◆加持・祈祷
日常生活とのつよいつながりを持つのが密教の本質で、たとえば病人や産婦にとりつく物の怪(もののけ)を取り除くために修法、加持、祈祷が行われる。病気を霊怪のせいと考え、それが何の霊と診断し、それを追いだすのが効験ある加持僧の仕事である。法華経を読んで祈祷するのだが、病人にとりついた物の怪を追いだして憑坐(よりまし=霊物に感応しやすい霊媒としての童子、多くは童女)にのり移らせるべく病人を打ったり引いたり、相当手荒なこともする。
当時貴族はそれぞれ特定の祈祷師を持っていた。病気や物の怪などの場合に頼むかかりつけの御祈りの師である。横川の僧都は薫の祈祷師の一人であった。横川の僧都の験はすばらしく、天台座主でもはかばかしくなかった一品の宮の物の怪を直した。
壇を築いて祈るが、三、五、九、十三壇法などがある。五壇の御修法は普通、帝や国家の大事のときに行われるが、五壇を設け、中央に不動、東壇に降三世、西壇に大威徳、南壇に軍茶利夜叉(ぐんだりやしゃ)、北壇に金剛夜叉の各明王を勧請して祈り、護摩を焚いてその火によって罪業を消滅させる。
この密教の本尊が摩訶毘蘆遮那(まかびるしゃな=梵語)であり、これを邦語に訳したのが大日如来である。上下四方、過去、現在、未来といたらざるところなき仏である
(源氏物語手鏡より)
日常生活とのつよいつながりを持つのが密教の本質で、たとえば病人や産婦にとりつく物の怪(もののけ)を取り除くために修法、加持、祈祷が行われる。病気を霊怪のせいと考え、それが何の霊と診断し、それを追いだすのが効験ある加持僧の仕事である。法華経を読んで祈祷するのだが、病人にとりついた物の怪を追いだして憑坐(よりまし=霊物に感応しやすい霊媒としての童子、多くは童女)にのり移らせるべく病人を打ったり引いたり、相当手荒なこともする。
当時貴族はそれぞれ特定の祈祷師を持っていた。病気や物の怪などの場合に頼むかかりつけの御祈りの師である。横川の僧都は薫の祈祷師の一人であった。横川の僧都の験はすばらしく、天台座主でもはかばかしくなかった一品の宮の物の怪を直した。
壇を築いて祈るが、三、五、九、十三壇法などがある。五壇の御修法は普通、帝や国家の大事のときに行われるが、五壇を設け、中央に不動、東壇に降三世、西壇に大威徳、南壇に軍茶利夜叉(ぐんだりやしゃ)、北壇に金剛夜叉の各明王を勧請して祈り、護摩を焚いてその火によって罪業を消滅させる。
この密教の本尊が摩訶毘蘆遮那(まかびるしゃな=梵語)であり、これを邦語に訳したのが大日如来である。上下四方、過去、現在、未来といたらざるところなき仏である
(源氏物語手鏡より)