〈2022.11体調急変直前のはな〉
はなは、自分の感情を素直に表現できるネコだったと、以前書いたことがある。
12月、はなは、父さんの介護を受けるようになって、夜中、父さんの枕に頭を載せて寝るようになった。ときには、父さんの頭や顔に、自分の耳や鼻を擦りつけた。認知機能の低下が始まってから半年あまりになるのに、はなは、豊かな感情を失ってはいなかった。
はなは、この家に来て一度もトイレの粗相なんてなかったが、去年の夏ごろ、トイレのまわりにおしっこをまき散らす事態が起きた。何かの間違いかと思っているうちに、粗相は確実に範囲を拡げ、2階の書庫の暗がりへと拡大していった。
食べ物を請求する回数が多くなり、食べてすぐ、食器の傍でご飯ちょうだいと大きな声で鳴くことすらあった。鳴きわめきながら、家中をくまなく歩き回るといった意味のわからない徘徊も。
しかし、日によっては、落ち着いた表情をして甘えたり、膝に上がってのんびりくつろいだり、以前と変わらない日常を送る日もあった。
急変したのは、やはり12月5日だった。認知機能の低下だけでなく、身体の機能もみるみるうちに衰えた。
母さんは何かと忙しかったので、介護の8割から9割を父さんが受け持つことになった。おしめを取り替えたあと、はなが目をつぶり、うっとりしていることがあった。父さんは、そんな、はなを見るのはつらかったが、介護している時間が何にも代えがたい大切なものだと感じた。親にも感じなかったこんな経験をするとは思いもしなかった。
ところで、はなは、あれ以来姿を現さないが、ときどきそこにいるような気配を感じることがある。昨日、外出先から戻ったら、はなの写真立ての前に、はながちょこんと座っているのが見えたような気がした。隠れ損なったのだろう、たぶん。(2023.1.28)
12月、はなは、父さんの介護を受けるようになって、夜中、父さんの枕に頭を載せて寝るようになった。ときには、父さんの頭や顔に、自分の耳や鼻を擦りつけた。認知機能の低下が始まってから半年あまりになるのに、はなは、豊かな感情を失ってはいなかった。
はなは、この家に来て一度もトイレの粗相なんてなかったが、去年の夏ごろ、トイレのまわりにおしっこをまき散らす事態が起きた。何かの間違いかと思っているうちに、粗相は確実に範囲を拡げ、2階の書庫の暗がりへと拡大していった。
食べ物を請求する回数が多くなり、食べてすぐ、食器の傍でご飯ちょうだいと大きな声で鳴くことすらあった。鳴きわめきながら、家中をくまなく歩き回るといった意味のわからない徘徊も。
しかし、日によっては、落ち着いた表情をして甘えたり、膝に上がってのんびりくつろいだり、以前と変わらない日常を送る日もあった。
急変したのは、やはり12月5日だった。認知機能の低下だけでなく、身体の機能もみるみるうちに衰えた。
母さんは何かと忙しかったので、介護の8割から9割を父さんが受け持つことになった。おしめを取り替えたあと、はなが目をつぶり、うっとりしていることがあった。父さんは、そんな、はなを見るのはつらかったが、介護している時間が何にも代えがたい大切なものだと感じた。親にも感じなかったこんな経験をするとは思いもしなかった。
ところで、はなは、あれ以来姿を現さないが、ときどきそこにいるような気配を感じることがある。昨日、外出先から戻ったら、はなの写真立ての前に、はながちょこんと座っているのが見えたような気がした。隠れ損なったのだろう、たぶん。(2023.1.28)
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