二人はびっくり。息子って何だ?俺たちに子供はいない。だが妻が思い出させる。「流れに身を任せるのよ」
かくて息子がいるふりをすることになり、またいろいろな質問(名前・年齢・職業等)に苦心して答える。
ついに息子登場。妻は喜んで抱きつき「よかった!ママを許してね!」見ていた警官はもらい泣きしている。
息子と警官が去ると、夫は妻の見事な演技に感心するが、妻は「何言ってるの?あれは私たちの息子よ」
この時から二人は仲間ではなくなる。夫だけが不可解な状況に取り残されるのだった・・・。
音楽はいい。不条理と悪夢のような展開にピッタリ。
特に、二人が警官の言う通りアンリとナディーヌとして生きようと決心するシーンで、突然ワーグナーの「マイスタージンガー前奏曲」が
鳴り響いたのがおかしい。ここが唯一笑えたシーンだった。
チラシには「私が狂ったのか、それとも世界が狂ったのか」とある。
それを読んだ人は、彼は狂ってはいないんだな、何か別のわけがあるんだな、と思うはずだ。
だからその謎を解こうとして頭をひねることになる。
ラスト近く、男は自分の職場と信じるフランスの眼科医院に電話し、旧知の秘書にベリエ医師に取り次いでくれ、と言う。
医師が出ると、本人にしかわからないような彼のプライベートのことをしゃべり続ける。
それを聞く観客は、パラレルワールドとかドッペルゲンガーとかいう語が頭の中を駆け巡るが、しまいにわかったのは、本人が精神病(統合失調症)、
つまり気が狂っていたということ。
これってひどくないか。
結局、彼の脳の病気がすべての原因で、この話が全部主人公の妄想だったとは!
いわゆる「夢オチ」みたいなもんじゃないか。
俳優座で初めて裏切られた思いだ。
帰り際、一人の男性客が、スタッフのそばを通るたびに「チラシにだまされた」と言っていたが、その気持ちがよくわかる。
役者では、急きょ代役で精神科医を演じた志村史人がよかった。
妻ニコル役の斉藤深雪も好演。
ある夜、一本の電話が。
何故?うちに電話は無い筈。
ムッシュ・シュミット?誰?
私はジャン=クロード・ベリエ。眼科医だ。
妻はニコル。・・・の筈。
次々起こる不可解な出来事。
一体どうなってる?私が狂ったのか、世界が狂ったのか?
まるで突然急流に吞み込まれたかのように一変する日常。
―あなたならどうする?(チラシより)
ネタバレあり注意!
フランスで、ある夫婦が夕食をとり始めた時、電話が鳴る。だがそもそも家に電話はないはず。誰が電話を設置したのか?
電話に出ると、相手は「シュミットさんですね」と言う。「違います。ベリエです」と答える夫。
そこから二人は部屋の中の異変に気づく。壁の絵も本棚の本も、服も全部自分たちのものではない!
二人は空き巣がこんなことをするだろうか、自分たちが部屋を間違えたのか、と混乱する。
しかもドアが開かない!さっきこの鍵で開けて入ったはずなのに、閉じ込められてしまったらしい。
警察に電話しようとするが、番号が違う。
ここはフランスではなく、ルクセンブルクだという。
そうこうするうちに警官が来る。
事情を説明するが、当然分かってもらえない。
警官は二人を空き巣と疑い、「空き巣はこうするんです」と銃で壁の鏡を撃って粉々にする。
二人は震え上がる。夫は仕方なく、相手の言う通り「シュミットです」と答える。
身分証を見せてと言われ、いろいろ抵抗するも、結局取られてしまう。
ところが身分証を見た警官は「失礼しました、あなたはシュミットさんですね」と言う。
不思議だがひと安心する二人。
その後もファーストネームを聞かれたり、いろいろあるが、何とかその夜は警官は帰ってくれた。
夫はアンリ、妻はナディーヌだという。
妻は言う「私たちは鮭じゃないわ。流れに逆らって川を登るなんてダメよ。このまま流れに身を任せるのよ。きっとどこかにたどり着くわ。湖とか。」
それぞれナディーヌ、アンリと呼び合うことにする。
シュミットは皮膚科医らしい。靴のサイズが夫と同じ。朝食に食べるクラッカーも同じ。
翌朝、医者が来る。「患者はどこですか?」警察から連絡があって来たと言う。
夫にいろいろ質問し、ボールでゲームをさせ、奇妙なことをさせるので夫は怒り出す。
医者が帰ると、また警官が来て「息子さんが見つかりました」と言う。
二人はびっくり。息子って何だ?俺たちに子供はいない。だが妻が思い出させる。「流れに身を任せるのよ」
かくて息子がいるふりをすることになり、またいろいろな質問(名前・年齢・職業等)に苦心して答える。
ついに息子登場。妻は喜んで抱きつき「よかった!ママを許してね!」見ていた警官はもらい泣きしている。
息子と警官が去ると、夫は妻の見事な演技に感心するが、妻は「何言ってるの?あれは私たちの息子よ」
この時から二人は仲間ではなくなる。夫だけが不可解な状況に取り残されるのだった・・・。
音楽はいい。不条理と悪夢のような展開にピッタリ。
特に、二人が警官の言う通りアンリとナディーヌとして生きようと決心するシーンで、突然ワーグナーの「マイスタージンガー前奏曲」が
鳴り響いたのがおかしい。ここが唯一笑えたシーンだった。
チラシには「私が狂ったのか、それとも世界が狂ったのか」とある。
それを読んだ人は、彼は狂ってはいないんだな、何か別のわけがあるんだな、と思うはずだ。
だからその謎を解こうとして頭をひねることになる。
ラスト近く、男は自分の職場と信じるフランスの眼科医院に電話し、旧知の秘書にベリエ医師に取り次いでくれ、と言う。
医師が出ると、本人にしかわからないような彼のプライベートのことをしゃべり続ける。
それを聞く観客は、パラレルワールドとかドッペルゲンガーとかいう語が頭の中を駆け巡るが、しまいにわかったのは、本人が精神病(統合失調症)、
つまり気が狂っていたということ。
これってひどくないか。
結局、彼の脳の病気がすべての原因で、この話が全部主人公の妄想だったとは!
いわゆる「夢オチ」みたいなもんじゃないか。
俳優座で初めて裏切られた思いだ。
帰り際、一人の男性客が、スタッフのそばを通るたびに「チラシにだまされた」と言っていたが、その気持ちがよくわかる。
役者では、急きょ代役で精神科医を演じた志村史人がよかった。
妻ニコル役の斉藤深雪も好演。
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