本試験も予備試験も決戦間近ですが。
本日は日帰りで京都出張でございまする。啓蒙活動頑張ってきますな体です。
210条による通行権と自動車の通行 |
① 210条通行権は,その性質上,他の土地の所有者に不利益を与えることから,その通行が認められる場所及び方法は,210条通行権者のために必要にして,他の土地のために損害が最も少ないものでなければならない(211条1項)。 ↓ ② また、Xらは,徒歩により公道に至ることができることから,本件においては,徒歩による通行を前提とする210条通行権の成否が問題となる余地はなく,本件土地について,自動車の通行を前提とする211条通行権が成立するか否かという点のみが問題となる。 ↓ ③ 自動車による通行を前提とする210条通行権の成否及びその具体的内容は,他の土地について自動車による通行を認める必要性,周辺の土地の状況,自動車による通行を前提とする210条通行権が認められることにより他の土地の所有者が被る不利益等の諸事情を総合考慮して判断すべきである。 |
最判平成18年3月16日 百選70事件
・本件袋地は、一筆の土地の分割により生じたものではないので、「213条通行権」の成否は問題にならない。
・本件では袋地所有者のXらは、徒歩では公道に出られても、自動車では出ることができず、自動車通行の点で袋地と評価されている(相対的袋地)。通行権は、袋地の効用を全うさせるために認められたものなので、既存の通路があっても、当該土地の用途に応じた利用にとって既存道路では不適切な場合には、当該土地は「袋地」であるとして、別の通路の開設や既存道路の拡張が認められるべきなのである。すなわち、袋地かどうかということと通行の方法場所をどうするかが同時に考慮されるのである。
・210条通行権の成否・内容は、211条1項の要請を踏まえ、袋地利用者の通行の必要度、囲繞地利用者の被害の程度、付近の地理的状況、その他の諸事情を総合考慮して判断される。
→ 一般に、過去に自動車通行の事実がない事案では、自動車通行権は否定されやすい。逆に過去に自動車通行の事実がある事案では、従来通りの自動車通行権が認められることが多い。裁判例は現状維持的な判断になりやすいようである。
・本判例は、一般的基準に加え、本件で考慮すべき事情をもあげている。すなわち、「自動車に通行を認める必要性」判断において、Xらが墓地の経営を予定していること、「周辺土地の状況」として、土地の形状から別の既存道路では軽自動車でも通行が困難であること、以前は、本件道路は自動車通行のために事実上利用されてきた経緯があること(囲繞地所有者Yらが、本件道路を歩行者専用道路に変更し、入口にポールをおいて自動車では通行できないようにした)、「他の土地の所有者が被る不利益」については、本件土地が緑地の北西端に位置するわずか20平方メートル程度でしかないこと、などが考慮されている。
・本件の争いは、実は墓地経営当の許可申請を巡るXYらの争いの蒸し返しである、というのも無視できない事情である(県知事が墓地経営の不許可処分→不許可処分を取り消す判決が出る→許可処分が出る、という経緯を辿っている)。
・差戻審では、近隣道路の渋滞の可能性や交通事故の危険性等、周辺住民の不利益をも考慮しているが、ここでは、袋地・囲繞地の所有者の利益を超えた、公共的な観点も含まれているといえよう。
・公道に2メートル隣接する甲土地の所有者Aが、事業拡張のため既存建物の増築をしようとしたが、建築基準法の関係から道路に3メートル接しない以上建築確認がおりない、といった事案において、隣地所有者のBに対して隣地通行権の確認を求めた事案において、最高裁は甲地は「袋地」ではない、として隣地通行権を認めなかった(最判昭和37年3月15日)最高裁は、Aが通行権を求める根拠は、「土地利用についての往来通行に必要欠くことができないからというのではなく、増築をするために必要というに過ぎないから、隣地通行権の問題ではない」と述べている。
→ 隣地通行権は、通行地所有者の所有権を制限することになるので、隣接する土地の利用に関する個人的便益の調整の必要があるだけで認めるべきものではなく、重大な社会的損失を避けるためにこそ認められるものと考えられるからである。
占有の訴えに対する本権に基づく反訴 |
202条2項は、占有の訴において本権に関する理由に基づいて裁判することを禁ずるものであり、従って、占有の訴に対し防禦方法として本権の主張をなすことは許されないけれども、これに対し本権に基づく反訴を提起することは、右法条の禁ずるところではない。 |
最判昭和40年3月4日 百選68事件
分筆後袋地を売却した場合の公道に至る通行権 |
共有物の分割又は土地の一部譲渡によって公路に通じない土地(以下「袋地」という。)を生じた場合には、袋地の所有者は、民法二一三条に基づき、これを囲繞する土地のうち、他の分割者の所有地又は土地の一部の譲渡人若しくは譲受人の所有地(以下、これらの囲繞地を「残余地」という。)についてのみ通行権を有するが、同条の規定する囲繞地通行権は、残余地について特定承継が生じた場合にも消滅するものではなく、袋地所有者は、民法二一〇条に基づき残余地以外の囲繞地を通行しうるものではないと解するのが相当である。けだし、民法二〇九条以下の相隣関係に関する規定は、土地の利用の調整を目的とするものであって、対人的な関係を定めたものではなく、同法二一三条の規定する囲繞地通行権も、袋地に付着した物権的権利で、残余地自体に課せられた物権的負担と解すべきものであるからである |
最判平成2年11月20日 百選69事件
・袋地の所有者は、「公道に至るための他の土地の通行権」を有する(囲繞地通行権)。この客観的袋地状態に起因する法定通行権は有償である(212条)。これに対して、土地の一部譲渡・共有地の分割(任意行為)により袋地が形成された場合は、囲繞地通行権は残余地にしか認められない(213条1項)。しかも無償である(譲渡行為時に通行権料の問題も処理されていると言えるので)
・袋地の特定承継人が無償通行権を残余地の所有者に主張できるのはもちろんこと、残余地の特定承継人に無償通行権の受忍義務を肯定するのが判例である。これにより
不都合が生じる場合には、無償通行権の主張を権利濫用、信義則等で処理すればよい(従来無償通行の事実がなかった、通行に関する折衝もなかったような事例で突然無償通行権を主張しだすような事例)。
192条 即時取得
即時取得 → 原始取得 → 負担0の綺麗な権利を取得!?
