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中 間 在 庫

2016-01-17 10:04:45 | Weblog
ものの価値が上がっている時

資本はそれを可能ならしめた対象

へと一斉に向かい

たちまち輻輳する

状態へと遷移する


値上がりすることが分かっていれば

転売

で生じる差益の確保を狙って

それがもつ市場価値

が次第に増幅されたものとなってゆく


かつて日本で生じていた

あの不動産バブル

を引き起こしたそのメカニズムは

こうして生み落とされたもの


バブル経済のピークは

90年三月であり

その直後の四月の末頃には

ピークアウトしていたことが

実勢価格

で確認されるようになっていた


不動産融資に対する総量規制が

四月一日から

実施されるようになったのだが

それが劇薬

であることを

法制化した当事者

である国会の成員は

誰一人

何一つ

理解してなどいなかった


絶対に値下がりしない

と信じられていた不動産の価値は

90年四月の終わり頃から

値下がりする傾向を強め

資産の長期保有がリスクとなる状況

を成り立たせるようになっていた


事態の急変を霞が関が察知するまで

ほぼ丸二年を要し

永田町が事態の意味を理解するまで

更に一年を必要とした

それほどこの国の指導階級は

経済変化に対して

無知

だった


この期間を

メディアは後に不作為の三年

と呼ぶようになり

その後の失われた二十年

を予告するもの

と位置づけた


日本経済に

一体何が起きているのか

ということすら

理解することができないまま

おろおろと只歩き回る日々を

官僚たちは闇雲に過ごしていた


土地神話が崩壊した事実を見ていながら

バブル経済の発生機序と

崩壊過程の繋がりの関連性を調査しようとせず

教科書となる筈の資料を

内緒で漁っていたのだったが

何一つ発見することは

当然ながら

できなかったのである


この「不作為の三年」と呼ばれた期間は

指導階級のもつ認識能力のレベル

をよく物語るものだった

先行指標となるものが不在であるとき

この国の指導者たちは

決定する意思と

意欲とを

共に失ってしまう

という欠陥に支配されてしまうのだ

この通弊を

指導者階級は権威主義を持ち込んだときから

潜在的にもっていた


実績がなければ

どのような策も

採用しない

という慎重な姿勢が

日本の統治システムには

すっかり

染みついている


この国では

実績を持たない者は

誰からも評価されない

という決まりなのだ


ナショナルチームの監督選びからして

そうなのだ

実績に照らした判断を捨て

異なった道を採択した場合

それを

英断

とこの国では称する

それほど稀な出来事なのだ


バブルの崩壊に学ぶ事例が

この国の指導者たちに

先例を与えていたら

訪れた危機に対応することは

間違いなく

容易であった


だが

資本主義経済の先進国

となっていたそのアメリカで

バブル経済の崩壊など

起きたことは一度もなかった

教科書にない事態に遭遇すると

この国指導者たちは

たちまち狼狽え

判断能力を失ったまま

ただ茫然と立ちつくす

日々に明け暮れすることを繰り返す

模倣と改善は得意だが

突破口を開く行為には

いつの世も

批判的であり続けてきた


バブル経済が潰れた後

何もすることができないまま

座視していた三年間

という無駄な年月を

この国に与えていたのは

常に二番手である心地よさ

に漫然と慣れ親しんできた

固有の文化

とそれが生む歴史の結果


85年の第三四半期から

90年の第一四半期までのあいだ

土地神話を前提とする

不動産価格の上昇

が盤石の態勢で

底堅く維持されていた

そのメカニズムを成り立たせていたものとは

ドル安政策に基づく円買い圧力が

専ら不動産市場へと向かい

投資を投機へと押し上げてきた

その上昇志向が元にある

戦略的な資本の移動


その推進役となっていたのが

ほかでもない中間在庫

土地の価格はもっているだけで上昇していた時代に

土地を仕入れないのは愚かだと思われていた

借金してでも土地を買って置きさえすれば

金利をはるかに超えた収益が

転売する度に勝手に転がり込んでくる

こうして使うあてのない土地に対する投資が募り

欲に目の眩んだ組織と個人が

仮の需要を形成することで

最終消費へとつないでいく

という道筋が作られるようになっていた


仮需が実需を牽引するサイクルが

日本経済に

不動産バブルを連れてきた


不動産融資に対する総量規制の実施は

このメカニズムを

破綻へと追い込むきっかけとなり

仮需を生み出してきた仲介業者のすべてに

追加の融資を受けることを不可能にした


手持ちの資産を売却してからでなければ

