イノチを胎内に宿し
それを慈しみ
育んできたこの惑星は
137億年以上の光学的広がりをもつ
宇宙空間に
ただ一つしかない稀有な存在として
異彩を放っている
この美しく青く輝く小さな星では
大きな変化が
いま引き起こされようとしている
銀河系の片隅に近いところにある
太陽系のそのなかで
恒星との距離と
自身がもつ質量との釣り合いが
地球を水の惑星と呼ばせている
太陽系第三惑星がもっと大きくて
そして重いものであったとしたら
生命はより強い重力の作用を受け
それに耐えるための頑丈な骨格からなる肉体をもち
高い気圧に地表へ押し付けられて暮さなければならなかった
跳躍することはできず
直立することさえも困難
移動は匍匐前進
というイモムシさながらの生活を
余儀なくされていただろう
大気圧が今の二倍の1cm当たり2kgになったら
その圧力は乗用車のタイヤの内部と同じ状態になる
月は二倍になった地球の引力に逆らえず
落下して合体し
地球の体積を増やしていた
月のない海は干満の差を見せず
のっぺりとした海面に波はあっても
水位の変化は見られない
太陽と地球との感覚は狭まり
地表の温度はもっとずっと高まっていた
惑星系の条件が変わっていただけで
地球に生命が誕生する確率は低下する
軌道がもっと外側にあれば
地球は火星のように
凍った星になっていた
反対に内側に位置していたら
金星のように水は蒸発し
消えてなくなっていた
質量が水星ほどに小さかったのであれば
重力は収縮し
雲を大気圏に留めておくことはできなかった
生命は地球以外の惑星に移住することができない
重力の素とされるヒッグス粒子の存在確率は98.9%
発見がなされるのは
もはや時間の問題に過ぎない
超ひも理論が予告していたことが
加速器の中で
人工的に生み出されるときが確実にやってくる
このことは
まだ見出されていない六つの次元を
科学者たちが認めざるを得なくする
そのきっかけとなるだろう
証明することができないものを
受け容れなければならない
これは科学にとって変節にひとしい
現在の科学が確認しているのは
三つの空間軸と
ひとつの時間軸からなる
四軸の時空間
超弦理論は
九つの空間軸とひとつの時間軸という構造で
宇宙が十軸の時空
で成り立っていることを指し示していた
科学者たちはこの数式を前に
大いに頭を悩ませている
見知らぬ六つの次元を処理するために
取り敢えず
4軸の時空間のどこかに
それらは小さく折りたたまれている
ということにした
その段階で未知の空間軸を
余剰次元と呼び習わすようになったのだった
この名称の選択からは
科学者たちが抱いた当惑ぶりが
よく伝わってくる
これまでは証明できない項目を
すべて
非科学的だとして
一律に葬り去ってきた振る舞い方が
これからはできなくなる
ということなのだ
断罪することができないのであれば
曖昧な結論で満足しなければならない
科学とそうでないものとの間にあった
境界領域を扱う分野が
これからは
未来の科学を牽引していくことになるだろう
最先端の科学者たちがたどり着いたその場所には
既に信仰者がたどり着いていた痕跡が残されていた
量子力学を突き詰めていった先の頂上には
同じ内容を記した巻物が
前もって置かれていたのだった
一次元の生命に二次元空間を理解する能力はいらない
三次元空間に住む人類に
それ以上多くの次元を六つも知る必要はなかった
ということなのだ
時間軸がひとつだけという理由はない
前進軸があるとすれば
後退軸もあってよい
余剰次元を導入すると
これまで非科学的だとされていたことのすべてが
合理的に説明できる
謎の一切がメカニズムの一部となって現れる
未知の次元を文明が立証する術はない
検出装置なしで
実体のない時空間を
これからの科学は
率先して体系づけていかなければならない
それを慈しみ
育んできたこの惑星は
137億年以上の光学的広がりをもつ
宇宙空間に
ただ一つしかない稀有な存在として
異彩を放っている
この美しく青く輝く小さな星では
大きな変化が
いま引き起こされようとしている
銀河系の片隅に近いところにある
太陽系のそのなかで
恒星との距離と
自身がもつ質量との釣り合いが
地球を水の惑星と呼ばせている
太陽系第三惑星がもっと大きくて
そして重いものであったとしたら
生命はより強い重力の作用を受け
それに耐えるための頑丈な骨格からなる肉体をもち
高い気圧に地表へ押し付けられて暮さなければならなかった
跳躍することはできず
直立することさえも困難
移動は匍匐前進
というイモムシさながらの生活を
余儀なくされていただろう
大気圧が今の二倍の1cm当たり2kgになったら
その圧力は乗用車のタイヤの内部と同じ状態になる
月は二倍になった地球の引力に逆らえず
落下して合体し
地球の体積を増やしていた
月のない海は干満の差を見せず
のっぺりとした海面に波はあっても
水位の変化は見られない
太陽と地球との感覚は狭まり
地表の温度はもっとずっと高まっていた
惑星系の条件が変わっていただけで
地球に生命が誕生する確率は低下する
軌道がもっと外側にあれば
地球は火星のように
凍った星になっていた
反対に内側に位置していたら
金星のように水は蒸発し
消えてなくなっていた
質量が水星ほどに小さかったのであれば
重力は収縮し
雲を大気圏に留めておくことはできなかった
生命は地球以外の惑星に移住することができない
重力の素とされるヒッグス粒子の存在確率は98.9%
発見がなされるのは
もはや時間の問題に過ぎない
超ひも理論が予告していたことが
加速器の中で
人工的に生み出されるときが確実にやってくる
このことは
まだ見出されていない六つの次元を
科学者たちが認めざるを得なくする
そのきっかけとなるだろう
証明することができないものを
受け容れなければならない
これは科学にとって変節にひとしい
現在の科学が確認しているのは
三つの空間軸と
ひとつの時間軸からなる
四軸の時空間
超弦理論は
九つの空間軸とひとつの時間軸という構造で
宇宙が十軸の時空
で成り立っていることを指し示していた
科学者たちはこの数式を前に
大いに頭を悩ませている
見知らぬ六つの次元を処理するために
取り敢えず
4軸の時空間のどこかに
それらは小さく折りたたまれている
ということにした
その段階で未知の空間軸を
余剰次元と呼び習わすようになったのだった
この名称の選択からは
科学者たちが抱いた当惑ぶりが
よく伝わってくる
これまでは証明できない項目を
すべて
非科学的だとして
一律に葬り去ってきた振る舞い方が
これからはできなくなる
ということなのだ
断罪することができないのであれば
曖昧な結論で満足しなければならない
科学とそうでないものとの間にあった
境界領域を扱う分野が
これからは
未来の科学を牽引していくことになるだろう
最先端の科学者たちがたどり着いたその場所には
既に信仰者がたどり着いていた痕跡が残されていた
量子力学を突き詰めていった先の頂上には
同じ内容を記した巻物が
前もって置かれていたのだった
一次元の生命に二次元空間を理解する能力はいらない
三次元空間に住む人類に
それ以上多くの次元を六つも知る必要はなかった
ということなのだ
時間軸がひとつだけという理由はない
前進軸があるとすれば
後退軸もあってよい
余剰次元を導入すると
これまで非科学的だとされていたことのすべてが
合理的に説明できる
謎の一切がメカニズムの一部となって現れる
未知の次元を文明が立証する術はない
検出装置なしで
実体のない時空間を
これからの科学は
率先して体系づけていかなければならない