【例1】
BがAに依頼して,甲動産を修理し,10万円の代金債権を取得。甲の真の所有者はCであるが,AはBが所有者であると信じていた。BがDに甲動産を売却し,その旨をAに通知した。DはBが真の所有者であると無過失で信じていた。その後,Dが甲を即時取得したとしてAに甲の返還を求めた。Aは代金債権の支払を受けていないとして,留置権を行使できるのだろうか。 |
【例2】
YはZに対する10万円の債権担保として乙動産に質権の設定を受けた。乙の真の所有者はSである。Yは乙の引渡しを受けた当時,Zが所有者であると無過失で信じていた。ZがXに乙を売却し,その旨をYに通知。XはZが乙の所有者であると無過失で信じていた。Xが乙を即時取得したとしてYに乙の返還を求めた。Yは質権の存在を主張できるのだろうか。 |
即時取得は原始取得と言うことで・・・。
→ 例1では,Dが即時取得したことにより,Aの甲上の留置権は消滅するのか。
→ 例2では,Xが乙を即時取得したことにより,Yの乙上の質権は消滅するのか。
・例1で,Dは,Bの間接占有を信頼して,取引関係に入ったことになる。この信頼(=Bが所有者であるとの信頼)を保護するのが,即時取得である。では,仮にDが信じたとおりに,Bが真の所有者であったとしたらどうなるか。DはAの留置権の負担付きで甲の所有権を取得することになるはずである。にもかかわらず,留置権の負担の無い所有権を取得できるとすると,Dの信頼した以上の保護を与えることになる。また,Aも甲の直接占有は失っていないので,Aに不利益負担の根拠があるとも言えない。したがって,Dの即時取得により,Cは甲の所有権を失うが,Aは甲に対する留置権は失わないと解すべきであろう(佐久間)。
・例2では,まずYが動産質権を即時取得することの確認を忘れないこと。例2では,Yは動産質権を,Xは動産の所有権をそれぞれ即時取得するのである。例1と同様に,仮にZが真の所有者とした場合でも,Xは動産質権の負担付の所有権を取得するに過ぎない。にもかかわらず,即時取得したことにより,動産質権の負担が取れてしまうとなると,Xの信頼以上に保護することになる。そして,Yは直接占有を失ってはいないので不利益負担の根拠もない。従って,Xの即時取得によりSは乙の所有権を失うが,Yは乙に対する動産質権は失わないと解すべきであろう。
194条に該当する善意占有者の使用収益権 |
① 盗品又は遺失物(以下「盗品等」という)の被害者又は遺失主(以下「被害者等」という)が盗品等の占有者に対してその物の回復を求めたのに対し、占有者が194条に基づき支払った代価の弁償があるまで盗品等の引渡しを拒むことができる場合には、占有者は、右弁償の提供があるまで盗品等の使用収益を行う権限を有すると解するのが相当である。 ↓ ② けだし、194条は、盗品等を競売若しくは公の市場において又はその物と同種の物を販売する商人から買い受けた占有者が192条所定の要件を備えるときは、被害者等は占有者が支払った代価を弁償しなければその物を回復することができないとすることによって、占有者と被害者等との保護の均衡を図った規定である。 ↓ ③ 被害者等の回復請求に対し占有者が194条に基づき盗品等の引渡しを拒む場合には、被害者等は、代価を弁償して盗品等を回復するか、盗品等の回復をあきらめるかを選択することができるのに対し、占有者は、被害者等が盗品等の回復をあきらめた場合には盗品等の所有者として占有取得後の使用利益を享受し得ると解されるのに、被害者等が代価の弁償を選択した場合には代価弁償以前の使用利益を喪失するというのでは、占有者の地位が不安定になること甚だしく、両者の保護の均衡を図った同条の趣旨に反する結果となるからである。また、弁償される代価には利息は含まれないと解されるところ、それとの均衡上占有者の使用収益を認めることが両者の公平に適うというべきである。 |
最判平成12年6月27日 百選67事件
・①占有者が占有中に受けた動産の使用利益は誰に、また、どの期間分が帰属すべきか(回復の訴え提起後は、占有者は被害者等に使用利益相当額を支払うべきか、という問題でもある)、②被害者等から代価弁償を受けることなく占有者が動産を返還した後であっても、占有者はなお代価弁償を請求できるか、またその履行遅滞となる時点はいつか、が争点となった。
・193条・194条に基づき善意・無過失の占有者から盗品等の回復をするまでの間、その動産の所有権は原所有者に残っているのか占有者に移転しているのかという問題がある。
原所有者帰属説 |
本権者が無権利者からの転得者(占有者)に対して、動産の占有を回復する関係として処理される。 → 使用利益の返還については、703条・704条または189条以下の適用の問題となるが、契約の巻き戻しの関係ではないので、189条以下の処理によるというのが一般。
→ 善意占有者は使用利益を取得できるが、回復の訴え提起後は悪意占有者として返還が義務付けられる(189条2項・190条1項) |
