二年くらい前から、この季節になると、目の調子が悪くなる。先日の土曜日、突然右目の上瞼が腫れてきたので、職場がある隣町の眼科へ行った。去年から行きつけになっていたし、職場から通いやすい。診断は、アレルギー性結膜炎。
「花粉症の症状が目に出ていると思ってください」と去年言われたので、「またあれか」と原因を尋ねることもしなかった。いただいた点眼薬をつけると、診断どおり一週間くらい経つころには、腫れはほぼ改善された。
ちょうど目の調子が治まった先週土曜日、今年のしつこい低気圧がまたやってきて、湿った雪をばらまいていった。昼過ぎ、雪は峠を越し薄日が射してきたので、家の周囲に吹き溜まった硬い雪の始末を始めた。強風はまだ大きな息をしながら、何度となく襲いかかってきた。その風に吹かれ、硬く締まった雪山の表面が削り取られ、巻き上げられた雪が顔にたたきつけてくる。砂粒の攻撃に遭っているようだ。目を半分閉じながら、四、五十分の除雪をやっと終えた。
家に戻り着替えをしている最中だった。顔全体がピリピリし始め、その上、左目に、目の玉が飛び出すような圧迫感を感じた。びっくりして鏡を覗くと、両目が腫れ上がり、顔には赤い湿疹がいくつも出ていた。冷たい強風にさらされて凍傷になったのかと、すぐ顔と目をぬるま湯で洗うも、症状はすぐには良くならない。なんだか悪化する気配がして、ただちに救急病院へ。
「よっぽど悪い風に吹かれたんですね」と内科医はじろじろ私の顔を見て言った。
「悪い風って?」と私はどこかで聞いたことがあるフレーズを繰り返した。
「たまたまそれに当たったんですかね?」医師は、捻りたくなさそうに首を捻った。
古代中国では、方神の指示を受けた悪い風が、病気や飢饉を起こすと考えられたが、現代でもそういうことがあるのだ。科学的な原因究明に深入りする気持ちはなかった。久しぶりに太い血管注射を打たれ、帰宅後ダウン。処方どおり薬を飲み、おかげさまで翌々日にはほぼ完治した。(2013.3.12)