黒猫 とのべい の冒険

身近な出来事や感じたことを登載してみました。

ひずみ始めた感性

2012年10月03日 09時39分45秒 | ファンタジー

 二日前のこと、またカラスとニアミスした。前回のカラスブログ(「近ごろの出来事」)は、今年一月三十日朝の出来事だったから、ちょうど八ヶ月目になる。事件発生地点は、一月は仕事場のある隣町の路上、今回は居住地の駅だ。
 居住地の駅裏から駅前に通じる人道跨線橋を上がり、下り階段に近づいたとき、バサバサと大きな黒い羽を羽ばたかせて、大人のハシブトカラスが目前の橋の手摺りに、悠然と止まった。
「おい、近々、ちょっと時間を作ってくれよ」
 彼は首を少し傾げて、確かそんなふうに言った。そのカラスとの接点は特になかったが、その辺りにはなかなか個性派のカラスたちが居ついていて、ときどき挨拶することがあった。数年前に、ちょうどその欄干から、真下の乗用車の屋根に、嘴でくわえた大きな石を落としたカラスがいた。被害に遭ったのは駅の専用車だった。きっと気にくわない駅員がいて、どうしても仕返しをしたかったのだろう。
 その日の帰路、カラスのことなどすっかり忘れ、跨線橋を反対に渡って、私の古い専用自転車を置いた駐輪場に向かった。この季節、駐輪場はすでに闇にすっかり閉ざされていた。遠くから、私の紺色の自転車が孤独そうに、ぼんやり浮かんでいた。ふと照明がないのに、どうして見えるのだろうと思った。あと数歩で手が届くところまで来たとき、自転車が私に向かって車体全体で何か話しかけているような気がした。「ずいぶん待ってたんだよ」とでも言うように。私の感性のどこかにひずみが生じ始めたのだろうか。(12.10.3了)
コメント
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