占有者帰属説 |
占有者は返還するまでは、所有者として使用利益を取得する。 |
・本判決は、占有者の使用収益権を認めており、占有者帰属説から説明しやすい。しかし、所有権の所在につき全く触れていない。占有者の使用収益権の根拠を、所有権の所在ではなく、194条の立法趣旨に求めている(被害者等と占有者の保護の均衡を、動産の回復は認めるが、代価弁償をさせることで図ろうとしている)。
・占有者の使用収益権の根拠を194条に求めるのであれば、193条においては、動産の回収の訴えの提起後は占有者は使用利益の返還を義務付けられよう。
・代価弁償の法的性質
→ 請求権として考える(先に占有者側から、動産を返還するから代価を支払え、という請求ができるわけではない)
→ 代価弁償債務はいつから履行遅滞になるのか。本判決は、期限の定めのない債務とし、占有者側から履行の請求を受けたときから遅滞の責めを負うべき(412条3項)とした。本件においては、反訴提起時に遅滞になるのではなく、当初から本訴における抗弁として代価支払請求をしていたとして、履行遅滞の時期を原審の認定時よりも前倒しにした。
前主の無過失と10年の取得時効 |
① 10年の取得時効の要件としての占有者の善意・無過失の存否については占有開始の時点においてこれを判定すべきものとする162条2項の規定は、時効期間を通じて占有主体に変更がなく同一人により継続された占有が主張される場合について適用されるだけではなく、占有主体に変更があって承継された2個以上の占有が併せて主張される場合についてもまた適用されるものであり、後の場合にはその主張にかかる最初の占有者につきその占有開始の時点においてこれを判定すれば足りるものと解するのが相当である。 |
最判昭和53年3月6日 百選65事件
・承継人には、特定承継人はもちろん、包括承継人も含まれる。また承継人に先立つ全ての占有者が含まれる。
・判例によると、所有者の占有をも併せて主張できるが、問題はないか。
→ Zが売買により取得した甲土地を19年間占有し、これをYに売却。ところが3ヶ月後にYの詐欺を理由に、売買契約を取り消し、即時にXに甲土地を売却し登記も移転したとする。そして1年後にXがYに対して甲土地の明渡しを求めた場合、どうなるか、という問題である。この場合、所有権に基づいて占有していたZの占有も併せてYは主張できるとすると、XはYとの関係では、時効完成前の第三者として扱われるので、1年しか占有していないYが登記なくしてXに土地所有権を対抗できてしまうのである。
占有改定・指図による占有移転と即時取得 |
① 無権利者から動産の譲渡を受けた場合において、譲受人が192条によりその所有権を取得しうるためには、一般外観上従来の占有状態に変更を生ずるがごとき占有を取得することを要し、かかる状態に一般外観上変更を来たさないいわゆる占有改定の方法による取得をもつては足らない。 |
最判昭和35年2月11日 百選66事件
・即時取得における「占有」の承継取得は、現実の引渡しに限るのかどうかという問題である。
→ 肯定説、否定説(判例)、折衷説(否定説に近い)が対立する。即時取得の善意無過失の判断時期が、否定説では現実の引渡しがなされたとき、折衷説では占有改定時という違いがある。
・指図による占有移転
肯定説が有力。所持こそ動かないが、原所有者の信頼は形の上でも裏切られていること、受託者が現に所持しておらず第三者たる所持人に対する命令を必要とするこおt、などがその理由である。しかし、原所有者の信頼が形の上で裏切られていない場合もあるし、上記の命令は原所有者にとって認識可能性は小さい。
→ ①原所有者Xからの占有受託者Aが、Bに占有を委託してYに指図による占有移転で譲渡した場合と、②原所有者Xからの占有受託者AがBに占有改定による譲渡をし、Bが更にYに譲渡し、Aに指図することによってYに占有移転する場合、とがある。
→ ①ではAは占有を失い、Aを媒介とするXの占有も完全に切断されるから即時取得を認め、②ではBとYが後退するだけだから占有改定による場合と同様に扱うこととされる。判例も②のケースにおいては即時取得を否定している。
本試験本番間近ということは。今年も応援ツアーの季節ですね。ということで。
11日 東京 12日 大阪会場 14日 東京 15日 東京
という感じで、昨年に続き、今年も大阪会場にも顔を出しに行きます。
9日は日帰り関西、11日12日関西。何この効率の悪さwww
今日の「よしにゅー」生放送、やりきってきました!基本3人でトーク1時間なので、生放送は緊張度が違いますねぇ。やはり芸人さんのトーク力は凄いです。その場その場でいかに話を膨らませているかが分かりました。勉強になります。残り時間を見ながら、スタッフの指示を見ながら、何をどう話すか、急なツッコミにどう対応するか。普段使わない頭の使い方なので、疲労感が凄いっす。終わった時は、高揚感があったのですが、帰路につくあたりで疲れがドッっと出てまいりました。笑
