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『ネイト・シルバー』
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2012年11月11日 13時53分14秒
大統領選でニューヨークタイムズのネイト・シルバーの数理モデル予測が全50州で的中―政治専門家はもはや不要?
http://jp.techcrunch.com/archives/20121107pundit-forecasts-all-wrong-silver-perfectly-right-is-punditry-dead/
New York Timesの選挙予測専門家、ネイト・シルバーは昨夜、大統領選の勝敗を全50州で的中させた。 その一方で、いわゆる政治専門家たちの予想はほとんどが外れた。中には笑うしかないような外れ方をした者もいる。
前回ほどの盛り上がりに欠けた大統領選であったが、新たなヒーローが誕生したようだ。
ネイト・シルバー
数理統計モデルを駆使し、どんな政治評論家よりも正確な、そして完璧な予測を行った。
人間の行動の結果が、そんな数理モデルなどで予測可能なのであろうか?
前回2008年の大統領戦での50州中49州という的中率を認められて、「New York Times」の公式ブログに採用された上での、今回の結果である。
数多ある名も無き人々のブログやツイッター上での予測の中から、たまたま今回の結果に合致したものを取り上げている訳ではないので、偶然だろ?との批判は成り立たない。
天気予報を考えてみよう。
各観測ポイントでの気圧のデータから、低気圧/高気圧の位置などが判明するので、ある程度の現在の天候が解る。
時系列のデータがあれば、低気圧の移動方向などが解るので、これから先の天気の予報が可能となる。
極端な話、なぜ、低気圧が来ると雨が降るのか?という科学的な理由を知らずとも、この「気圧」というパラメータの変動値を過去のパターンと照合することにより、天気予報を行うことが可能だ。
良く「雨の日は古傷が疼く。」という話を聞く。それが、湿度の影響なのか気圧の影響なのかは解らなくとも、そのような人々には、外の天候が解らない状況で「古傷が疼いているので、恐らく雨が降っている。」との予測が可能だ。
「猫が顔を洗うと雨が降る。」と言う伝承も、恐らくは猫に気圧なり湿度なりの変動を感知する能力があり、丁度古傷が痛むのと同じような、なんらかのシグナルを感知して、顔を洗うような行動を導き出している。とも、考えられる。
仮に、人類に気圧を図る手段が無かったとした場合、この「猫が顔を洗う」現象が、どの地域でどれだけ観察されたか?をリアルタイムで収集することができれば、天気予報をすることが出来るのではないのか?
流石にちょっと論理が苦しくなって来たが、要は、因果関係がはっきり解明されていなくとも、十分な量のデータの蓄積があれば、それから信憑性の高い予測を導き出すことは十分に可能である。と考えられる。
「ハウス効果」呼ばれる現象がある。
世論調査機関の政治的偏向性によって回答者の反応が変わる。という考え方だ。
ネイト・シルバーは、世論調査の結果を単純に集計するのではなく、調査者の政治的指向を数値化し、これを除去している。
無論、他の予測モデルでも同様なことをしてるのであろうが、どのくらい除去すべきなのか?という数値の選定が、より適切であったのも重要なポイントであろう。
ひょっとするとこの数値もまた、膨大なデータと深遠な数理モデルによって導き出しているのかもしれない。
彼の予測がそれほどまでに正確なのであれば、それを以ってして選挙結果とすれば、もう、選挙をする必要はないのか?少なくとも、選挙運動にどれだけ力を入れるかなどは、結果に大きな影響を与えないのか?
今回の的中率の背景には、前回と同じ数理モデルが良く適合したから。との理由が大きい。どちらの陣営も選挙戦に全力を尽くし、やれることは全てやった結果として、いつも通りに各州を廻り、その州に合わせた演説を行い、いつも通りに討論会を実施し、いつも通りに誹謗中傷合戦を繰り返した結果だ。
どちらかが手を抜けば、予測結果を下回る結果となるだろうし、予期せぬ不祥事が発生すれば、その問題が大きければ大きいほと、数理モデルから外れた結末に至るのは必至だ。
では、少なくとも、政治評論家は必要ないのか?
彼らがなぜ、専門家として成り立っているかと言えば、過去の政治/政策に詳しく、またそれが社会情勢に与えた影響などに熟知しており、その知識を元に、新たな政策がどのような結果をもたらすのか?を予測したり、逆に、現在の状況を改善するには、どのような政策が有効であるのか?それが出来るのは、誰なのか?
