相続が開始した日が原則施行日(令和元年7月1日)以降である場合に,遺留分侵害額請求権が行使されると,この請求権は金銭債権であるから,仮に遺贈又は贈与された物が不動産である場合に,受贈者等と権利行使者の合意により不動産を引き渡す場合であっても,これは「代物弁済」(民法第482条)となる。
改正後の民法においては,例外はなく,金銭請求とこれに対する金銭支払のみであるから,合意により現物を返還するとしても,法的には代物弁済契約という別個の契約に基づく履行行為となる。
cf.
平成30年9月21日付け「遺留分侵害額請求権と経過措置」
したがって,この場合には,譲渡所得税が課税されることとなるようである。
cf. 譲渡所得の対象となる資産と課税方法
https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/joto/3105.htm
国税庁の「所得税基本通達について」(法令解釈通達)も次のとおり改正(新設)されている。
http://www.nta.go.jp/law/tsutatsu/kobetsu/shotoku/sochiho/kaisei/190628/pdf/05.pdf
法第33条「譲渡所得」関係
(遺留分侵害額の請求に基づく金銭の支払に代えて行う資産の移転)
33-1の6 民法第1046条第1項《遺留分侵害額の請求》の規定による遺留分侵害額に相当する金銭の支払請求があった場合において、金銭の支払に代えて、その債務の全部又は一部の履行として資産(当該遣留分侵害額に相当する金銭の支払請求の基因となった遺贈又は贈与により取得したものを含む。)の移転があったときは、その履行をした者は、原則として、その履行があった時においてその履行により消滅した債務の額に相当する価額により当該資産を譲渡したこととなる。
(注)当該遺留分侵害額に相当する金銭の支払請求をした者が取得した資産の取得費については、38-7の2参照
なお,遺留分減殺請求と遺留分侵害額請求の経過措置に関して,特段の規定は設けられていない。したがって,原則施行日前に開始した相続については,原則施行日以後も従来どおり遺留分減殺請求の手続によることになる(改正附則第2条)。