明日は論文対策講義「憲法」の収録3日目です。かなりの手応えを感じています。この講座は、本試験受験生がL2対策として受けることも意識して、アレンジ問題を提示・検討したり、予備試験段階と本試験段階で出題された場合の違いは何か、などをなるべく具体的に言及するようにしています。憲法では、「この問題はどの判例を意識するべきか」、という点をかなり強調しています。
しかし旧司法試験の問題は本当に勉強になります。講義をするたびに感じますが、やはりクオリティが違います。もちろん、最年少合格者の答案はキレっキレですので、この点が楽しみな方、ご期待下さいね。
さて、本試験も予備試験短答式試験ももう目の前です!凹んでる暇があるなら、勉強です!
相続と185条に言う「新たな権原」 |
① 他主占有者の相続人が独自の占有に基づく取得時効の成立を主張する場合において、右占有が所有の意思に基づくものであるといい得るためには、取得時効の成立を争う相手方ではなく、占有者である当該相続人において、その事実的支配が外形的客観的にみて独自の所有の意思に基づくものと解される事情を自ら証明すべきものと解するのが相当である。 ↓ ② 相続人が新たな事実的支配を開始したことによって、従来の占有の性質が変更されたものであるから、右変更の事実は取得時効の成立を主張する者において立証を要するものと解すべきであり、また、この場合には、相続人の所有の意思の有無を相続という占有取得原因事実によって決することはできないからである。 |
最判平成8年11月12日 百選64事件
・取得時効は、「所有の意思」をもってする占有(=自主占有)でなければ成立しない(162条)。そして「所有の意思」は占有を生じさせた原因たる事実の性質により客観的に決まる。そこで、他主占有者が死亡して相続人が占有を続けた場合、相続人は自主占有者足りえないのか。なるとすれば、その要件は何かが問題となる。具体的には、185条と186条1項が問題となる。
・他主占有は、①「所有の意思があることを表示したとき」、②「新たな権原により更に所有の意思をもって占有を始める」場合に自主占有に変わる(185条)そこで、他主占有者の相続人が所有の意思をもって占有を始めると、「新たな権原」による自主占有になるのかが問題となる。
・占有を相続により承継したばかりではなく、新たに本件土地建物を事実上支配することによりこれに対する占有を開始した場合において、相続人に所有の意思があると認められる場合には、相続人は被相続人の死亡後、185条にいう「新たな権原により」当該不動産の自主占有をするに至ったものと解しうる、というのが判例である。「相続は新権原にあたる」という単純な話ではないので注意。
→ 相続も権利取得原因の一原因だから占有の性質を変更させる新たな取得原因の一つであり、相続人が所有の意思をもって遺産の占有を始めたときは、固有の自主占有取得し、自己の占有を主張できる(単純肯定説)
→ 相続は新権原ではないが、相続によって客観的権利関係に変更が生じたときは、新権原になると見るべき場合もある(我妻)
→ 相続は新権原ではないが、相続人固有の占有が客観的態様の変更によって185条前段の意思の表示に当たるときはそれによる自主占有への転換が生じる
・本判決は、他主占有者の相続人の占有には、そもそも186条1項の推定は働かないと考え、相続人側でその独自の占有が所有の意思に基づくものと解すべき事情を証明しなければならないとした。相手方は、「他主占有事情」に相当する事実を、積極否認または間接反証として提示することになる。
・本判決は、①相続により承継した占有と②事実的支配による独自の占有とを区別するが、両者の関係はどういうものなのか。②は「相続自体による」というよりは、「相続を契機とする」占有であり、①の影響を受けると同時に、所持の新たな主体の表明を始めとする変化を原所有者側に表示する機能を持つといえよう。
明認方法 |
① 明認方法は、立木に関する法律の適用を受けない立木の物権変動の公示方法として是認されているものであるから、それは、登記に代るものとして第三者が容易に所有権を認識することができる手段で、しかも、第三者が利害関係を取得する当時にもそれだけの効果をもつて存在するものでなければならない。 ↓ ② 従って、たとい権利の変動の際一旦明認方法が行われたとしても問題の生じた当時消失その他の事由で右にいう公示として働きをなさなくなっているとすれば明認方法ありとして当該第三者に対抗できないものといわなければならない |
最判昭和36年5月4日 百選62事件
・登記が何らかの原因でその存在を失った場合に、対効力も失われるのかどうかは争いがある。判例は、登記官の過誤や第三者の申請によって登記が不法に抹消されても対効力は消滅しないとする。
