井上氏のプルーストの翻訳本を取り上げて以降、しばらく本のことを書いてなかった。ピアスの「真夜中のパーティ」は刺激的ですばらしかった。文字はその人そのものを映し出す鏡だ。字間から立ちのぼる空気の中に、変な色気が感じられないのがいい。こういう本に巡り会うのは本当にまれだ。
読み物は身のまわりにたくさんあるが、手をつける気になるまで無理して読まないことにしている。読みたくなくなれば途中で止める。そして煮つまるまで待つ。そういう本が何冊も散らばっている。「最初の人間」「石原吉郎の詩」「中国の年中行事」「首里城の坂道」「第二次大戦関係本」など。現在、再開したのは、加藤九祚先生の「シルクロードの古代都市ーアムダリヤ遺跡の旅」。
ところで、NHKの「パリの四銃士」が始まった。切った張ったの活劇はうるさすぎるので続けて観るのをあきらめたが、意外だったのはポルトスの位置づけだ。原作では、ガスコーニュ出の金持ちで、貴族になりたがる俗物として描かれているのだが、この劇ではアフリカ系フランス人なのだ。ヨーロッパの人たちの悩みがこんな形に凝縮されている。四銃士のメンバーの中でいちばんの出来だと思う。
熊本の同窓生一家のことだが、十七日以降の状況が判然としない。家に落ち着けたのだろうか、ライフラインは、生活必需品は、と心配だ。(2016.4.19)