◆法華経と観音信仰
天台宗の根本経典である法華経は、当時の貴族に最も信じられ、持経は法華経であることが多かった。
法華経は女人の成仏の可能性をも説いている経典であるために、特に女性の信仰を得ていた。
衆生済度のための観世音菩薩は、三毒(貪欲、瞋恚(しんに=怒る)、愚痴)七難(火難、水難、風難、杖難、鬼難、枷鎖難、怨賊難)をのがれ、二求両願(男女子を産む願い)を満足さす。三十三身に化現して、衆生を救う。仏菩薩のうちでもっとも優しいと感じられた観音である。
「源氏物語」では、清水観音、石山観音、初瀬(長谷)観音が描かれ、特に大和の初瀬寺は霊験あらたかとの評判が高く、王朝の貴族階級に人気があり、貴族の女性たちは、ほとんどが皆一度は初瀬に参った。(源氏物語手鏡より)