→ 登記抹消の不利益を権利者に負わせるべき事情が無いからである。逆に抹消による不利益を権利者に負わせるべき特別の事情があるときは、対効力は消滅する都会すべきであるところ(最判昭和42年9月1日)、明認方法が歳月と共に消失する可能性のあることに鑑みて、それに対処する措置を講じなかった権利者に消失による不利益を負わせる解釈をした、ということになろう。
・明認方法が消滅した場合は、登記消滅の場合と異なり、その効果は単に対抗要件を失うにとどまらない点に留意する。樹木の集団はそれ自体土地の一部である。立木登記や明認方法によって初めて独立の不動産となる。したがって、これらの公示方法が消滅すると原則に戻って独立性を失い、土地の一部に逆戻りする。その結果、立木に成立して居た所有権も附合(242条)により、消滅することになるのである(通常の不動産ではこのような事は起きず、単に権利変動の対抗力を喪失するだけの効果しかないのである)。
占有 法人の代表機関 |
① Yは訴外A造船株式会社の代表取締役であって同会社の代表機関として本件土地を占有しているというのであるから、本件土地の占有者はAであつてYは訴外会社の機関としてこれを所持するに止まり、したがつてこの関係においては本件土地の直接占有者はAであつてYは直接占有者ではないものといわなければならない。 ↓ ② なお、もしYが本件土地を単にAの機関として所持するに止まらずY個人のためにも所持するものと認めるべき特別の事情があれば、Yは直接占有者たる地位をも有するから、本件請求は理由があることとなるが、右特別の事情は原判決の確定しないところである。 |
最判昭和32年2月15日 百選63事件
・法人実在説からは、法人の機関の行為を法人自身の行為として認めるので、法人の機関が法人を代表して物を所持している場合は、その物の直接占有者は法人と解すべきことになる(機関は占有補助者になるので物権的請求権の被告適格を有しない)。
・「特別の事情」として調査官は、「代表者が地上建物に家族と共に居住しているような場合」をあげている。この場合は、「機関個人の生活利益がある場合」と評価できよう。
本日6日は、17時から18時まで「よしッ!もっと分かったニュース」に解説者として生出演します。ひかりテレビをご覧になられる方は、暇つぶしに見てやってください。生放送は初めてなので、緊張しますね!
178条の引渡し 占有改定 |
① 売渡担保契約がなされ債務者が引き続き担保物件を占有している場合には、債務者は占有の改定により爾後債権者のために占有するものであり、従って債権者はこれによって占有権を取得するものであると解すべきである。 ↓ ② 上告人は昭和26年3月18日の売渡担保契約により本件物件につき所有権と共に間接占有権を取得しその引渡を受けたことにより、その所有権の取得を以て第三者である被上告人に対抗することができるようになったものといわなければならない。 |
最判昭和30年6月2日 百選60事件
・①動産譲渡担保権が設定され、目的物がそのまま設定者の手元に残された場合には、占有改定が行われたものとみることができること、②動産譲渡担保権が設定された場合の対抗要件としては占有改定で足りること、という判断を示した。
→ 設定者は他面において、「将来債務不履行の場合に債権者に交付するがため債権者を代理してこれを占有するものである」というのが大審院の判例である。
178条の第三者 受寄者 |
Yが本件動産をBに売り渡し即時その引渡をなすとともに、同人の寄託によりこれを保管しているものであること、Bは同年五月右物件をXに売り渡したがその引渡は行われなかつたことをそれぞれ確定し、Xの所有権に基く右動産の引渡請求を認容したものである。右事実によれは、YはXに本件物件を譲渡した訴外Bに代って一時右物件を保管するに過ぎないものであつて、かかる者は右譲渡を否認するに付き正当の利害関係を有するものということは出来ない。従って民法178条にいう第三者に該当しない |
最判昭和29年8月31日 百選61事件
・動産を寄託していた者から所有権の移転を受けた者が、受寄者に対し当該不動産の引渡しを請求するために対抗要件を備えていることを要しない、という命題を示した。
・AがBの所有する絵画を所持していたが、Bは絵画をCに売却したがこれをAには伝えていなかった。Cが所有権に基づいてAに絵画の返還を求めたがこれは認められるか。AがBから絵画を賃借していた場合と、保管を委ねられていた場合とで比較せよ。
→ BがAに対してCへの売却を通知していれば、指図による占有移転によりCは対抗要件を具備したことになる。ところが本件では通知がないため、Cは対抗要件を具備していない。そのため、Aが178条「第三者」に該当するか否かが結論を左右することになるのである。Aが「第三者」に該当すれば、Cの対抗要件具備の欠缺を主張して絵画の返還請求を拒むことができるのである。
→ 判例は、賃借人は178条の「第三者」にあたるが、受寄者は第三者にあたらないとする(大判昭和13年7月9日、本判例)。
