司法書士内藤卓のLEAGALBLOG

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株式会社の監査役の補欠規定の適用の有無

2013-05-08 11:32:17 | 会社法(改正商法等)
 最近なぜか質問が相次いだので・・・。


 監査役設置会社の定款には,いわゆる補欠規定を設けているのが通例である。

 よって,監査役が任期の途中で辞任等により退任し,後任者を選任するときには,この補欠規定の適用の有無が問題となる。

 平成17年改正前商法下においては,1名又は2名以上の監査役の全員が退任する場合には,定款の補欠規定の適用はないものと解されていたが,会社法下においては,解釈が変更され,このようなケースにおいても適用があるものとされた。

cf. 平成18年6月30日付け「株式会社の監査役の補欠規定の適用の有無」

 したがって,任期満了による改選又は増員により就任する場合を除き,監査役が就任する際には,その任期に関して定款の補欠規定を適用するか否かを株式会社は選択する必要がある。

 例えば,監査役が1名の株式会社において,当該監査役が任期の途中で辞任し,後任者を選任するからといって,後任の監査役の任期について,無条件に補欠規定が適用されるわけではない。株式会社が補欠規定の適用を選択しない限り,原則どおり,会社法又は定款で定めた4年等の任期となるからである。

 したがって,後任の監査役を選任する際には,原則どおりの任期とするか,補欠規定を適用し,前任者の任期の残存期間に留めるのかを選択する必要があるのである。

 株式会社と監査役の関係は,委任関係であるから,委任契約の内容として「任期はいつまで」を合意するのは,本来当然のことである。

 委任契約書をわざわざ作成しないまでも,株主総会議事録又は就任承諾書の内容として,「補欠」として選任する場合には,その旨を記載しておくべきであろう。

 中小企業においても,監査役について,取締役の改選時に合わせて改選したいというニーズは強く,途中交替により改選の時期がずれることになるのは歓迎されないであろうから,選任の時点で適切な対応をとっておくべきである。

【議事録記載例】
 議長は,本議案を上程し,監査役△△△から辞任届が提出されたので,新たに監査役1名を選任したい旨,及び後任者は,前任者の補欠として選任されるものである旨,並びにその候補者は下記の者である旨を説明,審議を求めた。慎重審議の後,議長は,本議案の賛否を議場に諮り,総会は,満場一致原案どおりこれを承認可決した。


 また,後任監査役が補欠規定の適用により任期満了となる場合には,定時株主総会議事録が退任を証する書面となるので,議事録の記載にも注意すべきである。

【議事録記載例】
・・・本定時株主総会終結の時をもって,定款第○条第○項の規定により監査役(監査役○○○は,前任者の補欠として選任されたものである。)が任期満了となるので,新たに監査役1名を選任したい旨・・・


 選任の時点で「任期はいつまで」を意識していない株式会社においては,監査役の任期の満了時点を誤解して,改選時期を徒過したり,逆に改選期でもないのに改選しようとしたり,という事例がまま見受けられるようである。

 選任の時点で,「任期はいつまで」を確認するようにすべきである。


 司法書士として登記記録をみる場合も,「重任」ではなく,「就任」とあり,前任の監査役が辞任等により任期の途中で退任したために交替しているケースは,要注意ということになる。就任して未だ数か月であるからといって安心せず,定款の補欠規定の適用がある監査役であるのか否かを必ず確認するようにすべきである。
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