こんにちは
今日は朝6時半くらいから教科書の執筆作業をしていました。途中、買い物と床屋に行きましたが、それ以外は机の前・・・。
メインの文章の執筆は終わりましたので、先日に引き続きコラム書きです。今の時点で国家試験では出ないと思うし、覚えなくて良いと思うけど、知っておくと良いかなと思ったことをコラムとして書きました。
どれだけ簡単に書けるか・・・が僕の「学生向け教科書」の狙いですが、本当に簡単だ・・・。ただ、趣旨として「気楽に読めて、血液学が難しいと思われない教科書」ですので、良いだろうと思っております。
もっと詳しく知りたかったら、きちんと勉強してね・・・という感じです。そうしたら身につきますからね。
先日に引き続き、ちょっと紹介させてください
おまけ21:腫瘍の免疫回避機構
(イラストあります)
腫瘍細胞は人間の体の中で絶えず発生しています。それを細胞自身がなんとかしようとしていますし、できた腫瘍細胞は免疫系が排除します。しかし、そのうち排除しきれなくなった腫瘍が臨床的な「がん」として問題になります。免疫が腫瘍を逃さなくなれば、癌は怖いものではなくなります。今わかっている免疫回避のメカニズムを参考程度に紹介します。気楽に読んでください。
まず、腫瘍細胞は「自己」由来ですので、多くのものは自己と同じもので構成されています。たまに本来持っていない腫瘍抗原などがあるとそれは排除のきっかけになります。1つ目のメカニズムは腫瘍抗原が減少したり、MHC Class I分子の発現が低下したりすることでT細胞から逃げます。T細胞はMHC拘束性があります。MHC Class Iがなければ攻撃できません。まぁ、NK細胞はできるのですが。
2つ目にCD80などの共刺激因子の発現低下です。T細胞が「敵」と認識した後、活性化シグナルが流れます。その刺激因子がこないとT細胞はパワー不足で腫瘍を排除できません。3つ目は制御性T細胞や制御性B細胞、免疫抑制性単球など「免疫抑制系細胞」を集めることです。周囲にこいつらがいると「免疫抑制系サイトカイン」を分泌されて、免疫細胞は弱ってしまいます。4つ目はPD-1に対するPD-L1など直接免疫を抑えることです。5つ目に腫瘍周囲の環境(細胞)に自分を支持させたり、免疫細胞を弱らせる因子を出したりさせることです。覚えなくて良いですがCAF( Carcinoma associated Fibroblast)やTAM (Tumor associated Macrophage)などが出現します。こういったものを押しのける必要があるわけです。
これに引き続いてCAR-Tを書きました。本文の合間合間に差し込まれるわけですが・・・。
おまけ22:CAR-T
(イラストあり)
最近はやりの免疫療法の1つにCAR-Tがあります。腫瘍細胞には免疫回避機構があります。それを打ち破る必要が免疫療法にはあります。すでに5つのメカニズムを紹介しましたが、CAR-Tは腫瘍抗原特異的な「単鎖抗体」と「共刺激因子」をうまく1つにまとめたキメラ抗原受容体(CAR)を作成します。リツキシマブなど抗体の結合した腫瘍を潰すのはNK細胞やマクロファージなどFc受容体を持った細胞です。そいつらは抗体の刺激でパワーアップできます。CARの良いところはT細胞にはMHC拘束性があるため、MHC Class Iに載っかった腫瘍抗原を認識しなくてはいけないのに腫瘍に対する抗体がついている、例えばALLなどではCD19に対する抗体がひっついているというのが1つ目です。MHC拘束性から解除されました。さらにその下に共刺激因子がついているのでCD19に結合したらT細胞はパワーアップします。腫瘍細胞から言わせれば「せっかく、腫瘍抗原も減らしたし、MHCも減らしたのに・・・そんなの関係ねぇ〜って攻撃してきやがった」という感じです。もちろん、万能ではないと思いますが、すごい話ですよね。色々な腫瘍に対して開発が進んでいますので、せっかくだから覚えておきましょう。
自分では簡単にまとめたつもりなんですけどね、いいところを。
多分、医療従事者ではない患者さんに説明するためにはもう一つレベルを下げなくてはいけませんが、医学生ならいけるだろう。
一般の医療従事者以外の方に解説しますと、がん細胞は「がん細胞だけが持っているもの(ガン抗原)」をうまく隠してT細胞から逃げます。さらにT細胞に見せるIDすら隠します。T細胞はID(MHC Class Iとその上に乗っている抗原)を見て、「敵か味方か」判断します。T細胞はIDを見ないと攻撃しないので、そうやって逃げちゃうわけです。ちなみにNK細胞はIDを見せないと攻撃します(KIR拘束性)。
T細胞の弱点はMHCというIDを確認しないと攻撃しないことにあったので、それを「抗体」をうまくつけることでクリアしました。ところが本来ならば共刺激因子でパワーアップするところ・・・腫瘍細胞はそれも隠してしまいます。そうやって免疫細胞から逃げようとしたわけです。CARと呼ばれるものはパワーアップに使う「共刺激因子」も内在していますので、一回の刺激で2度美味しいわけです。
で、うまく殲滅しに行きます。
PD-1/PD-L1はT細胞受容体に対しての抑制だから、CAR-Tは関係なさそうですけど、どうなのかなぁ・・・。そうすると免疫抑制性の細胞さん達以外には強いことになるのですが・・・。
とりあえず、この後メールで原稿を送って、次にやりたいことを始めたいと思います。次は別の本書きと英語です。その前に洋画でもみて休憩しようかしら。
いつも読んでいただいてありがとうございます。今後もよろしくお願いいたします。
おはようございます。コメントありがとうございます。
呼吸器内科の先生からご紹介いただいた患者さんでよろしかったでしょうか?
治療がうまく行ったと伺い、良かったと思っております。
わざわざブログのコメントでご報告いただきまして、ありがとうございます。このまま良い状態が続くことを祈念しております。
また、コメントいただければと存じます
再生不良性貧血と診断されステージ5と診断され病名も初めて聞く名前で改めて自分の病気と向き合う事ができ昨年末から治療し本年初めに治療の甲斐あり、STAGE1の軽症になりました。
有難うございました。
先生の患者より