<賃借人と受寄者の異同>
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賃借人 |
受寄者 |
当該動産の占有の有無 |
あり |
あり |
新所有者の所有権取得を否定できなければ自身の占有を失うか |
失う |
失う |
占有継続の利益の内容 |
新所有者の所有権取得を否定できれば、旧所有者からの物の返還請求を受けても拒めるので賃借期間は占有の継続が法的権利として保証されている。 |
新所有者の所有権取得を否定できても、旧所有者からの物の返還請求を受ければ契約期間内であっても、返還しなければならない(662条)。物に対する支配権を法的に保証されていない。 |
・占有代理人は譲渡人に対して有していた賃借・寄託等の関係をもって譲受人に対抗しうるか、という問題があるが、今日では新しい所有者に対し従前契約に基づく法律関係の維持継続を主張することはできないと解されている。
・実は、本件は実はY→Bへの第1売買によりYからBへ所有権が移転し、その際Yが寄託を受けて物を保管し、ついでB→Xという第2売買によりBからXへ所有権が移転したという経緯がある。つまりYとXは前主・後主の関係にあり、一般的な理解においても「第三者」に該当しないという処理ができた事例である。そのため、最高裁が大審院以来の態度を踏襲するものかどうかは判然としない面もある。
背信的悪意者からの転得者 |
① 所有者甲から乙が不動産を買い受け、その登記が未了の間に、丙が当該不動産を甲から二重に買い受け、更に丙から転得者丁が買い受けて登記を完了した場合に、たとい丙が背信的悪意者に当たるとしても、丁は、乙に対する関係で丁自身が背信的悪意者と評価されるのでない限り、当該不動産の所有権取得をもって乙に対抗することができるものと解するのが相当である。 ↓ ② 丙が背信的悪意者であるがゆえに登記の欠缺を主張する正当な利益を有する第三者に当たらないとされる場合であっても、乙は、丙が登記を経由した権利を乙に対抗することができないことの反面として、登記なくして所有権取得を丙に対抗することができるというにとどまり、甲丙間の売買自体の無効を来すものではなく、したがって、丁は無権利者から当該不動産を買い受けたことにはならない。 ↓ ③ また、背信的悪意者が正当な利益を有する第三者に当たらないとして177条の「第三者」から排除される所以は、第一譲受人の売買等に遅れて不動産を取得し登記を経由した者が登記を経ていない第一譲受人に対してその登記の欠缺を主張することがその取得の経緯等に照らし信義則に反して許されないということにあるのであって、登記を経由した者がこの法理によって「第三者」から排除されるかどうかは、その者と第一譲受人との間で相対的に判断されるべき事柄であるからである。 |
最判平成8年10月29日 百選57事件
・背信的悪意者は、主観的悪性ゆえに第三者であると「主張すること」を信義則上封じられるに過ぎない。第三者たる客観的地位まで失うわけではないので、この者からの転得者も、第三者たる客観的地位を有すると認められ、登記欠缺を主張して争うことが許されるのである。
・原判決は,平成10年判例に引きずられた判断をした。「容易に知りえた」という事実から,「正当な利益を有さない」,という結論を導いており,背信的悪意であるとも述べていないのである。この判断を最高裁は破棄した。本件の場合は,背信的悪意アプローチを取るべきことを明らかにしたのである。
・背信的悪意者排除論を維持し(悪意+αの信義則違反アプローチ),時効取得の場合には,「多年に渡る占有継続」の事実の認識によって,「悪意」要件は充足され,時効完成に必要な全ての事実を認識している必要は無い,ということである。
・本判決の直接の射程は「時効による所有権取得の対抗問題」に限定されているのは,その理由付けから明らかである。「時効完成に必要な期間」ではなく,より曖昧な「多年に渡る」占有継続に対する認識を問題にしているのも特徴的である。「長期間継続する占有利用関係」の尊重という価値判断が見て取れる。「多年に渡る」という言い回しからは,「時効の成否」は必ずしも本質的ではないと見ることもできよう。
・本判決の発想は,「取得時効以外のケース」にも波及していくのだろか。
→ 「悪意」であることを不可欠の要件とし,取得時効の成否については,「その要件の充足の有無が容易に認識・判断する事ができないものである」ことを考慮し,取得時効の場合に限って,悪意の要件の認定を緩和したに過ぎない。
→ また平成10年判決の法理にのった原審の判断を破棄した理由は,同判決の法理は,「非排他的な権利である通行地役権に限って適用されるものであり,所有権の帰属を巡る紛争には適用にならない」,ということにあろう。したがって,限定的な影響しかないと見るのが素直である(鎌田)
