司法書士内藤卓のLEAGALBLOG

会社法及び商業登記に関する話題を中心に,消費者問題,司法書士,京都に関する話題等々を取り上げています。

司法書士もマネー・ローンダリング等の防止のための取組が求められる

2018-10-28 17:23:30 | いろいろ
警察庁「平成29年犯罪収益移転危険度調査書」
https://www.npa.go.jp/sosikihanzai/jafic/nenzihokoku/risk/risk291130.pdf
※ 49頁~51頁

「このように、法律・会計専門家は、法律、会計等に関する高度の専門的知識を活かし、様々な取引行為に関与するとともに、高い社会的信用を得ている。一方で、犯罪による収益の移転を企図する者にとって、法律・会計専門家は、その目的に適った財産の管理又は処分を行う上で必要な法律・会計上の専門的知識を有するとともに、その社会的信用が高いため、法律・会計専門家を取引や財産の管理に介在させることにより、これに正当性があるかのような外観を作出することが可能になる。
 また、FATF等は、銀行等に対するマネー・ローンダリング等に係る規制が効果的に実施されるに伴い、マネー・ローンダリング等を企図する者は、銀行等を通じたマネー・ローンダリング等に代えて、法律・会計専門家から専門的な助言を得、又は社会的信用のある法律・会計専門家を取引行為に介在させるなどし、マネー・ローンダリング等を敢行するようになってきたことを指摘している。」


ウ 危険度
 法律・会計専門家は、法律、会計等に関する高度な専門的知識を有するとともに、社会的信用が高いことから、その職務や関連する事務を通じた取引等は犯罪による収益の移転の有効な手段となり得る。実際、犯罪による収益の隠匿行為等を正当な取引であると仮装するために、法律・会計関係サービスを利用していた事例があること等から、法律・会計専門家が、以下の行為の代理又は代行を行うに当たっては、犯罪による収益の移転に悪用される危険性があると認められる。

○ 宅地又は建物の売買に関する行為又は手続
 不動産は、財産的な価値が高く、多額の現金との交換を容易に行うことができるほか、その価値が容易に減損しない。また、土地ごとの利用価値や利用方法等について様々な評価をすることができるため、財産的価値の把握が困難であり、通常の価格に金額を上乗せして対価を支払うことにより犯罪による収益の移転に悪用される危険性がある。さらに、その売買に当たっては、境界の確定、所有権の移転登記等、煩雑かつ専門的知識を必要とする手続を経なくてはならず、これらの知識や社会的信用を有する法律・会計専門家を利用してこれらの手続を行うことにより、より容易に犯罪による収益を移転することが可能となる。

○ 会社等の設立又は合併等に関する行為又は手続
 会社その他の法人、組合又は信託は、出資者等とは独立した財産が形成されるものであり、これらは、例えば、多額の財産の移動を事業名目で行うことを可能とするなど、財産の真の帰属や由来を仮装することを容易にするものであることから、犯罪による収益の移転に悪用される危険性がある。また、法律・会計専門家は会社等の組織、運営及び管理に必要な専門知識のほか、社会的信用も有していることから、法律・会計専門家を利用して会社の設立等に関する行為又は手続を行うことにより、より容易に犯罪による収益を移転することが可能となる。

○ 現金、預金、有価証券その他の財産の管理又は処分
 法律・会計専門家は、財産の保管や売却、当該財産を原資とした他の財産の購入等を行う上で必要な専門的知識及び有用な社会的信用を有しており、法律・会計専門家を利用して財産の管理又は処分を行うことにより、より容易に犯罪による収益を移転することが可能となる。
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