次の仕込みをすることができない

という状況がこうして設定され

中間在庫を積み増すことが困難となり

資産の現金化

が必然的に求められるようになった

という経過が土地の価格を

上昇から下落へと転じさせた


価値の増大から一転して

下落基調へとトレンドが変化した

ということが

中間在庫の価値を

持っているだけで減価する

不良債権へと変容させた

これが売り圧力を強めさせる原動力となり

ついには投げ売り状態へと

打ち揃っ陥るよう仕向けさせた

ということになる


これとまったく同じ経過が

原油相場で今おきている変化

中間在庫を増やすことが

損失の原因となったときから

原油相場の下落

が始まった


先安観が市場を支配するようになったとき

資産価値は劣化する運命の支配をうける

大量に抱え込んだ在庫を

処分することができない限り

損失の規模は

時の経過と共に膨れ上がり

損失を増幅する効果で

売りを急がせる環境となる定め

損失勘定への振り替えを避けるには

在庫処分が急務となる


価値を高めるための手段

であった中間在庫の積み増しが

状況の変化で俄かに反転し

損失を速める結果を強要する

という粗末な経過に

欲の深い者供が

それまで市場でため込んできた富を

市場で放出せざるを得なくなってゆく


まことに皮肉な売り急ぎの経過が

こうして産み落とされるようになり

市場は混乱して安定を失い

欲に支配されてきた大勢が

最終的に得た富

以上の損失を蒙る

結果と遭遇する

という決まりが現実のものとなる


中国の株式市場でも

これらとそっくり同じ経過が

今まさにおきている

中国経済が退潮へと転じたということを

共産党指導部が察知してから

一連の変化が顕在化した


ドル安政策が導いた別の結果の一つ

として

人民元の大量発行が外圧で強要され

党指導部は通貨供給権の拡大を受け

一斉に俄か成金となったのだった

世界中で爆買いをする身分を享受し

内需にまったく寄与しない

海外市場での消費を活発に行い

漁夫の利で勝手に増加した資産を

ひたすら消費する風潮を当然視することを許し

世界第二位となった経済力を侍して

世界に影響を与えようと画策し

アジアインフラ投資銀行 AIIBを設立し

受け入れ済の海外資本の増加が

人民元の更なる追加供給を迫るようになり

そこで生じた余資運用の方便として

海軍力の増強と

国内の経済成長を高める目的で

株式市場へと大量の資本を注入し

株価の急激な上昇を演出することによって

中国経済の好況ぶりを世界に示し

相場の上昇を生み出すほどの経済力を

共産党政権が導いている

という姿を見せつけようとして

その計画をさかしらに実行

へと移したのだったが

その思惑はもののみごとに外れてしまい

却って相場の急落を導いた


異常なレベルの株価の高騰は

中国の経済勢成長余力が尚健在である

かのように世界中を一時思わせたのだが

市場原理を理解しない政策であることが

株価操作の形跡から明らかとなり

投資家の不信を呼び込んで

資本の国外脱出を逆に急がせた


このような市場経済を成り立たせている

原理と原則とに背く思慮に欠けた一連の行為が

長年親しんできた計画経済の経験値を優先させ

直接的な官制相場を大陸市場に築かせた

根拠に乏しい経済政策の化けの皮はすぐはがれ落ち

半年で

元の木阿弥へと

相場の水準は

市場の力学によって引き戻された


相場の底が

最終的に確認される時がくるまで

価値の下落圧力は

これからも保たれて推移する


日本でも三年前から官制相場が

株価を高値誘導する動力源となっていた

直近の中国でのケースとは異なっているのは

間接的な方式という違いだけであり

本質は同じもの

株価の人為的な誘導を

公的機関が企てた

という市場原理を逸脱した

一連の資本力に依拠しただけの

道理のない

不自然な相場展開をつくりあげてきたのだったが

株価の持続的下落という経過となって

年明け早々から

思慮を欠いた薄っぺらな経済政策

という意味付けを

アベノミクスへと当てはめた

その点で中国共産党政府の経済認識能力と

権威主義的なアベノミクスを策定した当事者のもつ

経済認識能力とは

図らずも一致する

という点で共通するレベル

にあることが証明された


これにより国民が得た損失が確定し

当事者である政権与党は

責任を取らないまま

またしても

総選挙でみそぎをした

ということになるだろう


国民の不幸は

まさしく

国会の不明

にある

国の不首尾は

国会の成員すべてを対象として

与野党の違いを超えて

平等に存する


無知を恥じる選良が

これまでに一人でもいたのであれば

国の現況は

間違いなく

大きく異なったもの

となっていた
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