→ 通行地役権や取得時効の場合に存する類型的事情に照らした判断である事は間違いないが,売買による不動産所有権取得の対抗の可否についても,第三者の主観的事情だけではなく,取得者側の事情(代金支払の状況,取得者への引渡の有無,取得者による不動産利用の状況など)と第三者によるその事情の認識可能性の程度を勘案して,第三者による登記欠缺の主張の許否が判断されるのではないか(佐久間)
【事案の処理】
所有権の時効取得については,登記が無いので結局負けるものの,通行地役権の時効取得に関しては,登記なくして対抗できる,というケースがありうるので注意である。
→ 「所有権」関係は,登記が無い場合,相手方は背信的悪意者である,という主張を平成18年判例に則って主張する。
→ 「通行地役権」関係は,登記が無い場合,相手方の認識可能性をもって平成10年判例に則って主張するわけである。
【平成10年「認識可能性」パターンと平成18年「背信性」パターン】
二重譲渡や,18年判決の事例のような,所有権取得者相互間の紛争類型 |
双方の物権変動が非両立の関係にある。悪意者による第2契約の締結は,それ自体が先行取得者の権利を必然的に否認する契機を持つ。このような場合に「正当な利益を有しない者」という判断をするには,第三者の契約締結時における「悪意+α」を軸にした信義側違反アプローチの枠組みがフィットする。
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通行地役権などの用益権の場合 |
用益権の存在を認識しながら不動産を譲り受ける行為は,それ自体は何ら非難に値しない。通行地役権自体も,承役地の排他的な占有権限を当然に与えるようなものではない。つまり地役権者の利用利益と承役地所有者の占有利用利益は両立しうる。したがって,契約締結時における主観はあまり重要ではない(非難可能性の問題ではないからである)。譲受人が権利を行使して未登記地役権を否認する時点における客観的利益衡量が判断の中心に来るので,契約締結時における第三者の主観的態様が主軸にはならない(考慮対象にはもちろんなるが),と言えるのである。 |
177条の第三者の範囲 |
最判平成18年1月17日 百選56事件、最判平成10年2月13日 百選59事件
【最判平成10年2月13日】
一 通行地役権(通行を目的とする地役権)の承役地が譲渡された場合において、譲渡の時に、右承役地が要役地の所有者によって継続的に通路として使用されていることがその位置、形状、構造等の物理的状況から客観的に明らかであり、かつ、譲受人がそのことを認識していたか又は認識することが可能であったときは、譲受人は、通行地役権が設定されていることを知らなかったとしても、特段の事情がない限り、地役権設定登記の欠缺を主張するについて正当な利益を有する第三者に当たらないと解するのが相当である。その理由は、次のとおりである。 (一)登記の欠缺を主張するについて正当な利益を有しない者は、民法一七七条にいう「第三者」(登記をしなければ物権の得喪又は変更を対抗することのできない第三者)に当たるものではなく、当該第三者に、不動産登記法四条又は五条に規定する事由のある場合のほか、登記の欠缺を主張することが信義に反すると認められる事由がある場合には、当該第三者は、登記の欠缺を主張するについて正当な利益を有する第三者に当たらない。 (二)通行地役権の承役地が譲渡された時に、右承役地が要役地の所有者によって継続的に通路として使用されていることがその位置、形状、構造等の物理的状況から客観的に明らかであり、かつ、譲受人がそのことを認識していたか又は認識することが可能であったときは、譲受人は、要役地の所有者が承役地について通行地役権その他の何らかの通行権を有していることを容易に推認することができ、また、要役地の所有者に照会するなどして通行権の有無、内容を容易に調査することができる。したがって、右の譲受人は、通行地役権が設定されていることを知らないで承役地を譲り受けた場合であっても、何らかの通行権の負担のあるものとしてこれを譲り受けたものというべきであって、右の譲受人が地役権者に対して地役権設定登記の欠缺を主張することは、通常は信義に反するものというべきである。ただし、例えば、承役地の譲受人が通路としての使用は無権原でされているものと認識しており、かつ、そのように認識するについては地役権者の言動がその原因の一半を成しているといった特段の事情がある場合には、地役権設定登記の欠缺を主張することが信義に反するものということはできない。 (三)したがって、右の譲受人は、特段の事情がない限り、地役権設定登記の欠缺を主張するについて正当な利益を有する第三者に当たらないものというべきである。なお、このように解するのは、右の譲受人がいわゆる背信的悪意者であることを理由とするものではないから、右の譲受人が承役地を譲り受けた時に地役権の設定されていることを知っていたことを要するものではない。 |
