小言コウベイN

日々感じた風刺等について書いています。

謎解明

2013-09-26 09:15:32 | 日記
         謎   解   明        NO.181
あの世から生還した人はいませんし、アルツハイマー病を完治した人という人も聞きません。  ですから、あの世とはどんなところなのか、アルツハイマーに罹った人の心境はどうなのかはわかりませんでした。
しかし、アルツハイマーでお亡くなりになった老婦人の遺品の中から下記の「詩」が見つかり、その謎の一部が解明されました。
ちょっと長い文章ですが紹介します。
  「目をひろげてよ看護婦さん」
なにが見えるの、看護婦さん、あなたには何が見えるの
あなたが私を見るとき、こう思っているのでしょう
気難しいおばあさん 利口じゃないし 日常生活もおぼつかなく目を虚ろにさまよわせて 食べ物をボロボロこぼし 返事はしない
おもしろいのか 面白くないのか あなたの言いなりになっている
これがあなたの考えていること、あなたが見ていることではありませんか 
でも目を開けてごらんなさい、看護婦さん、あなたは私を見てはいないのですよ 
私が誰なのか教えてあげましょう、ここにじっと座っているこの私が
あなたの命ずるままに起き上がるこの私が あなたの意思で食べている私が誰なのか
私は10歳の子供でした、父がいて母がいて兄弟姉妹がいて、みなお互いに愛し合っていました 16歳の少女は足に羽根をつけて もうすぐ恋人に会えることを夢見ていました 20歳で花嫁、私の心は躍っていました
守ると約束した誓いを胸に刻んで 25歳で私は子供を産みました
その子は私に安全で幸福な家庭を求めたの 30歳、子供はみるみる大きくなる 永遠に続くはずのきずなで母子は互いに結ばれて 40歳、息子は成長し、行ってしまった でも、夫はそばにいて、私が悲しまないように見守ってくれました  50歳、もう一度赤ん坊が膝の上で遊びました
私の愛する夫と私は再び子供に出会ったのです
暗い日々が訪れました、夫が死んだのです 先のことを考え、不安で震えました 息子たちはみな自分の子供を育てている最中でしたから それで私は過ごしてきた年月と愛のことを考えました
私はおばあさんになりました 自然の女神は残酷です 老人をまるでバカのように見せるのは、自然の女神の悪い冗談 
体はボロボロ、優美さも気力も失せ かつて心があったところには今では石ころがあるだけ 
でも この古ぼけた肉体の残骸にはまだ 少女が棲んでいて 何度も何度も私の使い古しの心を膨らます わたしは喜びを思い出し、苦しみを思い出すそして人生をもう一度愛して生きなおす 年月はあまりにも短すぎ あまりにも早く過ぎてしまったと私は思うの そしてなにものも永遠ではないという厳しい現実を受け入れるのです
だからめを開けてよ 看護婦さん 一目を開けて見てください
気難しいおばあさんでなくて 「私」をもっとよく見て!
(朝日出版社 図書より孫引きしました)

コメント
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