心の免疫力~書とことばから

もっと暮らしに書やARTを~
雲のように水のように あっけらかんと自在に生きるヒントを
求めて~ by 沙於里

ウルルンな旅~① ベルギーの小さな町で 

2008-02-23 | つれづれ
                 毎日書いていた当時の日記(スケッチブック)    



母方の叔父はちょっと変わり者で、鉄道の設計会社に就職後、なぜか突然
単身イギリスに渡り、オックスフォード大学に留学。
英語をマスターしたからと、そこから何となくベルギーの小さな町に行き着き、
初めはフランス語もわからぬまま、10年以上住んでいたのかな。。

その叔父が一時帰国し、私が中学2年になる前の春休みに、一緒に連れて
行ってもらったことがある。
2週間位の滞在で、ことばは全くわからなかったけれど、叔父の友人宅を
毎日あちこち訪問して、たくさんの楽しい思い出がある。

その後、大学3年の夏休みに、また叔父と一緒にベルギーを訪れ。
そして‘91年、書の展覧会がミュンヘンであり、先生方と現地で合流したあと、
デュッセルドルフに住む同級生を訪ねた帰りに、電車に乗って一人で
ベルギーに向かった。

ドイツ語はちんぷんかんぷんだったので、切符も買えないまま電車に乗り、
車内での車掌さんにも、なぜか笑顔でOK!と言われ、ベルギーの懐かしい駅に
降りてからも、結局、無賃乗車で到着 

遠い記憶を辿りつつ、以前ホームスティをしていたムッシューの家までは
歩いて30分位。連絡もしてなかったので、びっくりするかなとドキドキしながら
玄関の呼び鈴を鳴らすと、中からムッシューが出てきて「まあ入りなさい」と。

つたないフランス語で話すうちに、「お~!もしかしてあなたは沙於里か?」
・・・って、わからないで私を招き入れてくれたの~ 

マダムは急いで親戚・友人に電話。 「沙於里が来た!」って。
昔と変わらない部屋で、昔と同じいつものメニューで、夕飯。その夜は一泊。

当時泊まっていた部屋に行くと、忘れていったヘッドフォンが、そのまま同じ
場所に置いてあって。
今度は忘れずにね!と言われたのに、やっぱり忘れてきちゃった。

突然の訪問にも、いやな顔ひとつ見せずに、おおげさなもてなしではなく、
いつものまんまで迎えて下さったことに、感激だった。

次の日、ムッシューは駅まで送って下さり、電車がホームに着くと、
私をギュっと抱きしめて、涙を流して下さった。

その様子を見ていた車掌さんは、発車の笛をくわえたまま、微笑みながら
目を閉じて何度も頷いていた。

人生で一番の、ウルルンな旅だった。







コメント (6)
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