・乙土地の一部が通路として利用されていることが物理的状況から客観的に明らか(使用の継続性と客観性要件)であること,Cがそのことを知っていたか,知りえたこと(認識可能性要件)という2要件をみたすときは,Cは通行地役権の設定を知らなかったときであっても,原則としてAの登記欠缺を主張する正当な利益を有する第三者にあたらないとする。
・上記2要件が満たされれば,通行地役権の負担は適当な調査により容易に知る事ができる。仮にCが通行権の負担を知らなかったとしても,Cが登記欠缺を主張することは信義に反するというのである
→ 通行地役権の存在可能性が認識可能であれば、所有者に照会をすることで確認ができる。その可能性があるにも関わらず、照会せずに後から地役権の登記の欠缺を主張するのは禁反言に反する。
・通行地役権は,問題の土地を実際に見るだけで,その土地の一部を他人が通行の為に使用していることが明らかになる可能性が高い。また,通行地役権の負担も,Cにとってはそれほど重大なものではないと言える(所有権と異なり全面的に土地の利用が排されるわけではない)。Cは通行地役権を否定しても,隣地通行権の負担は避けられないであろうし,他方,通行地役権が認められない場合の不利益は非常に大きい。
【最判平成18年1月17日】
(1)時効により不動産の所有権を取得した者は,時効完成前に当該不動産を譲り受けて所有権移転登記を了した者に対しては,時効取得した所有権を対抗することができるが,時効完成後に当該不動産を譲り受けて所有権移転登記を了した者に対しては,特段の事情のない限り,これを対抗することができないと解すべきである。上告人らは,被上告人による取得時効の完成した後に本件通路部分A ̄を買受けて所有権移転登記を了したというのであるから,被上告人は,特段の事情のない限り,時効取得した所有権を上告人らに対抗することができない。 (2)民法177条にいう第三者については,一般的にはその善意・悪意を問わないものであるが,実体上物権変動があった事実を知る者において,同物権変動についての登記の欠缺を主張することが信義に反するものと認められる事情がある場合には,登記の欠缺を主張するについて正当な利益を有しないものであって、このような背信的悪意者は,民法177条にいう第三者に当たらないものと解すべきである。 そして,甲が時効取得した不動産について,その取得時効完成後に乙が当該不動産の譲渡を受けて所有権移転登記を了した場合において,乙が,当該不動産の譲渡を受けた時点において,甲が多年にわたり当該不動産を占有している事実を認識しており,甲の登記の欠缺を主張することが信義に反するものと認められる事情が存在するときは,乙は背信的悪意者に当たるというべきである。取得時効の成否については,その要件の充足の有無が容易に認識・判断することができないものであることにかんがみると,乙において,甲が取得時効の成立要件を充足していることをすべて具体的に認識していなくても,背信的悪意者と認められる場合があるというべきであるが,その場合であっても,少なくとも,乙が甲による多年にわたる占有継続の事実を認識している必要があると解すべきであるからである。 (3)以上によれば,上告人らが被上告人による本件通路部分A ̄の時効取得について背信的悪意者に当たるというためには,まず,上告人らにおいて,本件土地等の購入時,被上告人が多年にわたり本件通路部分A ̄を継続して占有している事実を認識していたことが必要であるというべきである。 ところが,原審は,上告人らが被上告人による多年にわたる占有継続の事実を認識していたことを確定せず,単に,上告人らが,本件土地等の購入時,被上告人が本件通路部分A ̄を通路として使用しており,これを通路として使用できないと公道へ出ることが困難となることを知っていたこと,上告人らが調査をすれば被上告人による時効取得を容易に知り得たことをもって,上告人らが被上告人の時効取得した本件通路部分A ̄の所有権の登記の欠缺を主張するにつき正当な利益を有する第三者に当たらないとしたのであるから,この原審の判断には,判決に影響を及ぼすことが明らかな法令の違反がある。(差戻し) |
・時効による所有権取得の対抗について,占有が相当長期間継続していることを知っていた第三者は,取得時効の完成を知らなかったとしても悪意者と認めることができ,更に背信性が認められるならば,他人の登記欠缺を主張することができない旨示唆した。これは、第三者の悪意認定を緩やかに行うことを意味するが,悪意の認定が緩やかになされるのであれば,背信性の認定も緩やかになされる可能性はある。
→ 本件で言う,「多年にわたる占有継続」の認識云々は,「悪意」かどうかの認識対象のことをさしているので注意。
→ 「背信的」「悪意者」というためには、まずは「悪意者」であることが認定されることが大前提である。「悪意者該当性」→「背信性」、という認定になる。