青空、ひとりきり

鉄路と旅と温泉と。日々の情景の中を走る地方私鉄を追い掛けています。

居住まいを 正す背中の 凛と倫。

2021年08月11日 17時00分00秒 | 上信電鉄

(礼を尽くす@上州福島駅)

上信電鉄は、地方私鉄の割にはそこまで無人化が進んでおらず、終日ではないものの駅員が勤務する駅がそれなりに残っています。構内踏切の向こう。駅を出る電車に、丁寧な挨拶をする上州福島駅の女性駅員さん。どれほどの人が見ているか、クーラーの効いた車内から、そもそも乗客の目に映っているか。制服仕事らしい凛とした所作。猛暑の午後を、少しだけ爽やかな風が吹き抜けました。

木造平屋建ての上州福島駅。上州福島は甘楽郡甘楽町の中心駅で、上品な車寄せの形といい、街の玄関口としての風格がそこはかとなく感じられる駅舎。駅の真横にこんにゃくゼリーで有名な「マンナンライフ」の甘楽工場があって、それこそ駅の前から蒟蒻畑という感じでしょうか。こんにゃくゼリーの類、かつては弾力があり過ぎて誤飲による窒息が社会問題化した事がありましたが、罪悪感の少ないヘルシー系の食い物で女性を中心に根強い人気があります。自分も一時期凄く好きで、フリーザーで蒟蒻畑を凍らして食べるの大好きだったなあ。あ、そうそう。何年か前まで上信電鉄のラッピング電車と言えばマンナンライフの印象が強くて、蒟蒻畑とかララクラッシュとかの全面広告で走ってましたよね。上信の沿線では一番の有名企業だと思うんだけど、最近広告は出してないのかな。そーいやマンナンライフ、あんだけやってたTVCMも最近あまり見なくなってしまったような・・・?方針転換?(調べたら、西武新101系がマンナンライフラッピングで1編成あるそうです。失礼しました)

甘楽町には、徳川家康の娘を娶った奥平氏の城下町として栄えた小幡の街並みがありますが、駅からはやや遠く、行くならレンタサイクルかタクシーを使うしかない。時間があったらチャリンコを借りて城下町や沿線をキコキコしてもいいかなって思ったけど、暑過ぎて流石にパス。駅の構内側線に転がっているクハ304とテムを眺めて無為に時間を潰す。クハ304、貴重な自社発注車200形の末裔なのでせめて塗り直すくらいやっとけばいいのに・・・なんてぼんやり眺めてたんだけど、私が訪問したすぐ後に高崎に送られて解体されてしまったらしい。南無。

マンナンライフの甘楽工場をバックに、上州福島駅に滑り込む緑ツートン。これまた女性駅員氏が丁寧なお辞儀で迎えた。今の世の中コスパ優先で商売の仁義も何もなくなり、モンスターカスタマーが増え、いちいち丁寧に客の相手をする方がバカを見る時代である。店も客を選ぶ権利があり、客と従業員は対等だ!という意見が優勢になりつつあって、それはそう・・・と納得はしてしまうのだけど、商売の入口としてまず礼を尽くす事の倫理に、思わず居住まいを正してしまう。そんな上州福島駅の昼下がりなのでありました。

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