タスマニアデビルは今、致死性の病気のまん延に苦しんでいる。顔面や口内に悪性腫瘍ができて、食物をとれなくなり死に至る。恐ろしいことに、このガン細胞は個体の傷口から伝染する。
ガン細胞をやっつける薬の開発、生息地の棲み分けなど手を尽くしているが、先行きは明るくない。二十年くらいで絶滅するだろうという予測もある。
ところが、最近、奇跡的に快復を遂げた個体が発見された。耐性ある個体が着実に生まれているという。
過去にも、ウイルスにかかり絶滅寸前まで行ったとき、遺伝子レベルの変化が起き、新たな進化を遂げた例がある。ほ乳類の胎盤はそうして作られたという。
しかし病気にかからないにこしたことはない。
病気にかからない個体には、ある特徴がある。それは、タスマニアデビルの習性でもある、咬みつき行動をあまり得意としないこと。咬みつかなければ、咬みつかれる頻度も低い。傷つかなければ病気をうつされないし、うつさない。
弱肉強食の論理によると、強者は圧倒的に有利な立場にあるように見えるが、実はそれは一時的なもの。かえってあまりケンカをしない、温厚で平和な個体の方がしぶとく生きのびる確率が高いということだ。
恐竜絶滅の引き金となった地球環境の大変動に耐えたのは、確か数十センチ以下の小さく弱い生き物だった。ネコもヒトも大きくなってはいけない。(2016.3.16)