みにくいものは
てぢかにみえる
うつくしいものは
はるかにみえる
(by 八木重吉)
みにくいものも
てぢかでみる
うつくしいものも
てぢかにみえてくる
(by 沙於里)
何年か前の春、増築に伴い、職場の大きな櫻の木が何本か切り倒された。
その様子は、毎日目の前で見ていた。
まだ花を咲かせている櫻もあった。
だんだん、外を見ることができなくなった。
何十年もかけて、今そこに佇む無抵抗な櫻に、胸が痛んだ。
まだ花をつけたままの枝は、ちょうど開催中だった、書の展覧会にも飾った。
職人さんに頼んで、切り倒された櫻の幹をふたつ、分けて頂いた。
そのひとつは、今も我が家のベランダで、
季節の花を頭にのせて、そこにいる。
痛みはいつか、やさしい気持ちに変えられる。
ひっそり佇む櫻の幹を見ていて、ふとそう思った。