そういった判断が、誰よりも得意だからである。
それだけであれば、何のことはない。数理モデルがやっていることと、対して違わない。
実際の天気予報では、偏西風や海流、山岳部を堺に天候は大きく異なるなどの土地の形状。など、長年の科学的研究の結果得られた様々な気象条件が、その予測モデルに組み込まれている。
そして、その努力は現在も続けられており、予測と観測値とに差異が生じた場合、その原因を突き止め、予測モデルを修正して行く。
政治評論家は数理統計モデルを全く無視するのではなく、数理統計モデルの得手/不得手を把握し、得意な部分の予測結果は素直に受け入れ、不完全な部分を補い、想定外の事象が発生した場合の影響範囲などについて、的確な判断を発信していかなければならない。
自分の判断が数理統計モデルに負けた場合、自分の論理のどこが間違っていたのか?を、謙虚に解析出来る者のみが、生き残っていけるであろう。
一見、前途洋洋なシルバーモデルであるが、次回2016年には、大きな試練が待ち受けている。
それは、今回の予測があまりにも見事であり、それが衆人の知るところとなってしまったがために抱えざるを得ない、ジレンマによるものである。
「前回2012年の選挙での見事な的中で、『魔法使い』の異名を持つあなたではありますが、今回発表された予測は『もはや、呪文としか思えない』との批判を浴びています。何か、路線の変更があったのでしょうか?」
「いえ、今まで通りの予測はちゃんと行い、別ページで詳細を発表しています。今回このような予測を発表した経緯をまず、ご説明したいと思います。」
「これですね?各州の予測を集計した結果を見ると、民主党の圧勝。オバマ続投。の様ですが。」
「はい。それが『第一の予測』です。」
「『第一の』?」
「ええ。その予測には、重要なファクターが欠けています。」
「と、おっしゃいますと?」
「『第一の予測』を発表した結果が、有権者の行動に与える影響です。」
「少々話が込み入っているようですが。。。」
「実は前回の結果が余りにも的中したために、私の予測結果が今回の選挙戦に与える影響が、無視できないほど大きくなってしまい、予測結果そのものを変えてしまう程になってしまったのです。」
「では、今回の予測はあまりアテにならないと?」
「幸い、ギャロップ社が今回の世論調査で『シルバーモデルの予測が、あなたの投票に影響を与える可能性はありますか?』との趣向の設問を追加しており、
『予測には関わらす投票に行く。』
『大差であれば投票に行かない。』
『予測が自分の支持政党に不利であれば、大差/僅差に関わらず投票に行く。』
『投票に行くか行かないかは、その日の天候次第。』
などの男女別/年齢別/地域別/支持政党別の詳細な集計結果を発表しています。前回の統計モデルに改良を加え、その結果を組み込み、『第一の結果』を発表した場合の予測を『第二の予測』として求めたものが次のページです。」
「これはなんと、共和党が僅差で勝利。予測結果が逆転していますね。」
「ええ。大差での勝利との予測により、若年層/無党派層で投票に行かないものが多数に渡り、接戦州での民主党支持率が下がる。との予測が導き出した結果です。」
「と、するとですね。あなたはたった今、『第二の予測』を発表した訳ですが、それがまた、新たな結果を発生させる。という可能性はあるのでしょうか?」
「『第三の予測』結果は、『若干の余裕を持って、民主党の勝利』です。それ以降は、あまり変動がありません。」
「つまり、回答がそこに向かって収束している。真の予測はそこであると?」
「サイトでは、『第十の予測』まで発表していますが、どちらかと言うと、『第三の予測』以降は、殆ど報道もされず、それ以降の予測結果を変えるほどの影響力を持たないため。と考えられます。」
「んー。どれが正しい予測なのか解らない状態。と、言うことでしょうか。」
「恐らく、『第一の予測』のみ発表していれば、結果は『第二の予測』通りになったと思います。ですが、それでは政治的公平性に欠けると思い、『第十の予測』まで発表することにしました。」
「ただ、こうなって来ると、どれが本当の予測なのか解りにくいですね。色々発表すれば、どれか当たるだろう?的な。」
「ええ。残念ながら、私の予測が余りにも正確なため、公平性を保とうとすればするほど、予測結果が曖昧になり、他の要因による影響の方が、私の予測結果が与える影響よりも、大きくなってしまいました。」
「そこで?」
「ええ。そこでその要因を考慮に入れ、最終的な今回の私の予測に基く見解を、一言で表明することにしたのです。」
「それが、冒頭で触れた、これですね?」
「ええ。『フロリダで朝、猫が顔を洗っていたら、共和党の勝利』です。」
・・・
「では、本日、お話を伺いしたいもう一つの話題に移りたいと思います。巷では、今回の選挙を最後に、あなたが全く別の分野に転身されるのでは?選挙予測から身を引くのでは?との、もっぱら噂ですが、これは何か根拠があることなのでしょうか?」
「それは、恐らく、私が先週上梓した書籍のせいだと思います。」
「どのような内容なのでしょう?」
「これです。『上手なネコの躾け方 - 3日でネコに顔を洗わせる習慣を付ける方法』」
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