こんばんは
今、池上さんの番組を見ながらネットも見ています。ネットを見ていたら、こんなニュースが出ていました。
「白血病検査の結果に不備」 検査会社「エスアール」が発表
https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20170324-00000597-san-hlth
産経新聞 3/24(金) 18:51配信
臨床検査会社エスアールエル(東京都)は24日、医療機関から依頼を受けて行う白血病の遺伝子検査の結果に誤りがあったことを公表した。検査の基準となる物質の不具合が原因で、医療機関が治療法や治療効果を正しく判断できなかった可能性がある。
検査は平成14年以降に10万件以上行われたが、影響を受けた患者数は不明。東俊一社長は「第三者による調査を行っており、早急に確定したい」と話した。
同社によると、不備があったのは患者の骨髄液から遺伝子を調べて白血病の類型を調べる検査と、遺伝子の量を測定して治療効果を確かめる検査の2種。白血病かどうかの診断には通常、用いられないという。
昨年10月、医療機関から「院内で行った検査との値に開きがある」と指摘を受けたことから今年3月に不備が発覚。24日に厚生労働省に報告し、公表した。
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この検査に関しては「白血病キメラスクリーニング」「白血病の特定の遺伝子の定量検査」と言われているものだと思われます。今、医療施設にいないのでそういう情報が入ってこないのですが、状況からはそうだと思われます。
白血病キメラスクリーニングは「急性白血病」と診断した後(実際は同時)、この検査で特定の遺伝子の異常があるかどうかを見ます。
例えばPML-RARAという遺伝子が検出されると「急性前骨髄球性白血病」と昔言われていましたが、その中でもATRAという特効薬があり、予後が最も改善したPML-RARAを伴う急性骨髄性白血病と診断されます。
この遺伝子は通常検出されませんので、検出されたということは「異常がある」ことがわかります。初診時は最悪「検出されるかどうか」が分かれば、治療方針に影響は出ません。
今回問題になっているのは定量検査で「正常な人間が持っている遺伝子」を比較対象にしています。比較する遺伝子がこの程度に対して、白血病が持つ異常な遺伝子がどの程度か判断しています。比較する正常な遺伝子が10000検出されて、白血病の遺伝子が検出されなければ相当良い状況なのだろうと判断できるわけです。
この異常な遺伝子がどのくらい治療によって下がったか・・・ということが分かれば「良く効いている」「あまり効いていない」などがわかるので、重要になります。
今回、「検査結果が高めに出ていた」のであれば・・・不必要に強い治療を行なった患者さんがいる可能性があることになります。例えば治療が終わる時期になっても白血病の遺伝子が残っていたら、骨髄移植などを検討していると思います。
逆に「検査結果が低めに出ていた」のであれば、本来行うべき強い治療が行われなかったという可能性もあります。
ただ、治療が終わった患者さんたちが慌てる必要はないと思います。検査結果が高めに出ていたとしても、0ではなかったことがわかったのであれば治療強度は上げるべきだと思います。低めに出ていた・・・というのは判断が難しいのですが、この白血病遺伝子検査の多くは「異常があると移植」という遺伝子も多く、治療経過によって判断が変わるものは限られています。その限られたものはごく一部を除いて「再発時の移植」が基本になりますので、最終的に0になったのであれば治療経過は変わらないのではないかと思います。
ですので、このニュースで患者さんが動揺する必要はないと僕は思います。まず、心配な患者さんは主治医の先生とよく相談された上で、経過の見方をどうするか決めれば良いと思います(1年以内の再発は予後不良ということがわかっていますので、1年までは慎重に経過を見るなど。1年以上経っているのであれば慌てなくても良いかもしれません)。
ただ、個人的にはもう一つになることがあります。この検査結果を使って、様々な研究がされていたと思うのですけど・・・その結果って白紙になるのかしら?
治療を受けられた患者さんは非常に気になるニュースだと思いますが、主治医の先生を信じて動揺しすぎないのが重要だと思います。
確かに治療経過で判断が分かれることはあります(一番はPML-RARA陽性の急性骨髄性白血病は再発で自家移植をすることがありますが、その移植する細胞の中に異常遺伝子がないことを確認するので、そこだけ気になるところです)が、とんでもない影響というのは少ないのではないかと思います。
いつも読んでいただいてありがとうございます。今後もよろしくお願いいたします。